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試合レポート

伊佐を突破口に開幕戦以来の新太弾。仙台との直接対決を制し今季初の連勝

 

4-4-2の仙台に対し上手くミスマッチを利用してボールポゼッションしながら、サイドを起点に攻めた一戦。焦らず続けた攻略と隙のない守備が、6ポイントの価値ある決戦で、勝利を引き寄せた。

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巧みなポゼッションでペースを握る

今節、日曜開催はこのカードのみ。前日の試合で、やはり残留争い中の横浜FCが徳島に5-3で勝利したため、大分は暫定19位、仙台は同20位でこの決戦を迎えることになった。
 
仙台はチームトップスコアラーの西村拓真と2番手の富樫敬真がメンバー外。左SBは石原崇兆ではなく、古巣戦となった福森直也でスタートした。大分は右WBに第15節・仙台戦以来の先発となる松本怜。あとは前節・C大阪戦と同じメンバーで臨んだ。
 
先週のJ3岩手とのトレーニングマッチで後方からのビルドアップに手応えを得ていた仙台は、互いのシステムがミスマッチを生むこの対戦に向けてその準備を施していたようだったが、前半からボールを握ったのは大分だった。コンパクトなブロックを構える中でプレッシングに来る仙台の背後を細やかに突いてボールを動かしながら、下田北斗が何度も大きなサイドチェンジ。右サイドの松本が町田也真人とのコンビネーションで相手を攻略し何度も好機を築いたが、守備を固める仙台もゴール前では堅い。
 
一方の仙台は、前線から激しく追う伊佐耕平や渡邉新太、巧みなポジショニングを続ける町田にパスコースを阻まれて、思うようにビルドアップできず。カウンターに活路を見出そうとしたが、エンリケ・トレヴィザンが個の対応でその芽を摘み、高木駿も判断よく飛び出して攻めさせなかった。

 

キーマンだった松本が負傷するアクシデント

攻めながらなかなか得点できずにいた前半の最大のチャンスは39分、下田のクロスから伊佐のバックヘッド。わずかに枠の左に逸れた。
 
ピッチで「焦らずに」という声を掛け合いながら仙台攻略を続けていた43分、攻めては連係で崩し守っては俊足で帰陣していた松本が負傷。プレー続行不可能となり、片野坂知宏監督は代わりに刀根亮輔を投入して右CBに配置すると、小出悠太を一列上げて対応した。
 
残留争い渦中同士の堅い試合の前半は、大分がシュート1本、仙台は0本で、スコアレスでの折り返し。圧倒的にボールを握りながらこのまま点が取れなければ仙台ペースに傾いていくのではないかという嫌な空気も感じていたという指揮官は、後半に向けて仙台が施す修正を予想し、選手たちに攻守のポイントを伝えて後半のピッチへと送り出した。
 
48分の仙台のチャンスで、加藤千尋の仕掛けからのシュートがゴールを脅かしていれば、流れはまた変わっていたかもしれない。だが、大分守備陣が寄せて上手く打たせずに高木がキャッチしてしのいだ。

 

新太、開幕戦以来の待望のゴール

大分が待望の先制点を挙げたのはその2分後だ。下田が左足で相手DFライン裏のスペースへと送ったフィードに、上手く相手を阻みながら抜け出したのは伊佐。アピタウィア久が芝に足を取られるのを尻目に、吉野恭平が寄せてくるより前に左足シュートを放つ。強いシュートはヤクブ・スウォビィクの手に弾かれてポストを叩くと高く上空に跳ね上がり、その落ちてきたところへ誰よりも早く長い距離を駆け上がってきた渡邉新太が到達すると、右足でゴールへと蹴り込んだ。
 
渡邉にとっては開幕の徳島戦以来の得点。生粋の点取り屋が、こんなにも長期間ゴールから遠ざかっていたことはいまだかつてなかった経験だった。苦しみながらもチームのために守備に走り続けた渡邉の得点に、チームメイトたちが沸いた。その突破口を開いたのはやはり自身の結果よりもチームファーストで献身的に戦ってきた伊佐だ。2人の働きへのご褒美のような先制弾に、士気が高まる。
 
逆に仙台は精神的プレッシャーに苛まれたか。ラフプレー気味の守備対応が目立ち、自陣で立て続けにFKを与えた。いずれも下田が蹴り、ゴールには結びつかなかったが、焦燥感をつのらせたように58分、いつもは落ち着いているスウォビィクがまさかのファウルを侵す。味方からのバックパスを受けるスウォビィクにチェックに行った町田に対し、肘を当てる行為。ただちにイエローカードが提示され、大分はPKのチャンスを得た。キッカーは渡邉。速い弾道はわずかにスウォビィクに触られたがさほどコースを変えることなくゴールネットを揺らした。60分、大分は2点のリードを得る。

 

最後までバランスを維持しながら攻め続け勝利

残り30分にして、試合運びの上で難しい点差と言われる2-0。仙台が1点を返せば流れは相手に傾く恐れがある。62分、手倉森誠監督は福森直也を蜂須賀孝治に、関口訓充を中原彰吾に代えて追撃態勢を取った。
 
だが、守りに入っては危ないとばかりに大分も攻撃の手を緩めない。63分には渡邉のシュートがスウォビィクにキャッチされる。66分には下田の左CKにエンリケが走り込みヘディングシュートも枠の右。
 
70分、仙台はさらに赤﨑秀平を佐々木匠へとチェンジ。岩手との練習試合で2得点を挙げた生え抜きに希望を託す。仙台が前がかりになるのに対し、大分は75分、伊佐と渡邉を呉屋大翔と野村直輝に代えて、相手の背後を突く態勢を強化した。仙台は78分、加藤と松下佳貴を平岡康裕と皆川佑介に代えてシステムを3-5-2に変更する。
 
前線にボールをつなぎたい仙台だが、大分の守備陣にボールを奪われカウンターで攻め返される繰り返し。だが、大分もそれを仕留めるには至らない中、88分、町田に代えて梅崎司が投入される。アディショナルタイムは6分。皆川にオーバーヘッドシュートを許すも枠の右に外れ、仙台の追撃を封じ込めて無失点勝利。
 
大事な裏天王山で、ようやく遂げた今季初の連勝。ホームでは3連勝と、確実に手応えを感じられる戦績だ。残留圏の16位・徳島との勝点差は2に詰めた。次節はアウェイでその徳島との直接対決だ。