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試合レポート

15人で臨み、配置転換やシステム変更で乗り切った。天皇杯はラウンド16へ

 

前後を中2日でリーグ戦に挟まれたタイトな3連戦の2戦目。清水からの福井という遠征続きも鑑み、指揮官は15人で福井ユナイテッド戦に挑んだ。

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4-4-2で臨み新太&髙澤弾で2点先行

事前に戦力のターンオーバーは示唆していたものの、ベンチメンバーを4人に絞る徹底ぶり。そしてシステムはいつもの3-4-2-1ではなく4-4-2でスタートした。髙澤優也と藤本一輝の2トップ。相手も4-4-2で、守備は前線からプレスをかけながら、攻撃では藤本が少し下がってバイタルエリアで起点を作り、髙澤へとつなぐ形をよく見せていた。
 
福井も4-4-2で、球際の局面は多くなった。福井のほうが勢いよく突っ込んでくるのだが、足元で競り合ったときにはやはり大分のほうが上回る。降り続いた雨をたっぷり含んだピッチでボールを動かしながら、早々の8分に先制点が生まれた。福森健太のパスカットからボールを動かして右サイドで起点を作ると、松本怜の大きくゆるやかなクロスに飛び込んだのは渡邉新太。相手と競り合いながら放ったヘディングシュートはポストに嫌われたが、それを拾った屋敷優成が落とし、渡邉が今度は右足で落ち着いて流し込んだ。
 
福井もアグレッシブな姿勢で攻め、セットプレーなどでチャンスを得るのだが、仕留め切るところまではいかない。逆に29分、藤本の浮き球のスルーパスに抜け出した髙澤が追加点を奪う。
 
早い時間帯に2点のリードを得たが、その後は福井が勢いを増してチャンスを立て続けに築いた。40分、中盤でボールを受けた賀澤陽友が、前に出ていた高木駿の背後を狙ってロングシュートを放つが、わずかに枠の上。42分にも福井はグラウンダークロスの処理に一瞬の隙を見せた大分を突こうとしたが最後は高木に抑えられた。

 

福井の迷いなき追撃に遭いながら

2-0は危険なスコアという定説もあり、大分としては3点目を挙げたいところだが、それがなかなか取れない。42分に屋敷のクロスから放った渡邉のヘディングシュートは千葉奏汰のファインセーブに掻き出された。一方で福井にも得点は許さず、44分には賀澤の突破からのスルーパスへと野中魁が走り込む場面を許すが、わずかにタイミングが合わず、2-0のまま折り返した。
 
片野坂知宏監督は後半頭から、渡邉新太を伊佐耕平に交代。藤本を左SHに移し、伊佐と髙澤の2トップとした。左サイドで福井に上回られる場面が増えており、藤本のサイドでのキープ力に期待しつつ、相手が前がかりになったところでこちらも前線にパワーをかけた形だ。
 
福井は1回戦も2回戦も逆転勝利で勝ち上がっており、特に2回戦の甲府戦で見せたアディショナルタイムで2点を挙げた逆転劇は見事だった。この試合でもスコアをひっくり返そうと、ダイナミックにボールを動かしながら激しく明確な追撃に出る。58分には木村健佑が中へ送ったボールを野中が反転シュートにまで持ち込むが、高木がキャッチ。59分には伊佐のクロスに藤本が走り込んだが、インサイドで合わせたシュートは枠上へと逸れた。

 

配置転換とシステム変更で無失点勝利を掴む

福井の追撃はなおも激しさをまし、左サイドの木村と野中のコンビネーションから奥直仁がシュートを放ったり、野中のスルーパスから賀澤が狙ったりと好機を量産。大雨が上がった後の多湿に苛まれて大分には疲労が見え、ボールを奪っても前線に運んで押し上げる力が出なくなっていた。
 
それを見極めた片野坂監督は77分、屋敷に代えて刀根亮輔を投入。システムを3-4-2-1に変更し、ペレイラを右CBに、羽田健人をボランチに配置した。おそらく賀澤が中盤のスペースへと下りてゲームを作ることが増えていたため、羽田にそのケアを託したものと思われる。
 
指揮官は2回戦のホンダロック戦で2-0から追いつかれて延長戦にもつれ込んだことを踏まえ、この試合では2点のリードを守ることを第一に考えながら3点目を狙うプランへと切り替えたのだった。大分が受ける形になったことで、福井は前線にパワーをかける戦法に出る。80分に賀澤と森永秀紀を我那覇和樹と金村賢志郎にチェンジ。さらに83分、野中に代えて鎌田啓義を投入し、前線の機動力を維持しながらイケイケの追撃を続けた。
 
90分には足をつらせた廣岡睦樹を田口遼に交代しつつ、2点を追う福井は諦めない。だが、大分は省エネとばかりに跳ね返し続け、5分のアディショナルタイムを無失点で乗り切り勝利を遂げた。
 
試合後の福井のキャプテン・尾崎瑛一郎の言葉が奥深い。
 
「得点できるチャンスを作り出していたのだが、逆にそれが、決めきれなかったところにつながってしまったのかもしれない。もう一回チャンスがある、もう一回あると。逆に大分さんは決定的なチャンスをしっかりと前半の立ち上がりで決めてこられた。自分たちが攻めていたときはいい意味で自信を持っていた時間帯だったが、逆にその気持ちが最終的に最後の点を取れなかったところにつながってしまったのかと、両方感じている」
 
ともあれ、15人で一体感を持って戦った成果。雨上がりの消耗戦を制して、ラウンド16の相手はJ2群馬に決まった。トーナメントのスリルも楽しみつつ、まずは大分へ戻り、中2日でのJ1第22節H浦和戦を見据える。