プランBの完遂まであと10分ほど。攻守両面で最後の強度とクオリティーに課題
対横浜FMとして準備した策がハマらず、すぐに切り替えて辛抱強く戦っていたが、82分に失点。あきらめずに追撃するも実らず、0-1で敗れた。
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対横浜FM戦術がハマらず圧倒される展開に
試合開始と同時に守備の時間が長くなったので4-4-2の立ち位置がデフォルトのようになっていたが、基本フォーメーションは3-4-2-1で、守備時にスライドして4バックになる形でスタートしたようだった。横浜FMの特徴的なビルドアップに対して前から守備に行き、その勢いで攻めるアグレッシブな策を講じていた。
ただ、それが上手くハマらない。相手はハーフスペースを取ったり外に張ったりとこちらの状況を見ながらポジショニングすることに長けており、ローテーションも織り交ぜながら流動的に攻めてきた。さらには左WGのエウベルが個の仕掛けでも高いクオリティーを発揮する。
6分にはチアゴ・マルチンスが最終ラインから豪快なミドルシュートを放つなど、ピッチ全域からゴールを狙う横浜FM。7分には渡辺皓太のクロスをマルコス・ジュニオール が収めてシュート。両サイドから積極的にクロスやスルーパスを供給するが、ポープ・ウィリアムが落ち着いてセービングした。
間を使って攻められるので可変4バックは早々に封印し、5-4のブロックを構える形に変更。これにより横浜FMのサイド攻撃にも人数をかけて対応できるようになったのだが、代わりに攻めることが出来なくなった。ボールを奪ってもつなぐことが出来ず、前方に大きくクリアするのが精一杯で、セカンドボールを相手に拾われ攻め返される繰り返し。防戦一方で苦しい時間帯が続くが、40分のレオ・セアラの角度のないシュートもポープががっちりと押さえ、無失点で折り返した。
粘り強い戦いで光明が見えはじめたかに思えたが…
プランがハマらなかったからとはいえ、前半を無失点で終えたことはひとつのポジティブな要素でもあった。このまま耐えきれれば最低でも勝点1は取れる。逆にこれだけ攻めながらゴールを割れない横浜FMに焦りや疲労が出てくれば御の字だった。
後半は香川勇気と高畑奎汰の左右を入れ替え、守備の積極性を増してスタート。49分にはマルコス・ジュニオールの左CKからチアゴ・マルチンスにヘディングシュートされるが、ポープがキャッチした。その1分後、ようやく大分にファーストシュート。高畑が左サイドを突破してクロスを入れ、長沢駿が頭で合わせたが、高丘陽平に正面でキャッチされた。
大分が攻めはじめたことで横浜FMの決定機も増える。レオ・セアラのこぼれ球からのダイレクトシュートをポープがパンチングでクリアした。
横浜FMは60分、仲川輝人を前田大然にチェンジ。前田が左WGに入りエウベルが右に移った。62分には早速、その前田が折り返しでビッグチャンスを築くが、エウベルのシュートは枠の上へ。大分は65分に長沢をベンチに下げ、渡邉新太を投入。渡邉はそのまま頂点に入る。
悔やまれる82分の失点がそのまま勝敗を分けた
66分にはマルコス・ジュニオールの右CKにチアゴ・マルチンスが合わせ枠の上。68分には小池龍太のクロスが三竿雄斗に当たってコースが変わったが、ポープがキャッチして事なきを得る。
度重なるチャンスを大分の粘り強い守備に阻まれる横浜FMは79分、マルコス・ジュニオールを天野純、レオ・セアラをオナイウ阿道、エウベルを樺山諒乃介に3枚替え。大分も同時に高畑をエンリケ・トレヴィザンに代えて左CBに入れ、三竿を一列上げる。
だが82分、天野のクロスに前田が飛び込み、見事なヘディングシュートで横浜FMがついにゴールをこじ開けた。ここまで粘った守備の決壊を受け、片野坂知宏監督はすぐに羽田健人を長谷川雄志に、髙澤優也を小林成豪に交代する。
89分には前線に上がっていたエンリケがクロスを入れるが、中に入ってきた渡邉には合わない。アディショナルタイム4分の追撃も実らず、試合は0-1でタイムアップ。あと10分ちょっと、しのぎきれていれば、あと少し攻撃に精度や迫力があれば、と、悔やまれる敗戦となった。
厳しい台所事情、連戦による準備期間不足
連戦における選手起用や交代のタイミングからしても、いまチームコンディションが良くないことはありありと窺い知れる。戦術上の関係かクラブから公式な発表はないが、明らかに選手層が薄い。
前節の仙台戦で顔面を強打した長沢は、フェイスガード姿で先発し途中交代。同じく前節に頭部を激突させた松本怜の欠場は、脳震盪疑いかと思われる。好調だったキーマンが唐突に姿を消したかと思えば、復帰したばかりの選手が残り数分だけ出場するのも強行な選択ではないか。開幕戦の負傷で全治6週間と診断された野村直輝はいまだ戦列に戻れていない。エンリケについては、リーチの長さで対人守備に強度もあるが、まだ組織にフィットしているとは言い切れず、入れ替わられて周囲に負荷がかかる場面も多い。最近ではパワープレー要員として定着しつつもある。
怪我やコンディション不良は不可抗力にして不可避とはいえ、これだけ戦力が整わない状況で連戦を戦うのは厳しい。出場を重ねている三竿や下田北斗、香川らには疲労の色が明らかだったが、休ませられない台所事情なのだろう。
連戦のため準備も最小限となる。横浜FMが臨機応変にポジショニングしてくることはあらかじめわかっていたことのはずだが、用意した策を十分に機能させられなかった。その守備戦術に時間を割いたためか、5バックに変更してからボールを奪った後の攻め方については共有されていなかったようにみえた。共通認識がなかったのか、相手のプレスに焦っていたのか。これはチームの成熟度や戦術提示の課題といえるだろう。
試合後の記者会見では憔悴した様子の指揮官にサポーターへのメッセージを要求するメディアも現れた。監督だけが矢面に立たされている状況になっていることを受け、フロントに発信を求める報道陣も多い。
とにかく、次節の福岡戦でリーグは一時中断期間に入る。中断前のラストゲームを、力を振り絞って全員で戦いたい。