TORITENトリテン

試合レポート

6ポイントマッチで痛恨の黒星。決定力と修正力の課題をどう乗り越えるか

 

前半には完全に掌握していたペースを、後半は奪われて取り返せなかった。下位同士の直接対決で相手に勝点3を与える痛恨の結果。順位も転覆し、18位となった。

試合情報はこちら

 

5分に失点も12分に追いつき、前半は圧倒する展開

立ち上がりから長沢駿をターゲットにピッチを広く使って攻める姿勢を見せた大分だが、5分にいきなり失点する。中盤でフォギーニョにボールを奪われ、仙台が得意とする縦に速い攻撃を止められずに最後は西村拓真のループシュート。フォギーニョの攻め上がりもあり守備陣形が崩れた中で三竿雄斗が体を投げ出したが間に合わなかった。
 
先制点を奪われて厳しい展開になるかと思われたが、その後の大分はボールを動かして主導権を握り続ける。大分のビルドアップを阻もうと、特に三竿と坂圭祐のところにプレスをかけてくる相手を、サイドの連係で巧みに剥がしては左右それぞれの特長を生かして攻めた。左は三竿との関係良好な香川勇気によるゴリゴリの縦突破と切り返し、右は松本怜のタイミングよく後ろから出ていく加速と町田也真人との連係。多彩なクロスも多く供給でき、大分が本来目指してきた「相手を引きつけて背後を使う」「サイドを起点に攻める」「守備の連動と連係」といったことが体現できた内容になっていた。
 
そんな中で、12分に同点弾が生まれる。香川のクロスは長沢の背後で構えていた町田のもとへ。やや難しい体勢で放った押さえの効いたボレーはヤクブ・スウォビィクに阻まれたが、詰めていた長沢がすかさずこぼれ球を押し込んだ。
 
その後も圧倒的な大分ペースで試合は進む。カウンター対応には懸念材料も見えたが、エンリケ・トレヴィザンの一歩のリーチで守れてもいた。セカンドボールも距離感良く奪い、攻める時間の長い展開。だが、16分、19分、36分、39分、43分…、度重なる好機を逸して追加点が取れない。前半アディショナルタイムにはフォギーニョのカウンターからのシュートを浴びたが、エンリケのブロックで危機を脱した。

 

後半は仙台の修正に形勢逆転を許す

「前半をしのげたのが大きかった」と、手倉森誠監督は試合後に振り返る。守備がハマらずやられていたが、前半はそのままでハーフタイムまで粘った。前半にそれ以上失点しなかった仙台と、追加点が奪えなかった大分、ここが勝敗のひとつ目の分岐点だった。
 
後半の仙台は照山颯人を真瀬拓海にチェンジしてスタート。立ち上がりにその真瀬が抜け出して折り返し、最後はポープ・ウィリアムに阻まれたものの、氣田亮真のシュートシーンを演出した。
 
守備では大分のビルドアップへのプレスを収め、前半はそれによりぽっかりと空いた中盤の底でフリーになっていた下田北斗と羽田健人を押し下げる。これにより大分の距離感は悪化し、セカンドボールが拾えなくなった。運動量も落ち、フォギーニョに自由を与える。
 
フォギーニョからの展開が増え、サイドで主導権を握られるようになって、形勢は逆転。何度も仙台の縦に速い攻撃にさらされながら、前半同様に長沢をターゲットに攻め返した。53分、香川のクロスに合わせた長沢のヘディングシュートは枠の外。

 

交代選手の躍動か不発かも明暗を分けた

逆に57分には富田晋伍の浮き球を西村が落とし、赤﨑秀平が倒れ込みながらシュートして枠上へ。次第に勢いを増して決定機の色合いを濃くする仙台から流れを奪い返そうと、片野坂知宏監督は64分、渡邉新太を藤本一輝に交代する。藤本の個人技による打開を期待した形だが、疲労が見える組織の中で、状況をひっくり返すだけのパワーを出すことも出来ず、逆に奪われてカウンターの起点に。それでも66分にはリズミカルなパスワークから相手にクリアされたこぼれ球を長沢がシュートするが、左に逸れた。
 
一方の仙台は65分に氣田に代えて投入した加藤千尋が結果を出す。75分、冨田のクロスからのヘディングシュートはポープ・ウィリアムに触られながらもゴールネットを揺らした。
 
再びリードした仙台は、赤崎に代えてフェリペ・カルドーゾ。ピッチに入った直後からカルドーゾは攻撃の軸となり、大分はそれに対応してやらせずにはいたが、それでもカルドーゾにボールが収まるため、仙台の時間が増える。
 
なんとか追いつきたい大分は83分、町田を小出悠太、松本を井上健太、エンリケを髙澤優也に三枚替え。坂が3バック中央に移って右には小出が入り、右シャドーに髙澤と、右サイドを刷新する。
 
90分には仙台が富田をアピアタウィア久に、関口訓充を松下佳貴にチェンジして守備を固めた。アディショナルタイムは4分の表示。90+2分には下田のクロスに長沢がドンピシャで合わせたが、ヤクブ・スウォビィクのビッグセーブに阻まれる。その直後には藤本の折り返しを髙澤がヘディングシュートして、これもヤクブ・スウォビィクの正面。追撃も虚しく敗れるに至った。

 

苦しい台所事情も踏まえ、どう戦うか

大事な6ポイントマッチでのダメージの大きな敗戦。チームは心身両面でのリカバリー力を問われることになった。
 
守備の修正がハマった仙台と、次の一手を繰り出せなかった大分。そして交代選手が課されたタスクを完遂した仙台と、結果を出せなかった大分。ここにも勝敗の分かれ目があった。
 
本来なら主力で活躍すべき戦力も含め多くが離脱している中で、中2日のアウェイ連戦を含む過密日程を戦うのは厳しい。怪我やコンディション不良で離脱しているメンバーには一日も早く復帰してもらいたいが、それを待っている余裕もない。現在稼働できる選手層でなんとか戦わなくてはならない中で、結果を出すにはどうすればいいのか。
 
内容で圧倒していた前半に多く迎えた決定機も、完全に崩しきれたわけではなく、長沢のストロングポイントに頼っていたところがある。ここ数試合の渡邉の度重なる決定機逸は、勢いがあるだけに残念だが、もう少し落ち着いて狙いたい。藤本ら若手に関しては、個々の質を高めてもらうことが第一になる。リーグ戦フル稼働中の下田のコンディションも気になるところだ。
 
ここから横浜FM、福岡と好調なチームとのホーム連戦。非常に厳しい戦局が続く。連敗を重ねることは避けたい。まずは心身のコンディション回復に努めてもらいたい。