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試合レポート

チームとしての地力不足が露呈。早急な立て直しを

 

対湘南の準備を施して相手と同じ3-5-2システムで臨んだものの、それが裏目に出ることに。強風にも苦しめられ、失った勢いを取り戻そうと立ち位置を変えながら挽回を図ったが、それも虚しく敗れた。チームはこの敗戦からなにを学ぶか。

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敵将の試合後コメントから見えた敗因

前節、7連敗を止めた流れは継続できなかった。立ち上がりから相手に主導権を明け渡し、細かく立ち位置を変えながら挽回を図ったが、結果的にはなすすべなく敗れた感触ばかりが残った。
 
敵将の試合後会見には、この展開となった要因がシンプルに集約されていた。まずひとつは風だ。レモンガススタジアム平塚の風は、上空で巻くなどして非常に癖がある。そしてこの日はとにかく風が強かった。長沢駿をターゲットにフィードやクロスを送るのは、難しかっただろう。逆に湘南は、クロスが風に押し戻されたところで待ち構えていた名古新太郎が先制点を奪った。あのとき大分守備陣の寄せが甘かったのは、クロスの軌道の目測を誤ったこともあったのだろうか。アウェイ戦も含めてこのところ風の強いゲームが続いていたという湘南。浮嶋敏監督は「風の影響も頭に入れながら、風を味方につける戦いが出来た」と振り返った。長沢は「風は相手も同じ条件なので言い訳にしたくない」と矢印を自身に向けたが、やはりこの風の癖を計算できるのと出来ないのとでは、大きな差があるのではないかと思う。
 
それから、大分が今節採用した3-5-2システム。湘南のアグレッシブなハイプレスとシンプルで力強い攻撃に対して策を講じたものだったが、湘南にとってはそれが好都合に転がったという。「大分さんが並びを変えてきたことは、われわれにとっては少しやりやすかった。普段から紅白戦でも同じシステム同士でやっているので」と浮嶋監督。同システムのマッチアップでの噛み合わせがしっかり頭に入っていた湘南の選手たちの前では、大分の“奇襲”は不発に終わった。

 

強風とプレッシングに苦しむ中で

アグレッシブな相手のプレスを受け、強風にボールコントロールが慎重になったのか、あるいは3-5-2でのボールの動かしにまだ迷いがあったのか。試合の入りから大分は攻守両面で何も出来ず、もどかしい時間を過ごした。勢いあふれる相手の攻撃をしのぎながら、ボールをつないで前進させようとするのだが、追い風のはずにもかかわらず、こちらは勢いが出ない。それに引っ張られるように、守備の迫力も醸せていなかった。
 
17分の失点は、右サイドで相手に寄せた背後を取られての高橋諒のスルーパスから。サイドに流れていた町野修斗が送ったクロスは風に押し戻されながら名古の足下へ。押し戻されたぶん深く入りすぎた感もあったが、トラップが決まり体勢を崩しながらシュートを放つと、ボールはポストの内側を弾いて先制弾となった。
 
飲水タイム後に立ち位置を修正したのか、町田也真人が中盤での組み立てに関わる場面が増える。激しく守備に走っていた渡邉新太も長沢との距離を近づけたように見えたが、長沢が風を読みながらボールを収めようとしても、湘南守備陣の激しい寄せに先回りされ、セカンドボールは相手に拾われた。43分、三竿雄斗が長沢へと送ったアーリークロスは風に流されて標的の頭上を越える。結局、何も出来ないまま終わった印象の前半だった。

 

立ち位置修正で盛り返した時間帯もあったが…

後半はさらに立ち位置を修正して、やや勢いを盛り返す。松本怜が右サイドの連係から抜け出してクロスを供給する場面もいくつか作ったが、これも風に流されるのか精度が上がらない。
 
だが、その形から59分にチャンス。リスタートから小出悠太が松本に入れ、その落としを町田がワンタッチで裏へ送って抜け出した松本がクロス。長沢の背後へと相手を引き連れながら走り込んできた渡邉のシュートは、チームが狙いとしている形だったが、谷晃生のファインセーブに阻まれた。そのこぼれ球をさらに渡邉が押し込もうとするが、今度はポストに弾き返される。
 
大分が流れを掴みそうになっていた60分、湘南は3枚替え。町野を大橋祐紀、名古を茨田陽生、山田直輝を古林将太へと交代して勢いを保った。67分には谷のロングフィードに反応した大橋が、阻止しようと飛び出してきたポープ・ウィリアムと入れ替わり、ガラ空きになったゴールへとシュート。これが左に逸れて胸を撫で下ろす一場面もあった。
 
72分、大分は福森健太に代えてエンリケ・トレヴィザン。エンリケが左CBに入り、三竿を一列上げた。同時に渡邉を屋敷優成にチェンジしてシステムを3-4-2-1に変更。76分には右に流れた長沢とのワンツーから松本がクロスを送ったが、ボールは中に走り込んだ屋敷と町田の頭上を越えて谷にキャッチされ、せっかくの攻撃の形もちぐはぐな印象となった。

 

1点を追うパワープレーも裏目に

77分、湘南がタリクに代えてウェリントン。79分には舘幸希が右サイド高い位置でボールを受け、自らドリブルでエリア内に進入すると切り返して左足シュートしたが、ポープの前に体を入れたエンリケが素早い対応でブロックした。2分後には左サイドで丁寧に組み立て、町田のクロスを長沢が反転シュートするもわずかにオフサイド。
 
81分には小出がベンチに下がり羽田健人がピッチへ。羽田は3バックのセンターに入り、坂圭祐が右CBへと移った。82分には古林が仕掛け大橋のシュートチャンスを演出するが、下田北斗がカットしてしのぐ。85分には長沢の落としから下田が左足シュートするが右に逸れた。88分、湘南が高橋に代えて池田昌生。
 
1点差を追って、大分は89分に三竿と松本に代え高山薫と髙澤優也を送り込んだ。高山が左WBに入り、髙澤は右シャドーへ。右WBには屋敷が移った。
 
アディショナルタイムは4分。片野坂知宏監督は最後のパワープレーに懸け、エンリケを前線に上げると長沢との2トップ状態にした。90+2分の大橋のシュートは小林裕紀がブロック。だが、そのこぼれ球を拾った池田のクロスに跳んだのはウェリントン。マークについた高山の頭上から試合を決める追加点を叩き込まれた。90+4分、古巣に一矢報いたい下田の意表を突くグラウンダーFKも、谷に横っ跳びでキャッチされて終戦に。

 

チームとしての確たる根幹を

ウェリントンが出てきた後で彼をどうケアすべきだったのか。エンリケを前線へと上げる指示を出した際に、全選手にそれを共有出来ていなかったと片野坂監督は悔やんだ。こういう細部の不徹底に、やはり主力が大幅に入れ替わったことの皺寄せを感じる。
 
そして対湘南として準備した3-5-2が機能しなかった要因は何か。指揮官は自らの準備不足を嘆いていたが、あらためてチームで検証し、修正しなくてはならない。
 
今季特に感じるのは、事前に準備した狙いがハマれば好ゲームとなり、ハマらなければ大火傷になる傾向の強さだ。チームの土台が強固でないため、対相手戦術が小手先感にとどまっている。狙いがハマらない試合などというものは往々にしてある中で、確たる根幹を持つチームであれば、そこから修正して戦うことも出来るはず。それは片野坂監督自身が試合後コメントでも吐露したとおりだ。
 
そのチームの土台を、どこで固めていくのか。プレシーズンに地力を十分に高められないまま、開幕から怒涛の連戦に突入した状態で負けが込んだ。これまでの大分は毎年、戦術的ピリオダイゼーション理論の下、実戦とトレーニングのルーティンで経験値を積みながら完成度を上げてきたが、「どの試合ももう落とせない状況に僕らはある」と長沢。チームの成長は間に合うのか。ここから高温多湿な夏がやってくる。戦い方の整理とゲームモデルの再徹底が急務だ。

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