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試合レポート

チームマネジメントと両立しつつ結果を求めたがドロー。次節、最終決戦へ

 

前半は守備の狙いもハマり、ほぼワンサイドゲーム状態が続いた。髙澤の今季初ゴールで先制したが追加点が取れず、相手の修正とこちらのパワーダウンで追いつかれ、ドローに終わった。ただ、残念な結果となった一方で、戦力の底上げも進んでいる。

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マンツーマンプレスがハマり主導権を握る

新型コロナウイルス感染者1名と、その濃厚接触者2名。他に負傷者も出ており、片野坂知宏監督たちコーチ陣は予選突破へとつながる結果に加え、リーグ戦を含めた今後も見据えてのチームマネジメントも求められることになった。
 
リーグ戦連敗を「7」でストップしたJ1第12節・清水戦から中2日でのホーム連戦。スタメン9人を入れ替え、エンリケ・トレヴィザンが初先発。ベンチにはペレイラと宇津元伸弥も並んだ。徳島は中3日でアウェイ連戦。J1第12節・鳥栖戦からスタメン10人を入れ替えた。
 
立ち上がりは徳島が主導権を握りかけたが、好機を生かせないうちに、14分に大分が先制。長谷川雄志の右CKからエンリケが相手DFを引き連れてニアで潰れ、相手がクリアし損なって流れたところを髙澤優也が流し込んだ。髙澤は待望の今季初ゴール。これを境に勢いを得た大分が、ゲームをリードしていく。
 
徳島のビルドアップに対してマンツーマン気味にはっきりしたプレスをかけたことがハマり、徳島はミスを連発。「裏返す選択肢もあったのだがそれが有効に出来てなかった。足元ばかりになって奪われショートカウンターを受けた」と司令塔・渡井理己が試合後に振り返ったとおり、徳島の前線へのフィードも出足の早い大分が回収し、素早い攻撃につなげた。
 
こちらのペースで進めているあいだに追加点を挙げられなかったことが悔やまれる。19分にはエリア外ゴール正面で渡邉新太が浮き球コントロールからの強烈なシュートを放つが、わずかに枠の左。21分には右CBから攻め上がった坂圭祐のシュートが長谷川徹にキャッチされる。27分には渡邉のスルーパスに抜け出した髙澤が絶好機を迎えたが、シュートはファーポストに当たって弾き出された。

 

徳島の修正と交代策に持っていかれた流れ

徳島もそのままにはしておかない。前半の終盤から少しずつ立ち位置を修正し、大分のプレッシングを剥がしにかかると徐々にペースを手繰り寄せはじめた。40分には徳島FKのチャンス。藤田征也の浮き球に鈴木大誠が頭で合わせたが、枠の右に逸れた。
 
1-0で折り返した後半、大分は坂と渡邉をベンチに下げ、小出悠太と藤本一輝を投入。事前に徳島の出場選手が読めず、質的優位を得るための、エンリケのポジションも含めた最終ラインの配置でもあったかもしれない。中3日で開催されるアウェイのリーグ湘南戦に向けても、選手層を厚くしておかなくてはならなかった。
 
徳島がポジショニングを修正し、前からの圧を強めてきたため、こちらのプレスが前半のようにはハマらなくなり、徐々に選手たちの疲労も目立ちはじめて戦況は一進一退となる。
 
そのタイミングで、今度は徳島ベンチが動いた。64分、吹ヶ徳喜に代えてカカ、河田篤秀に代えて垣田裕暉の二枚替え。カカが中に位置取り安部崇士がアウトサイドへ移ると、垣田を軸に大分を押し込みにかかる。74分にはCKの流れから垣田のクロスを杉森考起がボレーするが枠の上。
 
75分には再び徳島ベンチ。杉森、小西雄大、藤田を藤原志龍、鈴木徳真、岸本武流へと同時に3枚。これにより中盤の底がフレッシュになり、両サイドの強度が高まった。藤原の個の仕掛けでの突破や岸本のアグレッシブなポジショニングと攻撃参加が、一気に流れを引き寄せていく。

 

追いつかれドロー。戦力の底上げは進んだ

ハーフスペースを取ってくる岸本にぶつけるように、片野坂監督は78分、髙澤に代えてペレイラを投入すると、長谷川雄をアンカーに、その前に左にペレイラ、右に弓場将輝。前線は藤本と屋敷優成の2トップを並べる3-5-2へとシステム変更する。さらに80分には黒﨑隼人に代えて高畑奎汰。高畑が左WBに入り福森健太を右に移した。岸本が空けたスペースを高畑と藤本に突かせ、逆では盛んに上がってくる安部に福森をぶつける形。
 
その施策自体は非常にロジカルだったのだが、ピッチではそのとおりには行かなかった。ペレイラに課したタスクはシンプルなものだったが、まだ合流して日が浅く、相手の特徴もわからなければ周囲との連係も未熟な状態だ。それでもこうやってぶっつけ本番に近い形で実戦起用していかなくては、戦力として育てられないのが連戦のつらいところ。
 
サイドの主導権を徳島に奪われたことで大分は押し込まれ、ブロックを構えっぱなしの状態になった。ボールを奪っても前線にアバウトに蹴り出すことしか出来ず、徳島に拾われてしまう。左右に揺さぶられてブロックにほころびが生まれる中で、エンリケや羽田が体を張ってしのぐ。粘っていたのだが、84分にセットプレーから追いつかれた。渡井の右CKにカカがエンリケの高い打点で合わせたヘディングシュートがネットを揺らす。珍しくキッカーを務めた渡井は「ストーンさえ越えればあとは中で良く合わせてくれた」と振り返った。
 
同点とされた大分は屋敷に代えて、これがプロデビューとなった宇津元。九州大学リーグ2年連続得点王に勝利への望みを懸けたが、戦況は徳島ペースで変わらないまま、以後はどちらのネットも揺れずに、試合は1-1で終了した。
 
残り1枠はグループステージ最終節で決するBグループ。ノエビアスタジアム神戸で行われた神戸対FC東京はスコアレスドローだった。より有利な条件を手に入れたかったが、徳島の修正の前に、こちらは前半の狙いを維持できなかった形だ。試合後の片野坂監督は無念そうな表情を隠せなかった。
 
それでも、連戦中に複数名の離脱者が出た中で、エンリケのフル出場やペレイラと宇津元のデビュー、弓場の成長、黒﨑や福森のさらなるフィットなど、マネジメントの面では底上げを進めることが出来たと言える。怪我から復帰した渡邉が躍動するところも確認できた。負傷などで多少の入れ替わりはあったとしても、計算できる選手はつねに出来るだけ多く手元に並べておきたい。チームは中3日でのリーグ湘南戦で、今季初の連勝を目指す。