追加点は課題だが、今季初の無失点勝利。リーグ戦につなげたい
リーグ戦2連敗中のチームがなんとしても勝利したかったルヴァンカップ徳島戦で、幸先のいい先制からの無失点勝利。追加点が取れず相手の追撃に押し込まれる展開となり、課題はいまだ残るものの、グループステージ突破へと望みをつなげた。
試合情報はこちら
長沢の2試合連続弾で先制。黒﨑はJ1初アシスト
快晴だが冷たい強く風が巻き、いかにもボールコントロールで波乱の起きそうなポカリスエットスタジアム。コイントスに勝った大分は、エンドを入れ替えて試合をスタートした。
リーグ戦に出ているメンバー中心で先発を組んだ大分と、ルヴァンカップ開幕戦のメンバーで臨んだ徳島。基本フォーメーションは4-2-3-1だが攻撃時には右サイドが高い位置を取って半時計回りにスライドする徳島に対し、大分は守備時には5-4-1のコンパクトなブロックを組んで対峙する。ただ構えるだけでなく、球際へとマンツーマン気味に寄せて相手の攻撃を阻み続けた。
それをかいくぐられて3分、渡井理己にシュートされるが枠の左。徳島も出足よくセカンドボールを拾いに出るが、大分は集中して予測し縦パスを通させない。
5分、下田北斗の大きなサイドチェンジが高い位置を取る黒﨑隼人へ。町田也真人を経由して下田が落とし、小林裕紀が再び黒﨑に出すと、黒﨑はシンプルにゴール前へとクロスを入れる。巻き気味の弾道は風の影響も受けたのか、ヘッドで処理しようとした相手DFがカブり、その後ろで待ち構えていた長沢駿が正確にミートしたボレーシュートにより、あっさりとゴールへと吸い込まれた。「アップのときから結構風があって、ボールが止まる感じがあったので、試合の序盤から、もしかしたら相手DFが目測を誤るのではないかと我慢して待っていた」という経験豊富な長沢のさすがなところで、コイントスによるエンドチェンジも伏線になった形だった。
スペースを消し要所を潰す組織的守備
33分にも羽田健人が相手の縦パスをインターセプトして持ち上がり、右に展開。黒﨑が藤原志龍を切り返しで剥がしてクロスを入れると、ボールウォッチャーになっている相手の間で待ち構えていた長沢が、先制点と同じような形で右足ボレーを狙った。が、これはミートしきれず長谷川徹にキャッチされた。
序盤から積極的にクロスを上げていた黒﨑だったが、次第にドリブラー藤原の仕掛けをファウルで止めるようになる。藤原と黒﨑との1対1の状況を作るため、敢えて藤原に近づかず大分守備陣を遠ざけるポジションを取っていたと田向泰輝は試合後に明かした。35分にはFKを献上し、藤田征也に速く低いキックでニアを狙われたが高木がファインセーブでしのぐ。40分にも藤原を体で止めた黒﨑はイエローカードを提示され、同様の形で藤田がニア。飛び込んだ宮代大聖が合わせたが高木が体を張ってかき出した。
スペースを消す大分に対し、43分には小西雄大がブロックの外からミドルシュート。これも高木がしっかりとセーブして、大分が1点リードした状態で試合は折り返す。1点では危ないと考えていた片野坂知宏監督は「追加点を取りにいこう」と選手たちを後半のピッチに送り出した。
前線にボールを集める徳島に押し込まれる
36分に河田篤秀にアクシデントがあり宮代に交代していた徳島。藤田もどこかを痛めたとのことで、後半頭から右SBを岸本武流にチェンジした。大分は警告を受けた黒﨑に代えて井上健太。いずれもそのままのポジションに入る。
スペースを消して構える大分に対し、徳島は中盤を省略して背後を狙う宮代への長いパスで押し込みにかかった。大分がボールを奪う機会が減ったため、徳島が主導権を握って攻める展開へと傾く。大分がボールを持ったときには徳島もしっかりと守って奪い返し、前半とは違って立ち位置で相手に先回られる大分は、なかなか攻撃を最後まで成立させることが出来なくなった。
64分、大分は渡邉を小林成豪に、長沢を髙澤優也へと二枚替え。徳島も70分に2枚のカードを切り、田向泰輝と藤原を下げてジエゴと佐藤晃大を投入すると、佐藤が1トップ、ジエゴが左SB、左SHには浜下瑛が回り右SHに宮代と配置転換する。これにより特にジエゴから1トップ佐藤を目掛けてのアーリークロスが増えた。それに押し下げられつつ、さらにボールを奪っても相手のプレッシングを受けて上手く前に運べない大分は、徐々に跳ね返すので精一杯という展開になっていく。小林成が個人技で強引に持ち上がって押し戻すが、サポートなく相手に囲まれて潰されるとまた押し込まれる繰り返し。
ボールを運べず最後は防戦一方の逃げ切りに
ジエゴのアーリークロス、岸本のアグレッシブなポジショニングと仕掛けでサイドでも主導権を握った徳島は、攻勢を強めるが、全員がゴール前に戻って体を張る大分をこじ開けることが出来ない。78分に大分が福森健太を松本怜に交代してサイドに落ち着きをもたらすと、80分には徳島が鈴木徳真を藤田譲瑠チマに代えて勢いを保つ。
終盤は一方的に攻められる状況が続き、髙澤にいい形でボールを入れることが出来ない。そんな戦況を踏まえて片野坂監督は84分、町田に代えて小出悠太。右WBに入れてジエゴにぶつけ、井上を右シャドーへと移して守備を強化する方法に出た。
アディショナルタイム4分が尽きるまで、防戦一方。最後は大分が1点を守り切れるか徳島が壁を破れるかの攻防のみが残った。水際で跳ね返し続けた大分は、結果的に徳島の精度不足にも助けられ、スコアはそのままで長いホイッスル。大分が公式戦連敗をストップしてリーグ第2節・横浜FC戦以来の白星を挙げた。Bグループのもう1試合は翌28日14時キックオフ。FC東京が味スタに神戸を迎える。
得点機を多く作り出すことが出来ない現状、今季ようやくの無失点勝利は好材料だ。連敗が止まったことも喜ばしい結果だった。ただ、やはり攻撃の時間を増やさなくては、しのぐだけの展開は厳しい。次はリーグ再開。昨季王者・川崎Fを皮切りに強豪との3連戦がはじまる。