辛抱強く構えて狙いどおり先制も、相手ペースを覆せず逆転負け。まだまだ発展途上
組織の練度がまだ高まっていないチームは隙のない守備から攻め返す戦法で一戦に臨んだが、積み上げでアドバンテージのある相手の前に苦戦を強いられる。狙いどおりの形で先制するも、試合は終始相手ペースで逆転負けを喫した。
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11人中7人が新戦力+1名が2種登録の陣容で挑む
リーグ開幕の徳島戦から中2日。スケジュール的にはホーム連戦のこちらにアドバンテージがあったはずだが、積み上げの出来ている選手層という部分では、やはり相手に分があった。
リーグ戦から先発11人全員を入れ替えたうち、7人が新加入選手で藤本一輝と弓場将輝はプロとしてのデビュー戦。さらにもう1人、2種登録の屋敷優成が顔を並べた。藤本一輝と香川勇気は昨年の負傷から復帰したばかりだった。一方の神戸もGK前川黛也を除くフィールドプレーヤー10人をリーグ戦から刷新。新戦力は3人だが、増山朝陽は2年ぶり、小林友希は1年半ぶりに復帰した、いずれも生え抜きだ。安井拓也や中坂勇哉らは過去にもルヴァンカップで活躍した経験を持ち、チームメイトたちとの関係も長い。
組織の練度という面で、立ち上がりから差が出た。4-4-2を基本形にビルドアップ時には3-4-2-1に変形する神戸に対し、大分は5-4-1のブロックを構えてしっかり守るところから攻め返す狙いがある様子を見せた。実際に、神戸にペースは握られつつもスペースを消して中を固める大分は、決定的な仕事は許さずに試合を進める。
ただ、ボールを取ってもすぐに相手に奪い返されてしまい、なかなか攻撃の形が作れない。切り替えの早い相手に封じられ、セカンドボールへの反応でも後手を踏んだため、ほとんどの時間、神戸に主導権を明け渡した。
藤本一輝の初ゴールで先制も逆転を許す
苦しい立ち上がりとなったが、チームは規律正しく守るところから、狙いどおりの形で先制点を挙げる。比較的ボールを持てていた時間帯。下田北斗からの大きなサイドチェンジは、右サイドにフリーでいた松本怜へ。松本がそれを受けて屋敷に託し、屋敷はエリア内の長沢駿へと縦に差し込む。長沢は相手を背負いながら再び松本へと落とし、松本がクロスを送ると、相手の死角から飛び込んできた藤本一輝がヘディングで押し込んだ。藤本はこれがプロ初ゴール。これぞカタノサッカーという20分の先制弾だった。
その後も、ペースは相手に握られながらも悪くない試合運びを続けていたのだが、あと少しでリードしたまま折り返せるはずだった44分、セットプレーで失点。初瀬の右CKを増山に頭で合わせられ、ポープ・ウィリアムの指先をかすめて勢いよくゴールを割られた。昨季セットプレーでの失点の多さを修正すべく、守り方を変えて臨んでいたのだが、マークが外れてしまった。
同点で迎えた後半も、神戸は立ち上がりから激しくプレッシャーをかけてきた。前後半の立ち上がり15分は前から行くと決めていたということだったが、組織の熟成が進んでいない大分にとって、前後半の入りは考えながらプレーしがちになる時間帯。そこを勢いで上回るような神戸の仕掛けだった。
51分、激しいプレスでボールを奪われたところから、櫻内渚がクロス。エリア内で胸トラップした増山には香川が寄せたが、増山はそれをかわして折り返す。走り込んできた櫻井辰徳のヘディングシュートはポープがファインセーブしたのだが、そのこぼれ球を中坂勇哉に沈められ、逆転を許した。
果敢に追撃に出るも最後まで攻略できず
51分には弓場が高い位置でインターセプトし自らシュートにまで持ち込んだが、枠は捉えきれず。55分には下田の縦パスを受けた長沢が反転シュートを放ったが、これも右に逸れた。
62分、神戸は増山を佐々木大樹に、中坂を藤本憲明に交代。同時に大分も藤本一輝に代えて小林成豪を送り込む。小林成豪も昨季負傷からの復帰戦。古巣相手に躍動を期待したが、ボールを握るのは相変わらず神戸。前線で漂う藤本憲明へとクロスを送り、66分には櫻内のクロスから得意のワンタッチゴールを狙ってきたが、ポープがそれを阻んだ。
70分、大分は屋敷と長沢を髙澤優也と伊佐耕平にチェンジ。攻撃陣の鮮度を保って追撃を続ける中、神戸も78分、櫻井を山口蛍、小田裕太郎を井上潮音に交代して強度を高めた。
79分には田中順也のシュートをポープのビッグセーブでしのぐなど粘り強く守っていた大分だが、81分、パス交換して攻め込んだ佐々木からの落としを受けた田中が3点目。大分は松本を高山薫、弓場を長谷川雄志に代えて、重心を前にかけた。おそらく守備時は福森が残った4バック、攻撃時は両サイドが上がった3バックの形で長谷川が最終ラインに落ちて4-1-4-1になっていたものと思われる。ようやく黒﨑隼人の攻め上がりも見ることが出来たが、神戸の対人守備も強く、大分を前進させてくれない。
86分には下田の右CKがクリアされたこぼれ球を黒﨑がグラウンダーで狙うが枠の左。ボールを保持する神戸は後半アディショナルタイムに初瀬を酒井高徳に交代。大分の追撃は実らず、1-3でタイムアップした。
一瞬の反応や判断で差が出る現状
昨季までの積み上げを糧に守備体系を修正した神戸と、戦力が大幅に入れ替わり戦術浸透過程にある大分との練度の差が出た一戦となった。戦術浸透や共通理解の途中段階ではどうしても一瞬の反応や判断で遅れを取りがちとなり、それにより球際やセカンドボールで相手に上回られ主導権を明け渡すことになる。もう少し我慢の時期が続くことになるのかもしれないが、連戦でもあり、一日も早く組織を成熟させたい。
リーグ戦とカップ戦のホーム連戦を終えて、今季初白星はまだお預けのままだが、そういう意味でも確かに片野坂知宏監督の言ったとおり、多くの選手がこの2試合で実戦を経験できたことは収穫と言えるのかもしれない。トレーニングマッチが出来ない中で藤本一輝、香川、小林成豪らが復帰戦をこなせたことも、今後につながる材料としたい。戦力が入れ替わり積み上げの失われた部分がある現状を現実として受け止めながら、チームは一戦ごとに経験を積む。
次は中3日でリーグ戦5連戦がスタート。横浜FC、G大阪とのアウェイ連戦となる。