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試合レポート

来季への課題を持ち越した最終節。苦しい日々の中で8966人が沸いた九州ダービー

 

どうなることかと思われた今季も全日程を終了。ドローに終わった鳥栖との九州ダービーは、渡と町田の得点に手応えも感じつつ、来季に向けての課題を持ち越す内容となった。

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勢いあふれる鳥栖にペースを握られた立ち上がり

アウェイ湘南戦から中2日でのアウェイ鳥栖戦。5連戦の5戦目にして今季最終節の戦いは、12月も下旬に差し掛かった極寒の駅前不動産スタジアムに、8966人の観客を集めて開催された。
 
大分の先発は、GKを含め8人を入れ替え。10試合ぶりにムン・キョンゴンがゴールマウスを守り、渡大生は11試合ぶりのスタメン。岩田智輝がベンチからも外れ、右CBには羽田健人が入った。
 
試合は立ち上がりから鳥栖のペース。攻守に勢いあふれる相手のことは想定していたのだが、それに完全にのまれるかたちではじまった。3分、芝に足を取られて転倒した羽田をぶっちぎって小屋松知哉がクロス。今日は2トップの一角で先発していた金森健志がシュートするが枠の上に逸れた。8分には樋口雄太が持ち上がりスルーパス。そのこぼれ球をレンゾ・ロペスに中距離から狙われたが、枠の左へ。15分にも樋口のシュートをムンが弾き、ゴール前にこぼれた中でレンゾ・ロペスと金森に打たれそうになったところを、守備陣が体を張って最後は鈴木義宜が対応した。17分には中野伸哉にドリブルで運ばれシュートを許す。
 
立て続けに訪れるピンチをしのぐ中で、ベンチから渡と町田の左右を入れ替える指示が飛んだ。それが上手くハマって大分が形勢を挽回しはじめる。ようやく訪れた大分のチャンスは19分。長谷川雄志の左CKはファーのペナ外に構えていた町田也真人を狙ったデザインだったようだが精度が足りなかった。20分には知念が獲得した右CKを今度は三竿雄斗が蹴り、さきほどと左右反転したように、ファーに立つ町田がボレー。今度は見事にインパクトできたが、ゴール右隅へと向かった弾道は、横っ跳びした朴一圭のビッグセーブに掻き出された。ターゲットとなる長身選手をピンポイントでマンマークする鳥栖のゾーンディフェンスの穴を突いた形だった。

 

渡のゴールで先制も後半立ち上がりに失点

試合は鳥栖ペースで進みつつも、32分の先制は大分。田中達也のスローインからエリア内で2人を背負った知念が粘り、そのこぼれたところをすかさず拾った渡がゴール前に持ち込んでゴール右隅へと流し込んだ。ベンチに駆け寄ってのゴールパフォーマンスはもちろん“さんぺーの例のあれ”だ。
 
リードしたことで大分の守備に少し余裕が生まれる。38分には町田のスルーパスを受けた知念がシュートするが枠の左。前半アディショナルタイムには小出悠太のクロスから渡がダイビングヘッドしたが、枠の上に逸れた。
 
後半頭から鳥栖は、金森を林大地にチェンジ。金明輝監督は選手たちに、さらなるアグレッシブさを求めてピッチに送り出した。鳥栖のサイド攻撃が勢いを増していた49分、森下龍矢のクロスが逆サイドに流れたところで中野がもう一度速いクロスを送ると、ゴール前にいた小屋松がヒールで軌道を変えてゴールへと流し込み、同点に。
 
そこからは互いに攻めあう展開が続いた。53分には大分が中から右サイドへとワンタッチで動かす攻撃からチャンスを築くが最後で鳥栖の対応に遭う。
 
61分に大分は小出を松本怜へ、渡を野村直輝へと2枚替え。松本が左WBに入って田中が右へ移り、野村はそのまま左シャドーに入った。
 
62分には鳥栖が右CKのチャンス。樋口のキックを林が逸らし、レンゾ・ロペスが跳んだがヘディングは真上に上がってムンがキャッチ。63分には田中のさらに外で受けた中野が持ち上がってクロスを入れレンゾ・ロペスを跳ばせるが、これも弾道は枠の上。76分には松岡大起のミドルシュートが枠のぎりぎり左外へと逸れた。

 

町田バースデー弾で再びリードも追いつかれた

激しい攻防が続く中、片野坂監督は77分、知念に代えて伊佐耕平。直後の78分に追加点が生まれた。ムンのキックを松本が頭で落とし、伊佐がつないで松本が駆け上がる。浮き球のクロスを相手DFラインの前でトラップしたのは町田。左足でのコントロールは見事に決まり、そのまま左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。町田にとっては自身の31歳の誕生日にJ1初ゴールという快挙だった。
 
だが、試合はこれでは終わらない。片野坂監督は試合後に「自分が交代選手で迷っているときに追いつかれてしまった」と悔やむ。82分、中野のスルーパスに抜け出した林が鈴木と競り合いながらゴール前に進入し、そのままシュート。動けずにいたムンの右脇を抜き、ゴール左隅へと流し込んで同点とした。
 
84分には樋口の右CKからレンゾ・ロペスが頭で合わせ、こぼれ球をめぐる混戦の中から林にシュートを打たれるが、どうにか水際でクリア。
 
87分には鳥栖が森下に代えて相良竜之介。同時に大分は田中と羽田に代えて髙澤優也と刀根亮輔を送り込み、松本が右SB、三竿が左SB、伊佐と髙澤が前線に並ぶ4-4-2へとシステムを変更して勝点3を取りにいく姿勢を見せる。90分には伊佐の落としから町田が左足を振り抜いたが枠の右に逸れた。

 

課題を持ち越しつつ改善は来季につなげたい

4分のアディショナルタイムに突入すると、金監督は松岡と小屋松を下げ、今季かぎりで引退する岩下敬輔と小林祐三をピッチへと送り出す。大分が4バックに代えたと思ったら今度は鳥栖が3バックとなった。いい形で2人を送りたい鳥栖は気持ちの強さを見せ、ここからチャンスを量産。90+3分には岩下も絡んで組み立て、原川力がシュートするが枠の右。最後に樋口のFKをムンがパンチングクリアして、長いホイッスル。激しい九州ダービーは2-2で勝点1を分け合う結果となった。
 
決定力やセットプレーからの失点といった課題は、シーズン終盤まで克服できず来季に持ち越す形に。それでもセットプレーからの得点や前線の選手たちの得点など、向上の見えるポイントもあった。もうこのメンバーで戦うことは出来ないが、これまでもそうしてきたように、今季の積み上げを来季へとつなげ、また新たな収穫を重ねていきたい。