ロティーナの“奇襲”により準備が無効に。清武弘嗣の古巣弾に沈む
これまでとは異なるC大阪の戦い方を前に、準備してきたことが機能しなかった。修正はしたものの1点が遠く、清武弘嗣からの“恩返し弾”が決勝点となって、敗れた。
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肩透かしを食らったかたちの坂元対策
対ロティーナ監督リーグ戦初勝利を懸けて、“通算8度目の正直”に挑んだ片野坂知宏監督。C大阪の4-4-2の右SHで攻撃のストロングポイントとなる坂元達裕対策として、今節の左サイドにはWBに三竿雄斗、CBに刀根亮輔を並べ、いつもより守備色の濃い布陣でスタートした。シャドーには前節に続き野村直輝と町田也真人。緻密なポジショニングの駆け引きに長けた2人をロティーナ・サッカーにぶつけ、ボールの動かし方にも工夫を加えて臨んだ。
だが、蓋を開けてみると、その準備がいきなり無になった。C大阪のスタートポジションは4-4-2だが、坂元は1.5列目のインサイドを漂い、右SHに入ったのは坂元ではなく片山瑛一。片山はマッチアップする三竿との関係を見ながら守備時には最終ラインに落ち、布陣全体がスライドする。ざっくり言えば攻撃時には4-4-2、守備時には5-2-3の可変システムだ。ミラー状態になる守備時にはブルーノ・メンデスを頂点に右シャドーが坂元、左シャドーが清武弘嗣という3人から連動したプレスをスタートし、5枚でスペースを消す最終ラインは大分の特長であるサイド攻撃を完全に封じる態勢を取った。
実はC大阪は前節の広島戦で、後半にシステム変更して相手とミラーゲームにすることで前半の劣勢をひっくり返していた。猛攻を相手にはね返され得点こそ奪えずに敗れたが、相応の手応えを得たようだったので、今節も広島と同じ3-4-2-1の大分に対してマッチアップさせてくる可能性は予想できていた。
ただ、片山の役割と坂元のポジションを見極めるのが厄介だった。それに東京V時代を含め、ロティーナ監督がフォーメーションレベルで相手に合わせて守備を固めたことは記憶にない。前節まで4戦白星なしで連敗中ということもあり、そういう戦法を仕掛けてきたものと思われる。こちらにしてみれば奇襲のようなものだった。
見事な崩しから清武が先制弾
早々の失点が、試合をさらに難しくした。10分、藤田直之からのパスを左に流れていたブルーノ・メンデスが収め、奥埜博亮がつないで坂元が落とし、清武がシュート。弾道はカバーに入った三竿に当たり、軌道が変わってアンラッキーにゴールに吸い込まれた。
リードを奪ったC大阪は、片山が最終ラインに落ちる時間帯が多くなる。大分はそれを攻略しようとボールを動かすが、どれだけ誘ってみて5-2-3のブロックはほとんど動かない。野村と町田がいろいろなところにいろいろなタイミングで顔を出そうとするが、相手の素早いプレッシングと整理されたポジショニングに妨げられ、ブロックの外側で持たされる形になった。三竿のFKや松本怜のクロスに合わせた知念のヘディングはすべてキム・ジンヒョンにキャッチされる。知念の個人技でのシュートも守護神に阻まれた。
ハーフタイムを境に片野坂監督は刀根を田中達也に交代。三竿をCBに下げ田中をWBに入れていつもどおりの戦い方に戻すと、田中と松本が高い位置を取ることにより、相手を押し込むことに成功する。
だが、左右のサイドで起点は作れるものの、そこから先をやらせてくれないC大阪。松本に縦へのスピードアップを許さず、田中のカットインをケアしてフィニッシュの精度を落とす。ただ、単調ながらクロスが増えたため、片野坂監督は63分、町田を髙澤優也に、島川俊郎を小林裕紀に代えて、さらなる追撃態勢を取った。68分には岩田のシュートがクリアされたこぼれ球を髙澤が狙ったが枠の上。71分には田中のクロスに知念が頭で合わせたがキム・ジンヒョンにキャッチされた。
こじ開けようとするあの手この手も結実せず
大分に押し込まれる時間帯が続くC大阪は73分、坂元を瀬古歩夢に交代。瀬古を真ん中に入れて松田陸がアウトサイドにスライドし、あらためてより強固な5バックを形成する。片山は2列目に入り、サイドの守備をサポートしながらカウンターを狙う態勢となった。
堅くなる一方のC大阪に対し、それでも77分、大分はこの試合最大にして唯一のビッグチャンスを迎える。小林裕からの大きな展開を松本が落とし、それをダイレクトに岩田がクロス。ピンポイントで頭をひと振りした髙澤のヘディングシュートは、決まったかに思われたがギリギリで、キム・ジンヒョンの右手一本、長いリーチに阻まれた。
78分には足をつらせた知念を伊佐耕平に交代。さらに松本を高畑奎汰にチェンジして、左サイドでケアされていた田中を右に回し、高畑の左足でのクロスに期待を懸けた。だが、これが上手く機能せず、指揮官はまもなく田中と高畑の左右を入れ替える。入れ替えても上手くいかずもどかしい時間が続く中、80分にはロティーナ監督が清武に代えて豊川雄太、86分にはブルーノ・メンデスに代えて柿谷曜一朗を送り込み、豊川と柿谷にボールを収めさせる形でラインを押し上げ、マイボールの時間を増やした。
最後まで1点は遠く、またもロティーナ監督の前に無得点。「われわれのサッカーをよく見ているのだろうし、短い期間でよく準備されてきたのだろう」と、してやられた感満載の片野坂監督は悔しさを隠せない様子だったが、敗戦を引きずっている暇はない。また中2日で、今度はアウェイでの名古屋戦が待っている。
