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試合レポート

狙いどおりに決定機量産も仕留めきれず、パトリック弾一発に沈む

 

立ち上がりから狙いがハマって立て続けに好機を築く。その後も多くの時間帯を主導権を握って進めたが、複数の決定機を逃すと、セットプレーでの失点一発に沈められ敗れた。

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狙いがハマって試合の入りから上々の出来

「内容は十分に勝ちに値するゲームだった」と、片野坂知宏監督は試合後に悔しい表情を隠せなかった。立ち上がりから準備してきた狙いがハマり、いい入りをしてほとんどの時間帯で試合を優勢に運んだだけに、敗れた無念さはひとしおだった。
 
アグレッシブなハイプレスからリズムを作ろうとするG大阪に対し、大分は細やかに連係した立ち位置を取りながらボールをつないで前進させた。いつものようにプレスが上手くハマらないG大阪が戸惑っている間に、いくつかの好機を築く。1分にいきなりCKをゲット。4分には三平和司がボールを奪って伊佐耕平から田中達也にスルーパス。さらに岩田智輝がクロス。6分には伊佐が拾ったボールを託された三平がカットインしてシュートするが、相手に当たって枠の上。11分にも伊佐がクロス。14分には左サイドを連係で突破した。
 
好調な出だしだったが、いずれも精度を欠いて得点には結びつかないうちに、G大阪も徐々にペースを掴む。18分には浮き球のパスをアデミウソンに収められたが鈴木義宜が体を張って対応。24分にはリズミカルにつながれて最後はアデミウソンにネットを揺らされたが、その弾道が倉田秋の手に当たっておりハンド判定により命拾い。
 
その後は互いに攻め合うが、三竿雄斗や田中や岩田のクロスは味方に合わなかったり相手にひっかかったりクリアされたり。39分にはアデミウソンに反転シュートを許すが、ムン・キョンゴンがキャッチした。前半の終盤には大分がサイド攻撃で優位に立つ。だが、松本怜のクロスは東口順昭に掴まれた。
 
前半アディショナルタイムには岩田の縦パスを三平がフリックし、羽田健人がつないで伊佐がフリーの田中に展開。だが、相手の帰陣も早く、田中のシュートは菅沼駿哉に当たって逸れた。

星雄次は仲良しの小野瀬康介とマッチアップ

パトリック登場で攻め合いが激化

0-0で試合を折り返すと、ハイプレスが機能しないG大阪の宮本恒靖監督は、渡邉千真をパトリックにチェンジ。高さとパワーへと戦術を切り替えた。パトリックをターゲットにボールを集め、相方アデミウソンとのコンビネーションを軸に周囲が絡む攻撃は、狙いどおり大分を押し込む。
 
だが、それを鈴木を中心とした守備でしのぎながら、機を見てG大阪の背後を突くチャンスも増えた。55分には岩田のスルーパスに田中が抜け出す。東口との1対1もかわし先制点を奪ったかに思われたが、左に流したタッチが大きくなりシュートが一瞬遅れたところへ、高尾瑠が猛然とスライディング。元チームメイトから、がら空きになっていたゴールを守った。
 
田中は59分にも決定機を迎える。伊佐が収めたボールを三平に預け、三平はまたもフリーになっていた田中へとパス。完全に崩していたが、シュートは1対1の東口がファインセーブ。昨季半年間ともにプレーした田中の癖を読み尽くしているのか、4分前のこともあり心理的な駆け引きで上回ったか。東口は60分にも左サイドを突破した田中のクロスを横っ跳びでキャッチし、古巣戦に臨む田中に花を持たせない。
 
小野瀬康介のクロスにパトリックが合わせた場面もあったが、概ね大分の時間帯が続く。だが、立て続けのCKのチャンスもことごとく相手に跳ね返され結実しない。65分には三竿の左CKに羽田が合わせたが、惜しくも枠の右に逸れた。

 

マーク2人が跳ね飛ばされる反則級セットプレー

流れを変えるべく宮本監督は65分、アデミウソンを宇佐美貴史に、山本悠樹を矢島慎也に2枚替えして強度を高める。早速67分にはパトリックの落としを倉田が縦に送り矢島が折り返して倉田が飛び込むが、交錯しながらムン・キョンゴンが懸命に防いだ。
 
G大阪に流れが傾くのを引き戻そうと、70分、片野坂監督は星雄次を刀根亮輔に交代。刀根が左CBに入って三竿が一列上がり、矢島や小野瀬が絡むサイドの強度を高めた。
 
だが、72分、失点。宇佐美の右CKに跳んだパトリックは、体を寄せていた羽田と刀根の2人を吹っ飛ばしながら頭でねじ込んで先制点を奪った。
 
ビハインドになった大分だが、これまでの狙いはハマっている。好機も多く作れており、チームは当初の意志を貫きながら、粘り強い戦いを続けた。だが、78分、またもビッグチャンスを逃す。右サイドを突破した松本のクロスを伊佐がニアでスルーし、相手に当たって跳ね上がったボールをファーに詰めていた田中がヘディング。だが、ここでも立ちはだかったのは高尾と東口だった。この日のチーム得点王は徹底的に持っていなかった。

 

4枚替えからの追撃も最後まで実らず

81分、片野坂監督は怒涛の4枚替え。伊佐、三平、田中の1トップ2シャドーを知念慶、野村直輝、髙澤優也に。ボランチの羽田を島川俊郎に交代して、ゴール前を固めるG大阪に跳ね返されながら攻め続ける。G大阪は90分に足をつらせた高尾を松田陸に代えた。アディショナルタイムは5分。松本のクロスに知念が合わせたが惜しくも枠の右。G大阪は倉田を塚元大に代えて時間を使う。クロスがクリアされたボールを拾った岩田のアーリークロスを野村がカブった背後で島川の右足ボレーが炸裂。だが、無情にもサイドネットだった。
 
度重なる決定機逸の果てにセットプレー一発で沈む展開は、サッカーの試合ではしばしばあることだが、内容がよかっただけに悔しさは拭えない。11本ものセットプレーのチャンスもすべて仕留めきれなかったことは大きな課題だ。ただ、逆に、最初の狙いを遂行できて、それが完全にハマっていたことは、今後にも応用できる好材料となりそうでもある。
 
ひさしぶりの14時キックオフのゲームで、アウェイサポーター約300人も迎えての一戦。さわやかな秋晴れの午後、少しだけ日常が戻ってきているような感触もあった。
 
ACL日程との兼ね合いで第24節・FC東京戦をすでに消化しているチームは、第25節・浦和戦まで2週間のブランクを得る。ここで気持ちを切り替え、コンディションを回復し、またフレッシュな状態で連戦に臨みたい。