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試合レポート

コンディション、クオリティー、共通理解。“後半勝負”の強度で上回られた

 

連戦中の3-4-2-1同士のミラーゲームは、予想していた以上に塩っぱい展開に。粘り強く戦っていたが、一瞬の隙で相手に上回られ、均衡が崩れた。ともに後半勝負に懸けていた中で、差がついた要因は何だったか。

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ミラーでにらみ合い、予想以上に膠着した前半

こちらはホーム連戦と言えど中2日。相手は中3日だがアウェイ連戦。3-4-2-1同士のミラーゲームが、いつも以上の“塩試合”になることは予想していた。
 
それにしてもガチガチに膠着した前半となった。広島は前節から先発メンバーを6人入れ替え、ベンチにドウグラス・ヴィエイラ、柏好文、浅野雄也、川辺駿らが控える構成。1トップの先発は疲れを知らぬチェイシング自慢の永井龍で、立ち上がりから大分のビルドアップを阻みながら、後半に勝負を懸けるプランが透けて見えた。
 
大分は1トップに古巣戦の渡大生。やはり守備で追い、攻撃でも動きを出せるスタイルに期待された。ミラーゲームでガチンコとなるWBには、右に高山薫、左に松本怜。最終ラインには前節と同じ顔ぶれが並んだ。
 
この両軍が、ガッチリと対峙。セカンドボールをより多く拾ったのも球際の圧が強かったのも広島で、じわりと主導権は広島が握っていたが、大分は集中して相手に自由を与えない。一方で、大分の攻撃も広島にきっちりと潰される。松本と茶島のサイドでは両者のにらみ合いが続き、高山と東のサイドは時折攻め合うがフィニッシュに至る前に潰されて、具体的な形が見えないまま時間は流れた。13分に永井のプレッシャーに遭ったムン・キョンゴンが一度はボールを失うが、なんとか足を出して事なきを得たのが、事件らしい事件だったくらいだ。
 
両チームを通じて最初のシュートが37分というだけで、その膠着の度合は伝わるだろう。井林章が前線へと送ったボールを永井が受けて折り返したところを、東が頭で合わせた。だが、大分守備陣が寄せて弾道はクロスバー。前半のシュートはそれ1本のみで、大分はシュートを打てないまま折り返した。

 

互いに後半勝負でカードを切ったものの…

両軍とも交代なくスタートした後半、大分は前半よりも動きのある立ち上がりを見せたが、それも精度を欠いて像を結ばない。59分には接触で足を痛めた渡を知念慶に交代する。
 
ようやく大分にシュートが生まれたのは62分。なんとか状況を打開しようと工夫を凝らしていた三竿雄斗がミドルシュートを放ったが、枠の左に逸れた。
 
互いに我慢しながら、そろそろ勝負どころというタイミングの63分、先に動いたのは城福浩監督。ボランチの一枚をハイネルから川辺へ、1トップを永井からドウグラス・ヴィエイラへと交代して一気に攻撃の色を強めた。片野坂知宏監督は飲水タイムの69分に、野村直輝を髙澤優也へ、高山を田中達也へとチェンジ。松本が右へ移り、田中は左WBに入った。
 
均衡が崩れたのはその直後。70分、茶島雄介がゴール前に送ったアバウトな浮き球をドウグラス・ヴィエイラに収められ、最後は森島司に沈められた。飲水タイム明け、ちょっとふわっと入ったような時間帯。アバウトにバウンドしたボールだっただけに、鈴木義宜のドウグラス・ヴィエイラへの対応が曖昧になり、岩田智輝も森島に寄せきれずシュートを許してしまった。
 
先制されれば広島の堅守がさらに堅固になることはわかっていた。だからこそ辛抱強く守っていたのだが、スコアが動いたことで試合にも動きが生まれる。72分、広島は茶島と森島を柏と浅野に交代しようとした。このとき、広島と審判団の間にディスコミュニケーションがあったのか、第4審判の掲げる電光掲示板に表示された背番号は存在しない「14」。東が交代するのか森島なのかと少し混乱した中で、72分に茶島から柏へ、1分遅れて森島から浅野への交代が認められた。

 

またもドウグラス・ヴィエイラにやられ2失点目

77分、前田凌佑が川辺と接触して足首を痛めた。しばらくピッチの外で治療していたがプレー続行は出来ず、80分、島川俊郎と交代。同時に町田也真人も星雄次に代わった。髙澤が右シャドーへ移り、星は左シャドーに入る。同じタイミングで広島も、柴崎晃誠を野上結貴に交代した。野上はそのままボランチへ。
 
82分、田中がアグレッシブなカットインからシュートを放つが、林卓人に掻き出された。それでも現状、田中の個での突破が最も可能性を感じさせた。星も髙澤もフレッシュに動いてはいるのだが、チームとしてどういう形で攻めるのかが見えてこない。
 
疲労と焦燥感が高まる86分、試合が決まるような2失点目。柏のアーリークロスにドウグラス・ヴィエイラが走り込み、自ら持ち込んで2点目を奪った。トラップがハンド気味にも見えたが、笛は鳴らず。
 
アディショナルタイムにも田中が突破を図るが、今度は持ちすぎて相手に潰される。最後は広島にCKを与えるなどして時間を使われ、大分の“勝負どころ”は不発なまま終わった。

 

後半投入のタレントを上手く生かしたのは広島

大分に不運に転んだ要素も、いくつかあった。72分に広島が2枚替えしようとした交代が時間差で1枚ずつになったことで、80分の柴崎から野上への交代は本来なら「交代回数は3回まで」というレギュレーション違反ということになる。ただ、これが広島側のミスではなくレフェリー側のミスであれば、広島に非はない。2失点目の場面、ドウグラス・ヴィエイラのハンド気味のトラップで笛が吹かれなかったことも、大分の立場としては少々後味の悪い判定ではあった。
 
ただ、そういった諸々はあれど、後半投入のタレントを上手く生かしたのは広島のほう。怪我人がいないため戦力の起用法が安定しており、共通理解が整っていることが大きく影響した印象だ。
 
大分は明らかに疲労しているメンバーも多く、選手たち自身も不甲斐なさを噛みしめるような表情。試合後に指揮官が「本来は違うメンバーを入れようと考えていたのだが、疲労が見えて休ませなくてはならない状況になった中でこのメンバーになった」と明かしたことから読み解くに、また新たなコンディション不良の選手や怪我人が出たものと思われる。
 
戦力が徐々に整い3連勝したチームに、またも暗雲立ち込めるのか。だが、次節で9月の7連戦は終了する。相手は調子を上げている強豪・鹿島。アウェイで厳しい戦いを強いられることになるが、全員でこれを乗り切り、しっかり立て直していきたい。