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試合レポート

後半は相手の修正に苦しむも、前半の理想的な先制点で今季初の3連勝

 

前半は理想的な試合運びで先制したが、後半は一転、相手の潔い修正に遭い苦しい展開に。それを全員でしのぎ切って勝利。課題はまだ残るが3連勝でシーズン折り返しを迎えた。

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理想的な前半、田中の3戦連続弾で先制

横浜FCのクセの強い立ち位置に、少しだけ戸惑った立ち上がりになった。メンバー発表のあと、横浜FCのピッチ内アップを見ていた片野坂知宏監督も、相手がどういう戦い方をしてくるか、あらためて見極める必要があったようだ。ただ、蓋を開けてみればいつもどおりの横浜FC。互いにアグレッシブな試合の入りとなった。
 
試合開始2分に素早いパスワークから齋藤功佑にファーストシュートを許したが、枠の右。5分にはこちらも攻め返し、松本怜のクロスから三平和司がシュートしたが、カバーリングに入った瀬古樹に掻き出された。
 
その後は伊佐耕平を頂点に連動したプレスをかける大分が横浜FCに攻撃の形を作らせず、完全に大分ペースとなる。11分にはクロスのこぼれ球を前田凌佑が狙うが六反勇治が正面でキャッチ。12分にも岩田智輝が伊佐にクロスを送ったが相手に寄せられ打たせてもらえなかった。19分には三竿雄斗のフィードを伊佐が落とし、三平がシュート。強烈にポストを叩き、跳ね返りを松本も狙ったが枠の上に逸れた。
 
CKのチャンスも得点に結びつかず、37分には相手のFKから伊野波雅彦に頭で合わせられ、枠は外れたものの、少し嫌なムードが漂いはじめる。かと思った矢先の38分に、先制点が生まれた。町田也真人と三平が縦に送ったボールを伊佐が落とし、再び町田が絡んでスペースに出す。そこへ走り込んできたのが2戦連続得点中の田中達也。自身の今季6点目を奪い、連続得点記録を3へと伸ばした。

 

相手の修正に後半は形成逆転

ネットを揺らしたのは田中のそのシュートだけだったが、前半のボールの動かし方はチームが理想とするもので、横浜FCはそれを掴みきれず苦心していた。そんな41分、大分に追加点のチャンス。岩田のスルーパスから松本が送ったクロスに合わせた田中のダイレクトボレーが、エリア内で瀬古のハンドを誘いPKを獲得。これを田中自ら蹴ることになった。
 
だが、横浜FCの経験豊富な守護神・六反勇治は、大分の選手たちのやりとりにしっかり耳を澄ませていた。田中がもともと定められていたキッカーではないこと、つまりはあまりPK慣れした選手ではなさそうなことをピッチ上の会話から読み取り、「しっかり我慢してやれれば止められるチャンスはあるかなと思っていた」と、試合後に明かした。そしてそのとおりに相手守護神は駆け引きで上回り、田中のPKの軌道を読んで横っ跳びで大分の2点目を阻止する。その後も六反の落ち着いた対応の前に大分は追加点を奪えず、1-0でハーフタイムを迎えた。
 
相手のシュート2本に対してこちらは6本を放ちながらPKを止められて前半を終えた流れの中で、相手がどう修正してくるかが気になった。そして横浜FCの下平隆宏監督は、後半頭に3枚替え。実に潔い戦術変更へと踏み切った。前線に瀬沼優司を入れて皆川祐介との長身2トップ。ボランチにはベテランの佐藤謙介を入れ、最終ラインは袴田裕太郎を左SBにスライドしてCBに小林友希。相手と駆け引きしながら瀬沼をターゲットにフィードを送り続けた。また、それまで攻撃の起点となっていた大分のWBを釣り出すようにSBは攻め上がらず、SHが絞ってセカンドボールを拾い、中を固める大分の守備をこじ開けにかかる。

 

防戦一方となるも耐えて勝点3を掴んだ

前半のようにプレスをかけに行けば、相手にスペースを与えてやられてしまう。必然的に5バックで押し込まれる、非常に難しい展開となった。
 
再び流れを引き戻すために67分、片野坂監督も3枚替えを敢行。知念慶を頂点に野村直輝と渡大生をその下に並べ、1トップ2シャドーを全員入れ替えることで、こちらも細やかな崩しの得意なメンバーからパワーあふれる攻撃陣へとシフトする。だが、横浜FCの勢いに押されてラインは上げきれず、潰されて前線でボールを収めることも出来ない。68分には野村のFKのチャンスに知念が頭で合わせたが、わずかに枠の右に逸れた。
 
横浜FCは70分に齋藤功を松尾佑介に、78分に皆川を斉藤光毅にチェンジして攻撃の勢いを保つ。相手のCKが続く中、大分は全員でそれを跳ね返し続けた。ムン・キョンゴンの落ち着いたセービングも光る。相手が中盤でボールを持つ気配を見せると、島川俊郎が果敢に襲いかかって奪い攻撃へと切り替えたが、すぐに相手に奪い返されてまた攻められる繰り返し。苦しい時間しかない後半になった。87分、片野坂監督は前田に代えて羽田健人、松本に代えて高山薫を入れ、守備の強度を高める。渡も泥臭い守備で時間を稼いだ。最後は6105人の観客の拍手に後押しされて踏ん張った。
 
結局、後半、横浜FCでシュートを放ったのは瀬沼だけだった。瀬沼だけだったが、瀬沼だけで5本という徹底ぶりだった。あまりに長いアディショナルタイム5分も防戦一方という様相になりつつ、耐えて無失点に終えたのは守備陣の集中力を褒めるしかなかった。
 
課題は残ったが、コンディション面でアドバンテージのある相手に勝利できたことは大きい。J1での3連勝は2009年以来の快挙だ。雰囲気が上がってきたところで、チームはシーズン折り返しを迎える。