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試合レポート

2試合連続3得点で今季2度目の連勝。強豪相手に収穫多く自信を深めた一戦

 

ハードなアウェイ連戦で、前節に続き3得点。出場した全員の特長が組織に還元され、11日前の前回対戦とは見違えるような内容でFC東京から白星を挙げた。

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得点には至らずも狙いの形が見えた前半

快勝に沸いた仙台戦から中2日でのアウェイ連戦。片野坂知宏監督は先発メンバーを7人入れ替えてFC東京戦に臨んだ。戦力の疲労やコンディションを考慮したとともに、11日前に戦ったばかりのFC東京に対する戦術的狙いでチョイスしたようだ。
 
前半、チームは落ち着いてポゼッションしつつ、距離感よくボールを動かす。細やかにポジションを取りながらFC東京の守備をハメさせず、得意のサイド攻撃を繰り出した。
 
右に高山薫、左に松本怜を置いた両WBの起用について指揮官は、FC東京のサイドアタックに対する守備的な狙いによるチョイスだったと試合後に明かしたが、最終ラインの左右やシャドーに配置したメンバーとの組み合わせにより、攻撃でもそれぞれのサイドから特長を生かし、多くの好機を築くことになる。
 
立ち上がりには左サイドで香川勇気や小塚和季が松本を中村拓海の裏に走らせる縦のスルーパスを多く見せた。そして相手のアンカー脇でボールを受けた小塚が逆サイドのスペースへと展開する場面もいくつか。中を固めるFC東京の守備を逆手に取るように、知念慶や渡大生が相手守備陣をゴール前に引きつけ、逆サイドの小川諒也を絞らせることが狙いだったか。大きく空いたスペースへの小塚の展開に、スピード自慢の高山が飛び込む形から、いくつかのチャンスを作った。42分が最大の決定機。小塚のパスに高山が走り込んで合わせたが、惜しくもゴールは奪えなかった。
 
サイドのみならず島川俊郎から知念への縦パスもあり、攻撃のバリエーションは増えていた。前田凌佑と島川の2ボランチも出色の出来で、前田はボールキープで相手を引きつけて剥がし、島川はシンプルな散らしでリズムを作り出した。

 

松本の今季初ゴールで先制。そして野村が戦線復帰

守備でも集中してFC東京の攻撃をしのいだ。25分、レアンドロの縦パスを受けた永井謙佑の折り返しをディエゴ・オリヴェイラにシュートされるが枠の上。35分の三田啓貴のシュートはムン・キョンゴンが落ち着いて正面で押さえた。セカンドボール対応やカバーリングにおいても集中を切らさず、ロストして相手のカウンターに遭えば体を張って対応した。
 
連動した粘り強い守備で相手の攻撃を防ぐ中から、53分の先制点が生まれた。自陣深くのボール回しで、右サイドに移動していたアルトゥール・シルバが中村拓海からのパスを受けた際にトラップが大きくなる。そばにいた松本がそれを見逃さずに寄せるとボールはスペースへと転がり、それを追って迷いなく右足を振り抜いた。松本の今季初得点にチームメイトたちの喜びも爆発する。
 
だが、さすがのFC東京。61分にはスコアを振り出しに戻す。品田愛斗の縦パスをアルトゥール・シルバがつなぎ、永井が落とすとレアンドロがシュート。ムンも足を出したのだが止めることは出来なかった。
 
直後に長谷川健太監督が動く。同点弾を演出したばかりのアルトゥール・シルバと永井を内田宅哉とアダイウトンに交代。攻撃の圧をストレートに増してきた印象だ。それに対して片野坂監督は67分に3枚替え。小塚、高山、渡をベンチに下げ、三竿雄斗、田中達也、そしてようやく負傷から復帰した野村直輝を投入する。三竿が左CBに入って香川が一列上がり、松本は右WBに移って田中は右シャドーへ入った。70分にはFC東京が三田を原大智に交代。アダイウトンを頂点に右に原、左にレアンドロを並べ、トップ下にディエゴ・オリヴェイラ。品田と内田がダブルボランチという立ち位置で、さらに前線にパワーをかけてきた。早速アダイウトンがシュートを放ち、ムンがキャッチする。77分には松本のノールックスルーパスから小出悠太がクロス。香川の折り返しを野村が落としての島川のシュートは林彰洋に阻まれ、さらにそのこぼれ球を知念が左足で狙ったがサイドネットという迫力の攻撃も生まれた。

 

野村と田中の個人技から2点を追加

片野坂監督は77分、疲労した知念を伊佐耕平にチェンジ。直後にはレアンドロにドリブルで単独突破されシュートまで放たれたが、ムンが防ぐ。80分には前田の浮き球のパスに抜け出した田中がクロスを送り香川がシュートするが、枠の右。
 
疲労とも戦いながら攻め合う中で、2点目が生まれたのは82分だった。三竿の縦パスをスペースで受けた野村が上がってきた三竿とパス交換しながら機をうかがって縦に仕掛けクロス。ニアに走り込んだ三竿が潰れ、その後ろで伊佐も相手を引きつけている中に転がったボールを、田中が流し込んで大きな追加点。
 
83分には原が長身を生かしてヘディングシュートもムンがキャッチ。84分にはレアンドロとアダイウトンの縦に速い攻撃がゴールまで迫るが、島川がクリアした。そのCKの流れから一試合に一度は見るアダイウトンのオーバーヘッドシュート。これもムンが落ち着いて掴んだ。
 
そして85分に大分3点目。伊佐のしつこい守備から田中が仕掛け、マイナスのクロスを林がこぼしたところを伊佐が狙って林に阻まれ、さらにそのこぼれ球を伊佐が相手と競る中で、野村が倒れながらシュート。長期離脱からの復帰戦で個人技を披露しまくった上に、1G1Aと結果を出した。これでチームは2試合連続3得点となる。

 

最後まで脅威だったFC東京のパワープレー

2点差になったところで87分、長谷川監督はディエゴ・オリヴェイラを田川亨介に交代して勢いを維持。さらに中村拓海を中村帆高に代え、アダイウトンとレアンドロの2トップに両SHの原と田川を合わせての力技。片野坂監督は松本に代えて羽田健人。小出を一列上げて羽田を右CBに置き、守備を固めて逃げ切る態勢を取った。普通ならこの時間帯に2点のリードを奪えばある程度勝負も決しそうなものだが、それで簡単に逃げ切らせてくれる相手ではない。FC東京がそこから見せたパワープレーは猛々しかった。
 
90分、アダイウトンの超ハイスピードドリブルには小出と羽田も追いつけず、そのままゴール前まで持ち込まれて、戻った守備陣も中を固めてはいたのだが、レアンドロにつながれ田川のシュートをムンが弾いたところを品田に押し込まれて1点差。アディショナルタイムが5分と告げられたときには正直、追いつかれる可能性も頭をよぎるほどのFC東京の勢いだった。鈴木義宜を中心に全員が自陣で守る大分に対し、浴びせかけられる攻撃。95分の田川の個人技からのシュートには万事休すかと思われたが、サイドネットだった。さらに人数をかけて攻め込まれたところを原に打たれるが、これも跳ね返してカバーリングしての迫力の攻防、そして長いホイッスル。
 
今季2度目の連勝を、いずれも3得点で飾った。11日前にはシュート2本に抑えられた強豪相手に、互角以上に渡り合う内容。復帰した野村のいきなりの活躍に、シャドーでようやくコツを掴んだような田中。2人だけでなく他の選手たちも、個々の特長や個人技が組織の中で輝きを見せた一戦だった。