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試合レポート

攻守のアグレッシブさ、戦術の狙い、選手起用と配置が試合展開にハマり3得点快勝

 

片野坂監督体制下ではJ1での3得点は初めて。鬼門のアウェイ仙台戦で挙げた6試合ぶりの白星は、戦術的狙いと選手の配置が試合展開にハマった結果の収穫だった。攻守両面で選手たちの戦う姿勢が前面に押し出され、チームの一体感も再確認できる熱戦となった。

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積極性で主導権を握り会心の三平先制弾

負傷者多発の仙台。前節も最終ラインのメンバーが離脱しており、今節はパラが初出場するなど苦しい状況の下、大分のビルドアップを警戒したかのように激しいプレスを控え、やや構え気味の守備で試合に入った。
 
逆に大分は伊佐耕平を頂点に連動して積極的な守備を仕掛ける。その勢いが反映されるかのように主導権は大分へ。構えている相手に対し、立ち上がりから羽田健人が最終ラインに落ちて4-1-4-1でビルドアップしながら岩田智輝と三竿雄斗が攻撃に関わっていく。クロスから伊佐や三平和司がシュートで終わる場面も作り、立て続けにCKも獲得。負傷からの復帰後初スタメンの前田凌佑もゴールを狙った。ただ、いずれも長身選手の多い仙台に水際で跳ね返されてしまう。
 
町田也真人が復帰して左シャドーに入ったことで、三竿と香川勇気との縦関係での崩しが細やかになった。前田も運動量豊富に絡む。狙いとしていたであろう、大分のサイドの連係に釣り出されて生まれる相手SBの裏のスペースを、流れてくる伊佐を含めかわるがわるに使った。
 
仙台はこれまでよりも柔軟性を増した大分の攻撃に守備をハメきれず。15分を過ぎたあたりから強い雨が降りはじめた中、先制は34分。三竿と香川の連係で寄せてきた相手を剥がし、裏で受けた町田がドリブルで持ち上がると、クロス供給のタイミングをうかがうふりで相手を引きつけた末に、追い越した三竿へとパス。ラインぎりぎりから三竿が送ったクロスをニアに飛び込んだ三平がワンタッチで流し込み、これぞカタノサッカーの真骨頂と言うべき形の得点が生まれた。

 

修正した仙台にこちらも3-5-2で対抗

この先制点がその後の試合の流れを決定づけていく。木山隆之監督は40分、大分の左サイドの崩しに対応できていなかったジャーメインを関口訓充に交代。関口をトップ下に置き、アレクサンドレ・ゲデスを右ウイングに移してより細やかな攻撃へとシフトさせた。これにより仙台は積極性を増すが、大分の守備も仙台に自由を与えない。
 
後半の入りは仙台が攻守に勢いを見せる。立ち上がり、長沢駿の反転シュートはぎりぎりで枠の左。仙台がビルドアップして大分の守備を動かしシュートを狙うかと思えば、50分には高い位置で相手からボールを奪った町田がシュートフェイントから縦パスを送り三平が合わせに行くもわずかに届かずといった、前半とは逆の構図も展開された。58分には左CKからファーで柳貴博がヘディングで叩きつけ、枠は外れたものの主導権は仙台へと傾いていた。
 
その流れを後押しするように59分、仙台は椎橋慧也を兵藤慎剛、石原崇兆を西村拓真に交代して中盤の形を逆三角にし、5バックで構える大分に圧をかけるように前線に人数をかけた。それに対応する形で、64分には片野坂知宏監督が3枚替え。前田、伊佐、三平をベンチに下げて島川俊郎、知念慶、渡大生を送り込み、アンカー島川の右に羽田、左に町田を並べた3ボランチ+知念と渡の2トップへと変更する。
 
だが、66分には関口の落としから長澤にシュートを許し、運良く枠上に逸れたものの、その後も仙台のシュートを体を張ってブロックするシーンが増え、傾いた流れは引き戻せない。77分には渡のあきらめない守備から知念が拾って持ち上がりシュート。弾道は強烈にヤクブ・スウォビィクを襲い、こぼれ球に詰めた田中達也も至近距離から右足を振り抜いたが、倒れ込んでいた守護神は恐れずにがっちりとセーブした。

 

前がかりの相手の背後を再び1トップ2シャドーで突く

激しい雨と攻防の中、78分には町田が足を痛めて担架で運び出される。片野坂監督は代わりに小出悠太を右WBに投入し、田中を右シャドーへと一列上げてシステムを3-4-2-1へと戻した。前がかりになっている仙台をWBを加えた5枚と島川・羽田のダブルボランチで抑えながら、2シャドーで仙台のアンカー脇のスペースを突きに行く。
 
80分、小出がセカンドボールを左足ダイレクトで前線へと送ると、知念がシマオ・マテをなぎ倒して前で収め、スウォビィクとの1対1を落ち着いて軽いループでかわしゴールへと流し込んだ。大きな追加点に、そして前節、個人的に結果を出せなかった知念の悔しさの雪辱に、ベンチからもピッチからも選手たちがなだれ込み、全員で“さんぺー式ゴールセレブレーション”。もはや誰が得点したかわからない様相の一体感を示した。
 
仙台もあきらめずに攻めるが、大分守備陣の集中したクリアと精度不足にもどかしさは増すばかり。この時間帯になってもスプリントの勢い衰えぬ田中が相手の背後を突いて好機を築き、それだけでも2点リードする大分にとっては大きかったのだが、85分にはこの田中が駄目押しの3点目を挙げる。後方からのフィードをシマオ・マテの前で収めた知念がタメて、駆け上がってきた田中へとパス。またも1対1の局面にさらされたスウォビィクの脇を抜いて、確実に枠へと蹴り込んだ。

 

個々の特長が組織に還元されての快勝

仙台は一矢報いようと86分に浜崎拓磨を中原彰吾へと交代するが、大分の守備の強度も最後まで落ちない。アディショナルタイムに入ると片野坂監督は羽田を小手川宏基へと代え、攻守のバランスと賢さに長けたクローザーに締めを託した。田中のクロスに渡が詰めて獲得した右CKを、小手川がキッカーを務め知念に預けてコーナーでキープ。ここでも知念の体の強さが生きて時間を使い切り、タイムアップ。片野坂体制J1初の3得点とクリーンシートで快勝し、6試合ぶりに白星を挙げた。
 
これまで期待を背負い、自身のよさは献身的に生かしながら結果に結びついていなかった知念や、シャドーで起用されながらその狙いを十分に表現できていなかった田中、強度と勢いを有機的にチームに還元しきれていなかった渡が、試合展開の中でようやくそれぞれの最適解へとたどり着いたような、溜飲が下がった一戦でもあった。
 
ただ、中2日で敵地連戦となるFC東京戦は、また違うゲーム。この感触を忘れずに、気持ちを切り替えてタフな戦いに臨みたい。