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試合レポート

緻密な狙いや試合運びも結実しなければ消極的な印象に。攻撃に課題残す

 

強烈な攻撃陣が並ぶ相手のストロングを消しながら攻めなくてはならない試合。そのバランスは難しく、攻撃の狙いも潰されて、結果的に消極的な印象に終始してしまった。サッカーは本当に難しく、切ない。

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相手のパワーを出させないことも大事だったが

外国籍選手をはじめ強力な攻撃陣がずらりと並ぶFC東京とのマッチアップにおいては、こちらが得点することはもちろん目指さなくてはならないが、極力、相手のパワーを出させないようにすることも重要になる。特にFC東京は奪ってからのカウンターを得意としており、一度攻め上がれば決定力のあるFWが仕留めにくる。
 
そのリスクを念頭に置いて、チームは試合に入った。守備のバランスを崩さずに攻めようという約束は、もしかしたら局面での選択を消極的なものにしてしまったかもしれない。ただ、押し込んだ状態からカウンターを受ければ一気にピンチになる。実際に後半にはそういう場面が何度かあった。幸い、相手の精度不足で失点にはならなかったが、つねにカウンターの脅威にさらされながらの攻撃には、足枷をつけているようなもどかしさを拭えなかった。
 
失点しないように細心の注意を払いながら先制点を取りたかったのだが、29分、セットプレーから失点。三田啓貴の右CKのからクリアボールが安部柊斗の前にこぼれ、ダイレクトで左足を振り抜かれると、弾道は岩田智輝をかすってコースを変えながらネットを揺らした。
 
リードを奪ってからのFC東京は攻撃の手を緩め、前半終了間際には大分が押し込む時間帯も作れたが、奪いどころを定めた効率的な守備で大分の攻め手を封じつつ、得意のカウンターを狙う。チームはビハインドになっても全力で追撃に行けないジレンマにさらされることになる。

 

後半は師弟による細やかな采配合戦

後半の頭から、片野坂知宏監督は伊佐耕平と渡大生を知念慶と三平和司にチェンジ。ボールの動かし方も前半とは変えた。49分には早速、三竿雄斗からのフィードを知念が落とし、町田也真人がつないで三平が決定機を迎える。だが、シュートは林彰洋の正面に飛んでしまった。
 
大分が勢いを出しそうになると、FC東京が動く。永井をアダイウトン、田川亨介を内田宅哉へと代えると、56分にはアダイウトンの突破から内田がシュートし、そのこぼれ球をアダイウトンがバイシクルシュートと、派手な見せ場を作った。
 
大分は60分、島川俊郎を前田凌佑に交代。前田は第6節の名古屋戦で右肘の関節を脱臼して以来の復帰戦だ。守備の強度も多t持ちながら前への関わりを増やした。66分には三平と町田のパス交換から松本怜が決定機を迎えたが、シュートは枠を外れた。
 
67分、FC東京は三田をベンチに下げ、アルトゥール・シルバ。そこに対峙させるように大分は1分後、町田に代えて田中達也を送り込んだ。
 
FC東京の網にかかるように、大分の攻撃は狙いどころを潰され、スイッチを入れさせてもらえない。81分には三竿からの長いグラウンダーの縦パスに田中が抜け出し、相手の対応をかいくぐって知念へと送るが、GK林に押さえられてしまう。
 
FC東京は84分、レアンドロと中村拓海に代えて原大智と中村帆高を投入。連戦も見越すように、緻密に布陣の強度を保ちながら終盤の態勢を整えた。

 

最後の追撃も圧が上がりきれず

アディショナルタイムは5分。大分はこの試合で初めてボランチで先発した羽田健人を佐藤和弘に交代し、攻撃色を増す。ゴール前で跳ね返されながら刻々と終了が迫る中、三竿が祈るようにゴール前の知念に送った長いクロスも相手に寄せられて合わせられず、香川勇気のFKのチャンスにはムン・キョンゴンも上がってパワープレーに出たが、シュートを打つことさえ出来なかった。
 
全力で攻めることが出来ない、なんとももどかしい展開。決定機のいずれかが決まっていれば、評価は「1失点に抑えながらよく攻めた」ということになったのだろう。松本は「チームとしてやるべきことを意識しすぎて少し慎重になり過ぎているところがあるのかもしれない。残り3分の1になったらもっと大胆にやってもいい」と課題を挙げた。
 
片野坂監督も「このような相手に対して中に突っ込むとかシュートを打てばいいとかいったサッカーをすると、逆に0-1では止まらず、失点を重ねて大味になる可能性もあった」と選手たちを評価しながら「決して『打ってはいけない』とか『中を使ってはいけない』とかいったことは言っていない。中を使えるなら使ってもいいし、シュートも打てるなら打っていいというか、シュートはチャンスなので打てるときがあれば打つべき。戦うというところでFC東京さんのほうが上だった」と振り返った。その判断の匙加減も擦り合わせていかなくてはならないし、攻撃の工夫もまだまだ磨く余地がある。