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試合レポート

スコアレスドローに終わるも互いのスタイルをぶつけ合い白熱した展開に

 

オルンガの連続得点記録で注目された一戦。互いのスタイルをぶつけ合った試合はともにチャンスとピンチの場面を数多く迎え、エンターテイメント性の高い白熱した展開となった。

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ビルドアップの立ち位置修正が功を奏する

7試合連続得点中のオルンガが、記録を8試合に伸ばして22年前に樹立されたJリーグ記録に並ぶか否か。そんなトピックで注目を集めた一戦は、両軍がそれぞれのスタイルをぶつけ合う、白熱した展開となった。
 
気になるスターティングメンバーは前節の札幌戦から1枚を変えたのみ。渡大生が右シャドーで先発した。また、ベンチに控えるセカンドGKとして、吉田舜が初メンバー入りを果たす。
 
立ち上がりからオルンガにボールを集めながら仲間隼斗や江坂任も積極的にゴールを狙う柏。試合開始当初の大分は柏のハイプレスに遭いながらビルドアップのクオリティーを落としていたが、まもなくボランチのポジショニングを変更すると落ち着きを取り戻し、負けじと好機を築きはじめる。ただ、片野坂知宏監督は柏の得意とするカウンターを警戒し、隙あらばパスをひっかけようと狙う相手に対してボール保持時のリスクマネジメントを徹底するよう、選手たちに言い含めていた。
 
6分にはオルンガが胸トラップから反転シュートもミートせず。8分には三丸拡のアーリークロスに江坂が頭で合わせるが、ムン・キョンゴンがキャッチした。16分には攻め上がった三竿雄斗が高橋峻希に倒されて獲得したFKを長谷川雄志が蹴る。ニアへの低く速い弾道を三竿が頭で逸らそうとしたが、枠をとらえきれなかった。20分には高い位置でボールを奪ったオルンガがゴール前へと持ち込み、大分の守備に阻まれる。
 
20分、裏に抜け出すオルンガに対応しようとした松本怜がショルダータックルで吹っ飛ばされた場面を見ても、そのフィジカルがどれほど強靭かがうかがい知れる。そんなオルンガに、チームは組織的守備で対応。出来るだけオルンガにボールが入らないようにと江坂やマテウス・サヴィオからのホットラインを封じた。入ったときには主に鈴木義宜がマッチアップしたが、三竿や岩田智輝、島川俊郎も協力して仕事をさせない態勢を取った。

 

長谷川の展開から両サイドで揺さぶりをかけた

中盤で長谷川が自由にボールを持てる場面が多く、少し運んでから展開するなど、全体を押し上げながらチームは幅を使って攻撃した。前半から相手を押し込み分厚い攻撃を仕掛けることもあり、そこから35分のビッグチャンスも訪れた。左右に揺さぶりをかけながら両サイドからクロスを送る流れの中で、岩田のクロスを相手が跳ね返したこぼれ球に伊佐耕平が反応。渾身の左足一閃は、だが、直前にゴール前の競り合いで倒れていた香川勇気の臀部に当たり、プリズムのように反射してクロスバーの内側を叩くとゴールへと吸い込まれた。香川の倒れていた位置がオフサイドポジションだったことからゴールは認められず。
 
36分にも松本のクロスから髙澤がヘディングシュートも中村航輔に阻まれる。39分にはマテウス・サヴィオのマイナスのグラウンダーパスを大谷秀和がまたぎ仲間が狙ったがムンがファインセーブでしのいだ。
 
髙澤を三平和司にチェンジしてスタートした後半早々、オルンガが江坂からのパスを受けて反転シュートするがこれもムンが受け止める。47分には松本のシュートが枠の右、54分にも渡大生のクロスに松本が走り込んだが枠外。攻める大分の背後を突いて江坂が放ったループシュートも、枠を捉えきれなかった。大分は香川のクロスからの立て続けの好機も、中を固める相手に潰されてしまう。
 
アウェイ連戦で前節の神戸から直接大分入りした柏は、ドームの蒸し暑さとボールを動かす大分への対応で疲労の色を濃くし、次第に足が動かなくなる。前半から何度となく倒れ込んでいたヒシャルジソンが限界を迎えた63分、ネルシーニョ監督は2枚替えに踏み切った。ヒシャルジソンに代えて三原雅俊。マテウス・サヴィオは戸嶋祥郎と交代し、戸嶋は右SHに入って江坂がトップ下に移動した。

 

得点は奪えずも最後まで切らさなかった集中

片野坂監督も1分後に伊佐と渡を知念慶と藤本一輝にチェンジするが、柏は選手交代で勢いを盛り返す。67分にはオルンガへのクロスを鈴木が跳ね返したこぼれ球を戸嶋にダイレクトボレーされるが、すかさずコースに入った島川が体を張ってブロック。自身が「黄金世代」と呼ばれ育った柏に挑んだ島川はこの日、素晴らしい集中力で攻守に躍動し、特に予測の早さで組織的守備に貢献すると、試合後に片野坂監督から「ゾーンに入っていた」と高評価を受けた。
 
70分には藤本のパスを受けた知念がはたいたところへ走り込んできた岩田との呼吸がずれたが、知念は執着心全開で流れたボールを追い、右サイドからクロス。ゴール前で跳んだ三平の頭にはわずかに合わずクリアされ、そんな激しい攻防にスタジアムのボルテージは上がる一方。
 
後半の飲水タイム後、柏はさらにシンプルにオルンガを使い前線に枚数をかけて攻めてきた。サイドの選手が中へと出入りして大分の守備を翻弄しようとするが、大分も枚数をかけてスペースを消し中を固める。77分には高橋峻希を北爪健吾、仲間を細谷真大に交代した柏が狙うのは終盤の1点。79分には裏に抜け出したオルンガに鈴木と岩田が対応した。81分にも右サイドを攻略した柏がオルンガのシュートに至るがムンが抑える。82分には戸嶋のシュートをスライディングした岩田が阻み、そのこぼれ球をオルンガに打たれたが弾道は上空へと逸れた。
 
柏の攻勢に押されはじめたのを見て、片野坂監督は89分、疲労した三竿と長谷川を刀根亮輔と羽田健人に交代。守備を強化しながら4分のアディショナルタイムも攻め続けた。そして最後にビッグチャンス。知念のポストプレーから香川の速いグラウンダークロスは絶妙にゴール前を横切り、スライディングした藤本の伸ばした足はわずかに触れたが押し込めず。ファーに詰めた三平も惜しくも届かなかった。決まっていれば劇的決勝弾になるはずだった。
 
柏のほうも、北爪のロングスローの流れから江坂のヘディングシュートは枠の左。最後まで手に汗握る攻防の結末は、スコアレスドローに終わった。
 
オルンガの連続得点記録は7でストップ。7チームとの対戦で振るい続けてきた猛威を、プロ6シーズン目にしてこの試合で200試合出場を達成した鈴木の率いる大分の組織的守備が封じた。内容的には勝たなくてはならなかった試合かもしれない。だが、スピードに乗ったカウンターやオルンガの一発に沈められていた可能性もある。
 
「この引き分けをポジティブなものにするために、次の試合が大事になる」と、戦い終えた鈴木は言った。リーグ3連戦、ルヴァンカップを合わせると7連戦を終え、チームは次節、29日に敵地で浦和に挑む。