連敗は5でストップ。攻守の狙いがハマり試合を支配して公式戦9試合ぶり勝利
苦しんだ連敗は5でストップした。リーグ戦では7試合ぶり、カップ戦を合わせると9試合ぶりの勝利。リーグ戦でのクリーンシートは第2節以来で、スタンドが歓喜に沸く中、選手たちは安堵の色を滲ませた。
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戦術の噛み合わせが有利に働く
互いに特徴の明確な組織的スタイルを標榜する同士のマッチアップ。昨季王者の横浜FMも、この過密日程の中、負傷者が出るなどして本来の連係やチーム戦術の完成度を保てずに苦戦中だ。それでも今節は守備の要であるチアゴ・マルチンスが怪我から復帰し、新戦力の前田大然が左WGで先発。加入したばかりのジュニオール・サントスもベンチ入りした。
大分は伊佐耕平が7試合ぶりに先発。今季はシャドーで起用され続けていた田中達也が右WBに入り、3試合ぶりに復帰した岩田智輝と縦関係を組んだ。
この試合で横浜FMは、いつもはワイドに広く張っている両WGの立ち位置をぐっと中に絞ってきた。オナイウ阿道と前田、エリキの3枚で大分のラインの背後を突く狙いだった。これが横浜FMにとっては結果的に仇となる。横浜FMの両SBが絞ったスペースを突く狙いを持っていた大分を、サイドでさらなるフリー状態にさせた。長谷川雄志が中盤の底から真骨頂の展開を発揮しただけでなく、岩田や香川の大きなサイドチェンジも、横浜FMの布陣を揺さぶり続けた。
それでも個々の戦力が高いポテンシャルを誇る横浜FM。両軍は立ち上がりから積極的にゴールを狙った。4分、伊佐のシュートはチアゴ・マルチンスにブロックされる。6分にはエリキがクロスを送ったが、オナイウ阿道にはわずかに合わない。飲水タイムを機に中盤の立ち位置を修正した横浜FMが次第に主導権を握りはじめる中、27分には大分のパスミスを拾ったエリキが持ち上がってシュートを放ったが枠の左。29分にはティーラトンのクロスに小池龍太、31分にも浮き球の縦パスに前田がワンタッチで合わせたが、いずれも枠をとらえきれなかった。39分には多勢が絡む波状攻撃で大分を押し込むが、三竿雄斗らの体を張った守備がそれを阻む。
そのピンチをしのぐと今度は大分の時間帯。42分、香川勇気のクロスから三平和司の叩きつけたヘディングシュートは朴一圭がファインセーブ。三平は43分にも島川俊郎の縦パスを受けて反転シュートするが、これも相手守護神にキャッチされた。アディショナルタイムには髙澤優也のクロスに伊佐が飛び込んだが、ヘディングシュートは枠の右。両軍ともビッグチャンスを仕留めきれずスコアレスで試合を折り返した。
髙澤の個人技から田中の今季3点目
交代なくスタートした後半も互いに攻め合う展開。51分には香川のクロスに伊佐が頭で合わせるが枠の上。54分には大分のCKから横浜FMがカウンターを仕掛けるが、エリキのスルーパスにはGKムン・キョンゴンが対応した。58分には伊佐が相手の裏に抜け出してシュートしたが、枠の右に逸れた。
63分、横浜FMベンチが先に動く。エリキ、前田、扇原貴宏をベンチに下げ、大津祐樹、渡辺皓大、松田詠太郎を投入。大津が左SHに、松田が右SHに入った。渡辺はマルコス・ジュニオールと並び喜田拓也がアンカーとなって中盤を逆三角形へと変える。
そんな68分、待ちかねていた先制点が生まれた。後方でボールを動かす中から三竿が髙澤へと縦パスを送る。ハイラインを敷く横浜FMのフィールドプレーヤー全員が大分陣に入っていたため、髙澤は悠々とその背後へ抜け出した。チアゴ・マルチンスがすぐに追いついて行く手を阻もうとするが、髙澤は鮮やかな切り返しで相手を置き去りに。その前に一度、チアゴに潰された場面があり、その後には伊佐が同じ形で切り返した場面もあった。髙澤は自らのシュートの選択肢も匂わせながら、並走して詰めてきた田中へとパス。田中は勢いをもって、しかし丁寧にゴールネットを揺らした。今季は狙いの下にシャドーで起用される中でなかなか結果が出ず「本当に苦しかった」と試合後に明かした田中。「シャドーでもWBでも求められる役割はランニング」と自らのストロングポイントを自覚する責任感の強いスピードスターにとって、なんとしても決めたいゴールだったはずだ。
最後まで攻守に集中して無失点勝利
70分、大分は三平を藤本一輝へと交代。74分には横浜FMがオナイウ阿道とマルコス・ジュニオールを下げて水沼宏太とジュニオール・サントスを投入し、同時に大分も髙澤に代えて小塚和季を送り込んだ。横浜FMが大分のサイド攻撃に対応するために中のスペースを空け、そこを藤本や小塚が上手く使う。76分には藤本が独特なリズムのドリブルからシュートを放つがポスト。大分はさらに78分、伊佐と田中と島川を井上健太と渡大生と羽田健人に交代する。羽田はそのままボランチに入った。
追撃する横浜FMはジュニオール・サントスを軸に激しく攻める。水沼や渡辺もチャンスをうかがうが、鈴木義宜を中心とした大分守備陣は崩れない。体を張り、カバーし合い、時には全員がゴール前を固めた。なんとかマイボールの時間を増やしたいと、藤本や小塚が前線でボールを収め攻め返す。相手の猛追に押し込まれて重心が低くならないよう、サイドがスライドして守備の枚数も合わせた。
アディショナルタイムは5分。裏に抜け出した水沼の当たり損ないのシュートはムン・キョンゴンが長い腕を伸ばしてストップし、試合は1-0のまま終了した。プロ初勝利をつかんだムンは涙を流していた。
前半の決定機を決めきれなかったという課題も確かにあるが、いまはとにかく勝つことが大事だった。ひとつ風穴が開いたところで、中3日で迎える次節はアウェイ札幌戦。今節の結果を浮上のきっかけにしたい。