TORITENトリテン

試合レポート

重い空気を吹き飛ばす好ゲーム。この力を今後につなげたい

 

過密日程で敗戦を重ね、閉塞感が漂っていた今日この頃。メンバーを入れ替えて臨んだルヴァンカップで、チームはひさしぶりに躍動する姿を見せてくれた。

試合情報はこちら

 

総入れ替えしたメンバーが躍動

こちらも相手も、グループステージ突破のためには勝たなくてはならない一戦。残念ながら引き分けて両者痛み分けの敗退となったが、チームはひさしぶりに攻守に躍動感のある好ゲームを演じ、リーグ戦4連敗中の閉塞感に風穴を開けた。
 
連戦中のカップ戦ということで、フレッシュな戦力を起用したいと試合前から話していたとおり、片野坂知宏監督はメンバーを総入れ替えしてこの試合に臨んだ。負傷から復帰したメンバーが多く、どれだけの時間、強度が保つかが気になるところではあったが、J2やJ3時代から一緒にプレーしてきた選手が多く並び、立ち上がりから攻守に良好な連係を見せた。
 
1トップの伊佐耕平から連動して守り、攻撃では最後尾からビルドアップしながら細やかにつないで攻める。G大阪はアグレッシブなプレッシングでボールを奪うと宇佐美貴史を軸とするスペクタクルな攻撃を繰り出してきた。G大阪が20分、昌子源のフィードを起点に倉田秋がシュートを放って枠の右に逸れれば、大分も25分、小手川宏基のシュートで獲得した左CKの流れから最後は松本怜がゴールを狙うがこれも枠の上。
 
29分には佐藤和弘の横パスを井手口陽介に奪われ、パトリックに沈められて先制点を奪われる。だが、35分には攻め返して同点に。ボールを奪った三平和司が伊佐に一旦預けて攻め上がり、GKとディフェンスラインの間に丁寧なグラウンダークロスを送ると、走り込んできた小塚和季が押し込んだ。
 
39分には倉田が突破からクロスを上げ、41分には遠藤保仁の浮き球に走り込んできた松田陸が折り返すなどするG大阪の分厚い攻撃に、守備陣は粘り強く対応。逆に43分には星雄次の突破から伊佐が落として三平がシュートするが、石川慧にキャッチされ、試合は1-1で折り返す。

 

後半は押し込まれるも粘り強く組織で守る

後半頭からG大阪は、宇佐美に代わり小野瀬康介が2トップの一角に入った。立ち上がりは大分が組織的に攻めるが、すぐにG大阪に押し込まれる展開となる。59分、左サイドでセカンドボールを拾った井手口がシュートを放つが、ムン・キョンゴンが横っ飛びで掻き出した。63分にもボールをつながれて小野瀬にシュートを打たれたが、枠の上に逸れて命拾い。
 
64分には両方のベンチが動いた。片野坂監督は小手川を長谷川雄志へと代える。宮本恒靖監督は遠藤保仁、黒川圭介、昌子源を渡邉千真、矢島慎也、三浦弦太へと3枚替え。矢島はそのままアンカーに入り、最前線にはパトリックと渡邊が並んで、小野瀬が右WB、福田湧矢が左WBへとそれぞれ移った。69分には片野坂監督が、小野瀬とマッチアップする左WBを星から高山薫へ。同時に伊佐を髙澤優也と交代させた。さらに77分、三平と小塚の2シャドーを井上健太と小林成豪にチェンジ。井上を1トップに置き、右シャドーに髙澤、左に小林成を並べた。G大阪は78分、倉田を下げて山本悠樹を投入。
 
疲労した戦力を入れ替えて互いに強度を保ちながら、G大阪が攻め、大分は押し込まれる。75分には多勢が絡んだ攻撃から倉田にシュートを許すが、佐藤がゴール前で体を投げ出して見事なシュートブロックで防いだ。80分には福田の弓なりのクロスをパトリックに頭で合わせられるが、これもムン・キョンゴンが長い右腕を伸ばしてビッグセーブ。井上や小林成、髙澤がカウンターで攻め返す場面も見られたが、G大阪の守備陣に対応され、アディショナルタイムまでG大阪の攻撃を跳ね返す展開となった。
 
ムン・キョンゴンの好セーブにも頼りながら、刀根亮輔に統率された守備陣は崩れることなく、高畑奎汰がパトリックに体当たりする果敢さも見せ、試合は1-1で終了。ルヴァンカップは敗退となったが、ひさびさの躍動感あふれるゲームに、スタンドからは拍手が降り注いだ。

 

これからの連戦にも希望をもたらした一戦

対G大阪戦術の下に、今節はここ最近のリーグ戦とは異なる戦い方が見られた。片野坂監督は「短い準備期間の中で、選手たちがよくその狙いを理解して遂行してくれた」と選手たちを称える。前線の3人は狙いの中でそれぞれの特長を出して、絶妙なコンビネーションを披露。ひさびさの出場となった小手川も、対G大阪の複雑なタスクを賢くこなしながら、ボランチの位置から攻撃に絡む姿勢を見せていた。
 
昨季までよく見られた戦い方だが、この戦い方が昨季後半は相手に対策されて封じられるようになったため、今季はチームとして新しい戦い方にもチャレンジしている。いまはそれがなかなか上手く行かず、内容も結果も伴っていない。4連敗で自信を失いかけていたところに、昨季までの戦い方を知り尽くしたメンバーが、大分の組織的スタイルの原点を思い出させてくれるような試合を見せてくれた。
 
「1失点に抑えて得点も取れ、なんとか負けずに終わったことが、いまの自分たちにとって少しでも自信になり、今日出場しなかった選手たちも、今日出た選手たちがこれだけピッチで表現できているということで、また競争が生まれてチーム力に反映されていけばいい」
 
片野坂監督は試合後、「今日の試合はこれからの連戦を戦う中で大事な試合だった」と総括した。次の試合は中2日でリーグのアウェイ川崎F戦。試合に向けてどういう狙いが定められ、どの戦力がチョイスされるか。公式戦での連敗はストップした。相手は好調に首位を走っているが、思いきりよく挑みたい。