セットプレーで4失点。対策された守備に阻まれシステム変更から2点を返すも3連敗
雷混じりの激しい雨にも苛まれ、敵地での3連戦3戦目は苦悩の展開となった。対策を施された守備を上回れず、終始相手に攻めさせた中、セットプレーから4失点。4枚替えでシステム変更して2点を返したものの、課題の大きさがクローズアップされた。
試合情報はこちら
コロナ禍と豪雨の中で迎えた難しい一戦
雨に備えてアウェイへの出発予定を早めるなど、前日から波乱含みになった第7節。22日に対戦した名古屋の宮原和也が新型コロナウイルスに感染していたとのリリースもあり、さらに試合当日には渡邉柊斗とチームスタッフからも陽性反応。名古屋、大分両チームともに濃厚接触者はいない見込みと発表されたものの、広島対名古屋の試合は開催中止を余儀なくされ、Jリーグ界隈がざわつく一幕もあった。
試合日は朝から豪雨で、静岡県内では土砂災害なども起き、あちこちで交通障害が発生。クラブ関係者やDAZN解説の岩政大樹氏もスタジアム入りが遅れるなど、さまざまなところに影響が及んだ。ただ、試合中も雨は断続的に強く降り続いたが、ピッチの水はけが非常によく、水たまりに悩まされることはなかった。
負傷者が多発する中、選手のコンディションを考慮して、片野坂知宏監督は前節から先発6人を入れ替えて臨んだ。5月に右足根管症候群、右変形性足関節症で手術を受け全治8週と発表されていた高山薫が先発で復帰。今季新加入の佐藤和弘も初メンバー入りで先発に名を連ねた。一方の清水は、今節は左SBにファン・ソッコを起用。前線の並びも前節とは変化している。
今季初勝利を目指す清水は、立ち上がりから守備も攻撃もアグレッシブ。昨季J1第12節、篠田善之監督体制の初陣となった対戦では、大分のスタイルの要所を効率よく的確に潰す対策を施されて手を焼いたが、今節も清水の“大分封じ”は的確にして厄介で、プレッシャーのかけ方にも工夫が見られたほか、前線の組み立てに力を発揮する小塚和季にはヘナト・アウグストとヴァウド、エウシーニョらが多勢で寄せて仕事をさせない。大分は知念のポストプレーに対してもサポートが遅れ、攻撃の形が全くと言っていいほど作れなかった。
逆に守備では相手に対して構えてしまい、特に外国籍選手たちに気持ちよくプレーさせてしまう。最終的なプレー精度不足や高木駿の好セーブに救われて流れから失点することはなかったが、ボールを奪ってもこちらの精度にも難があり、すぐにまた相手ボールになってしまうため、ほぼ攻められっぱなしという様相になった。
完全に相手ペースの中、雷雨による中断
31分には左サイドを細やかなパス交換で崩され、最後はヘナト・アウグストからのパスを受けた後藤優介がボックス内からシュート。高木が触った弾道はポストに弾かれ、古巣への恩返し弾は未遂に終わった。だが、ほっとしたのも束の間。41分、清水が左CKから先制点を奪う。西澤健太のキックをファン・ソッコが頭で流し込んだ。
小塚を渡大生に交代して後半に入った大分は、立ち上がりに知念のスルーパスから田中達也がクロスを上げるが精度不足。流れは再び清水のものとなり、立て続けに清水にCKのチャンス。3回目の57分、西澤の右CKをファーサイドでヘナト・アウグストが折り返し、カルリーニョス・ジュニオが豪快な左足ボレーで追加点を挙げる。
なんとか巻き返しを図りたい大分だが、ようやく攻めはじめた時間帯に雨脚が強まり、スタンドからはピッチが見えないレベルに。雷も見る見る近づいてきて、特大の稲妻が空のひび割れのように何度も走った。試合は65分で中断となり、チームはロッカールームへ、観客たちはコンコースへと避難する。
試合が再開されたのは20時25分。10分ほど前からピッチで軽くウォーミングアップし直した選手たちは、60分の中断を挟んで、大分のドロップボールからプレーを再開した。
システム変更して反撃も及ぶことなく
中断していた間に、片野坂監督は大幅なプラン変更を決断。試合再開とともに、高山薫、香川勇気、島川俊郎、田中達也をベンチに下げ、小出悠太、三竿雄斗、長谷川雄志、髙澤優也を投入する怒涛の4枚替え。長谷川をアンカーに佐藤と渡のインサイドハーフ、左は三竿で右が小出のウイングバック。髙澤と知念の2トップを最前線に並べる3-5-2へとシステム変更して追撃に出た。
守備の積極性を増し、小出が縦パスを試みるなどいい場面が生まれはじめて、流れを引き寄せるかに思われた70分、だが清水に駄目押しの3点目が、またもCKから生まれる。西澤のキックに立田悠悟が頭で合わせると、飛び出した高木の脇を抜けてボールはゴールへと吸い込まれた。さらに84分には西澤の速いFKにゴール前のヴァウドが頭で合わせて4点目と、勢いづいた清水は大分を突き放すばかり。
せっかくの流れを掴みきれないもどかしさの中で、それでもチームは意地を見せる。87分、小出が中央へと攻め込んで出したスルーパスをゴール前で受けた知念がGKと1対1へと持ち込む。落ち着き払って丁寧に、しかし渾身でゴールに沈めると、待たれていた移籍後初得点を記録。「チームとして狙った形ではなかったけど、自分らしいゴールだったと思います」と、これまで周囲を生かそうと献身的に走り続けてきた知念は試合後に振り返った。
知念の得点に勢いづいたように、88分には立て続けに2点目。渡のフリックを裏に抜けた知念が拾い、自らもシュートを匂わせながらフィニッシュは逆サイドへと走り込んでいた髙澤へと託す。髙澤はスライディングでそれを押し込み、すぐさま自らボールを抱くとセンターサークルへと走った。
だが、遅すぎた反撃はここまで。スコアは4-2のままタイムアップし、最下位の清水が大量4得点で今季初勝利を手にした。
前々節のG大阪戦、前節の名古屋戦に続き、守備の積極性や攻撃の精度が課題となっているチーム。負傷者の続出やコンディション不良などにより連戦の中でメンバーを固定できず、これまでに積み上げてきたものが表現できずにいる。「自分たちの攻撃や守備のやり方をもう一度しっかり統一して、全員のよさを出していくことが必要」と小出は改善を誓った。