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試合レポート

「攻撃のクオリティーの差が出た」完敗。今季のレギュレーションがじわじわと響く

 

粘り強く対応していたものの、2点を先行されてさらに難しい展開に。今季のチームが成熟度を上げる間もなく連戦として進んでいく日程の中で、地力という課題が浮き彫りになってきた。

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3連戦の2戦目は先発4人を入れ替えて臨む

3連戦の2戦目はホーム。だが、日中から高温多湿だったその夜、息苦しいドームのピッチで、運動量や球際で上回ってペースを握ったのはアウェイチームの方だった。
 
2度目の連戦で疲労も溜まってきた頃。大分は前節から先発4人を入れ替え。岩田智輝、三平和司、小林裕紀がメンバーから外れ、田中達也もベンチスタート。小出悠太と前田凌佑が今季初先発、そして小塚和季が今季初出場を果たした。一方の名古屋は中盤から後ろは開幕以来、不動のメンバー。試合ごとに狙いとコンディションで変化をつけていると思われる前線には、今節は前田直輝が入り相馬勇紀はベンチ。前節、契約上出場できなかった金崎夢生も先発に戻り、2人が入れ替わったのみ。
 
名古屋のスタート時の立ち位置は前田直と金崎が最前線に並び、阿部が左、マテウスが右の4-4-2に見えたが、まもなく配置転換。阿部がトップ下で前田直が右に出たようにも見え、流動的なのかとも思われたが、マテウスがはっきりと左に位置取った。
 
16分に競り合いで阿部、22分に空中戦からの着地で前田凌が負傷し、それぞれガブリエル・シャビエルと島川俊郎へと、互いに早々にカードを切ることに。激しい戦いの中、吉田豊とマテウスの左サイドは強烈で、サイドの攻防でも押される時間帯が多くなったが、立ち上がりは小出も一人で相手をかわしミスマッチを突いて攻め上がる場面を何度か作った。ただ、その先の連係や精度が足りず、攻撃の形が作れない。名古屋の攻撃は高木駿の好セーブなどで粘り強くしのいでいたが、31分、それまで何本かクロスを上げては阻まれていた吉田が、マテウスとのパス交換から金崎にボールが収まった瞬間を逃さず中へ。金崎の落としから右足シュートを放つと、地を這うボールはゴール右隅に突き刺さった。
 
「なかなかサイド攻撃が上手くいかない中で、なんとかえぐってクロスなのか中に潜るかを考えながらプレーしていた」という吉田。大分もミーティングで相手がサイドから入ってきた際の対応は落とし込んでいたのだが、相手の力量が高く、一瞬のところで防ぐことが出来なかった。

 

ストロングポイントを出せないまま3失点

0-1で折り返した後半頭から、片野坂知宏監督は松本怜を田中にチェンジ。直線的な突破での打開を図ったが、不運なことにこれが2失点目につながってしまう。立ち上がりのFKのチャンスからランゲラックにパンチングされたこぼれ球の処理に失敗し、カウンターを受けることに。抜け出した前田直に田中が追いすがるスピード対決は、田中がペナルティーエリア右でファウル判定を受け、名古屋のFKに。
 
これを蹴ったマテウスのニアへの速い弾道は、知念慶に当たったようにも見えながらゴールへと吸い込まれ、公式記録では丸山祐市のゴールとなる。48分、ミスと不運の重なった痛恨の失点だった。
 
なんとか追いつきたい大分だが、名古屋守備陣は知念をガッチリとマークして起点を作らせてくれない。サイドから攻めようとしても形にならず、指揮官は65分、渡大生と小塚をベンチに下げ、藤本一輝と井上健太をピッチに送り出した。田中が右シャドーに入り、井上は右WBへ。66分には名古屋ベンチ。稲垣祥が足を痛め、ジョアン・シミッチと交代。シミッチがアンカー、その前に米本拓司とガブリエル・シャビエルが並ぶ逆三角形の中盤へと変化する。
 
大分の光明がなかなか見えずにいた73分、名古屋が試合を決める3点目。高い位置で後ろからのフィードを受けた成瀬竣平が上がってきた前田直に託すと、前田直は中央の金崎へ。金崎が落としたところへ走り込んだ米本拓司が、豪快な左足シュートを勢いよく叩き込んだ。
 
その後、米本も足を痛め80分に交代。ベンチにボランチの交代要員はおらず、フィッカデンティ監督は相馬をインサイドハーフに配置。米本と稲垣を失ったことで、マテウスを低い位置に落として5バックで守備を固める。大分は81分に知念を髙澤優也に交代して追撃したが、最後まで得点の匂いはせず試合は0-3のまま終了した。

 

選手層が影響する今季のレギュレーション

「自分たちの技術不足や連係不足。相手に対策されている感じはあるが、そういう中でももっと個人としてもチームとしても出来る部分があったと思う」(知念)、「サイド攻撃がなかなか上手くいかなかった。そこのクオリティーの差が出た」(香川)と、記者会見に応じた2選手は疲れた表情で話した。
 
夏場の連戦による疲労が蓄積し、総力戦となる今季は、各チームの選手層がダイレクトに戦績に反映しそうな感触もある。現に徐々に試合結果や順位にその現象が見え始めているようだ。名古屋の交代選手はガブリエル・シャビエルにシミッチに相馬と、J1でも力量の高いレギュラークラスだった。
 
一方で、組織で戦う大分は例年、実戦で経験値を積みながらチームの成熟度を増してきたが、今季のように成熟させる間もなくどんどん連戦で試合が進んでいくシーズンは、チームや個々の成長がリーグ戦のスピードに取り残されてしまうと、厳しいことになる。また、いまは負傷や疲労により選手たちのコンディションにバラつきがあり、試合ごとのベストメンバーをなかなか組めていない状態だ。大分に限らず他チームでも負傷者が多発しており、選手たちに負荷のかかる今季のレギュレーションが、今後それぞれのチームにどういうふうに作用していくかが心配なところでもある。
 
連戦でのメンバーの入れ替えによる連係不足や、疲労によるプレー精度の低下を、どう克服していくか。選手個々は自身のケアとコンディショニングで、チームスタッフはマネジメントで、まだ先の長いシーズンを乗り切っていかなくてはならない。

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