激しく攻め合うも互いに精度を欠き1-1のドロー。後半は相手に主導権を奪われる
激しい雨に見舞われながらも、4263人の観客が昭和電工ドーム大分に戻ってきた。3連戦の3戦目で疲労が体や思考を重くする中、最後には死闘の様相を呈した試合は、ロースコアで勝点1を分け合う結果となった。
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開始20秒での失点にも落ち着きを失わず
トルステン・フィンク監督が事前に宣言していたとおり、九州アウェイ2連戦の神戸は前節からメンバーを大幅に入れ替えてきた。アンドレス・イニエスタもセルジ・サンペールもトーマス・フェルマーレンもダンクレーも帯同せず、外国籍選手で唯一メンバー入りしたドウグラスもベンチスタート。西大伍もメンバーから外れ、代わりにJ1初出場の菊池流帆や藤谷壮、郷家友太、安井拓也が先発に名を連ねた。生え抜きの若手もベンチ入り。そして1トップは藤本憲明だった。
神戸と同じく、大分も前節から6人の先発メンバーを入れ替え。刀根亮輔が今季初出場、古巣戦の前田凌佑も初メンバー入り。コンディション面を考慮してフレッシュな戦力がチョイスされた。
キックオフ後、まさかの20秒でスコアが動く。松本怜のパスがカットされたところを拾った古橋亨梧がスピードに乗ったドリブルで長い距離を持ち上がり、安井に託す。安井のシュートはブロックしたが、そのこぼれ球をダイレクトで古橋が左足シュート。度肝を抜くようなスーパーゴールで神戸に先制点を奪われた。
だが、チームは落ち着きを取り戻し、いつもどおりにボールを動かしてチャンスを築いていく。8分には田中達也のクロスから、10分には松本のアーリークロスからと波状攻撃を繰り出すが、ことごとく相手のブロックに遭い得点ならず。16分にも知念慶のボール奪取から田中がつなぎ松本がクロスを送ったが、わずかに知念の頭とは合わなかった。松本は26分にもきわどいクロスを送って好機を演出。だが、神戸の守備陣は水際で体を張ってゴールを割らせない。
岩田の果敢な攻撃参加が光った前半
ようやくその壁を破ることが出来たのは29分だった。岩田智輝のパスカットが大きく跳ね、三平和司が大崎玲央との空中戦に競り勝つと、知念がダイレクトで前方へ。「さんぺーさんが勝つと信じて走り込んでいた」という岩田が拾うと、飯倉大樹との1対1を冷静にかわして狭いところを通し、ゴール右隅に流し込んだ。
その後も岩田の絡むチャンスが続き、36分には岩田のクロスを田中達也がボレー。これは枠の上。42分には松本のグラウンダークロスからの絶好機を知念がスルーしたが島川俊郎が反応しきれず。アディショナルタイムには三平のスライディングからマイボールにして岩田が左足シュートもわずかに左に逸れた。
神戸のほうもいくつかの決定機を築き、38分にはまたも古橋が持ち込みシュート、枠外。39分にはこぼれ球に素早く反応した藤本にシュートを許すが高木駿が阻む。45分には酒井高徳のドリブルを止めきれずペナルティーエリア脇まで進入されたが、なんとか対応してCKに逃れた。
大分がシュート7本、神戸が6本と互いに攻め合いながら精度を欠いたり相手に体を張られたりして得点を奪えないまま、試合は1-1で折り返す。どちらかというと大分のゲームになっていた。
後半は相手の修正がハマり苦しい展開に
両軍ともにハーフタイムの交代はなかったが、後半、神戸は修正により形勢を逆転する。4-3-3のアンカーだった山口蛍をリベロに落とし、システムも3-4-2-1へと変更。これによりビルドアップがスムーズになると、53分には古橋がシュート。高木が指先で触って難を逃れる。
流れが神戸に傾いたのを見た大分は、56分に三平を渡大生に交代。さらにカードを切る準備をしていた矢先に、サイドチェンジを受けた藤谷のスパイクが香川勇気の額を直撃し、激しく流血するアクシデントが起きた。さすがにプレーは続行できず、予定外の香川を含めた3枚をここで交代することになる。香川、刀根、島川がベンチに下がり井上健太、三竿雄斗、前田がピッチへ。井上は右WBに入り、松本が左へと移った。
67分、交代したばかりの前田の縦パスを渡がつなぎ知念がターンして送ったスルーパスに田中が抜け出す。飯倉との1対1を演出したが、シュートはファインセーブに防がれた。70分には渡の強い守備から強引な攻め上がりも見られたが、一瞬の迷いを逃さず最後は相手に潰される。
大分が盛り返す気配を受け、神戸は75分、怒涛の4枚替え。藤本、田中順也、安井、菊池がベンチに下がり、ドウグラス、小田裕太郎、佐々木大樹、渡部博文がピッチに入った。小田はJ1初出場。79分にはその小田がドウグラスの落としからシュートを放つが枠の上。佐々木の落ち着いた守備や捌きからの組み立ても光り、試合終盤は神戸が圧倒。82分には前田の縦パスを受けた田中達也がカットインからシュートを放ったが、これも飯倉が無難にキャッチした。83分、再びの小田の絶好機は枠の左。
大半を押し込まれる展開に、89分、片野坂知宏監督は知念に代えて1トップに髙澤優也を送り込んだ。前節に続く一発に期待したが、なかなかマイボールに出来ず髙澤にボールを集められない。90分にはドウグラスにシュートを打たれるが、鈴木義宜が必死で足を出してCKへと逃れた。
アディショナルタイムは5分。93分には3本目の小田のシュートが枠外も、大分は神戸のカウンターの脅威にさらされる。95分には小田とのパス交換から佐々木のシュート、これも枠の上へ。不用意なボールロストとフィニッシュの精度不足、相互に課題が露呈しつつの死闘となったが、ついに両ゴールのネットは揺れず、1-1のまま終了した。
タフな3連戦を終え、1週間の準備期間を経て、第5節はアウェイでG大阪戦、そしてそこからの3連戦。負傷者を含め戦力のコンディションが気になるところだが、ひさびさに出場した刀根と前田の“ダブルりょーすけ”に続き、総力を上げて戦いたい。