髙澤、鮮烈なるJ1デビュー。粘り強い戦いが実り85分からの逆転勝利
立ち上がりから劣勢だった試合が、85分からの大逆転劇へと展開した。髙澤のファーストタッチでのJ1初ゴール、そして三平の逆転弾。苦しいながらも相手より走り続けたことで掴んだ勝点3だった。
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前半は苦しい展開。ミスから早々の失点も
3連戦の2戦目、アウェイで対峙したのは今季公式戦3試合をすべて無失点で圧倒的に全勝中の広島だ。従来の堅守に加え、ショートカウンターという武器に磨きをかけて、強いチームに仕上がっている。
ゲームは3-4-2-1同士のミラーでスタートしたが、前線とサイドのメンバーを入れ替えて臨んだ大分とは裏腹に、広島は前節のスターティングメンバーを踏襲。前節がアウェイとはいえ移動距離が短いこと、その神戸に3-0と圧勝したことからの流れだったのかもしれない。5枠の交代でリフレッシュできる目算も立てられそうだ。だが、それが影響したのかどうか。
立ち上がりから広島が優勢なのは見た目にも明らかで、個々の強度の高い相手に上回られる局面が続いた。ボールを奪ってもパスが繋がらず、1トップで先発し献身的にスプリントし続ける伊佐耕平に収まらない。町田也真人が苦しい状況を改善しようとスペースを縫いまくり、渡大生も時に強引な打開を図るが、どうにも組織として形を成すことが出来ずにいた。
10分、自陣でドウグラス・ヴィエイラに寄せられてロストしたところから青山敏弘に縦パスを入れられ、レアンドロ・ペレイラに悠々と持ち込まれて早々に失点。
その後は苦しいながらも持ちこたえ、38分には今日は左WBで先発した田中達也がカットインで仕掛けシュート。GK大迫敬介に防がれたがCKを獲得するなどチャンスも芽生えはじめた。
40分、町田が接触プレーで負傷するアクシデント。担架で運び出され、41分には代わりに香川勇気がピッチに送り出された。香川は左WBに入り、田中が左シャドーへとスライドする。田中は42分にも得意の仕掛けからシュートを放つが、今度は枠の右に逸れた。
次第に流れが傾きはじめる
1-0で折り返すと、ハーフタイムの交代は1トップを伊佐から知念慶。知念のフィジカルをもってしても、広島の屈強な守備陣は起点を作らせてくれない。それでも辛抱強くチャンスをうかがううちに、少しずつサイドに光明が見えてきた。51分、三竿雄斗と香川の連係からCKを獲得すると、三竿のキックをファーで井上健太がボレーシュート。これも大迫のファインセーブに遭い、広島の堅守の安定感はどうにも揺らがないように思えたが、次第に大分の左右からクロスが上がりはじめる。
カウンターで追加点を狙う広島は63分、疲労の見えるシャドーの森島司を東俊希に、左WBの浅野雄也を藤井智也へと交代。だが、運動量で相手を上回る大分は攻め続ける。69分には、相手にブロックされはしたが、知念が左足で強烈なミドルシュートを放った。その2分後には佐々木翔のアーリークロスを受けたハイネルにシュートを打たれるが、守護神・高木駿が触ってボールはクロスバーへと飛び、命拾い。
74分に大分が2枚替え。シャドーの渡を三平和司に替え、井上をベンチに下げて岩田智輝を一列上げると、右CBには小出悠太を投入した。78分には広島ベンチ。足をつらせた野上結貴を井林章に、青山敏弘を柴崎晃誠に代えて布陣の力を維持しようとする。
互いにクロスやカウンターからチャンスを迎え、ピンチを潰しあう終盤の展開。83分には広島がハイネルを茶島雄介に、大分が田中を髙澤優也にチェンジした。髙澤はそのまま左シャドーに入る。
忍耐と走力が実った85分からの逆転劇
その2分後、交代策を実らせたのは大分だった。三竿のアーリークロスが相手DFラインとGKの間に絶妙な弧を描くと、CBの間に走り込んだ髙澤がバックヘッド。少し遅れて処理に出てきた大迫を尻目に、得意の形でゴールへと流し込んだ。
「最初はキーパーは見えてなくて、途中から視界に入ってきたけど感覚で」と髙澤は試合後に振り返ったが、この感覚で昨季J3ランク2位の17得点を挙げ、群馬をJ2昇格へと導いたのかと納得させる一撃だった。
飛び級でのJ1デビュー、そしてファーストタッチでのJ1初ゴールを喜ぶ間もなく髙澤自らボールを拾ってセンターサークルへと走ると、この同点弾を皮切りに試合の潮目は完全に大分へと傾いた。髙澤は87分にも岩田のクロスを右足ボレー。これは大迫が意地を見せてファインセーブする。
アディショナルタイムは4分の表示。あきらめずに放つ三平のシュートは、これも大迫。絶好調の広島相手ならアウェイで勝点1は、客観的には上々の出来だ。だが、チームは勝利を信じているように走り続けた。
カウンターを狙って大迫がピッチに送ったボールをカットして攻め返したのは小林裕紀だ。それを拾った三竿がスペースへと駆け上がる香川に託すと、香川はゴール前を横切るグラウンダーを選択。DFを引き連れた知念がスルーすると、三平が相手の背後からするりと前に出て流し込む。90+4分の劇的逆転弾だった。さんぺー印のガッツポーズを真っ先に繰り出したのは知念。髙澤も交えて3人で喜びを爆発させた。
「自分は合わせただけなので。それまでみんなが走ってくれたおかげですね」と試合後に三平。相手の死角からするりと前に入り込む巧みさには舌を巻くが、本当にそのとおりでもあり、劣勢だった序盤から挽回を信じて修正しながら失点を1に抑え、疲労をあらわにした相手を上回り続けたことが結実しての勝利だ。
「内容的にはやはり、広島さんのクオリティーや選手のレベルの高さにはまだまだ太刀打ちできないのだが、なんとか一体感をもって戦うことが出来て、勝点3をご褒美でいただいたような感じがしている」
片野坂知宏監督はそう総括した。課題はまだまだあるにしても、とにかくこのタフなシーズンに強豪から勝点3を挙げたことは、必ずや今後へとつながるはずだ。