11本のシュートも結実せず、最後に失点して黒星スタート。だが好感触も
帰陣の早い相手を破ることが出来ず決定機を逃し続け、相手の圧に押されて最後にミスから失点。今季最初の公式戦は痛恨の黒星となったが、1トップ2シャドーに並んだ新戦力3枚が輝く場面も多く、手応えを感じた一戦でもあった。
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互いにうかがい合う慎重な立ち上がり
ここ2、3日は2月にしては異例の温暖な気候が続いていたが、試合当日は一転、冷たい雨。気温も予想されたより大きく下回った。
湘南のシステムは3-5-2。ターゲットタイプのFWがいない今季、前線に並んだのはタリクと岩崎悠人。2人が0トップ気味にバイタルエリアで受けてコンビネーションで前を向くような戦い方だった。
開幕戦らしく、互いにうかがい合うような硬い立ち上がり。後方でボールを動かしても湘南はあまり食いついてこず、プレスはかけても早めに高い位置でブロックを構えた。それを崩そうと三竿雄斗が何度も駆け上がったり鈴木義宜が縦パスを通したりするが、それでも相手はなかなか誘いに乗ってこない。
10分、馬渡和彰にシュートを許すが枠の右。知念が細やかに駆け引きするのに合わせて岩田智輝や三竿が前線にボールを送るが、相手にクリアされたりオフサイドラインにかかったりしてなかなか上手くいかない。湘南にも丁寧にビルドアップしたい様子は見えるが、アンカー福田晃斗に入ってから先が、まだ意識として浸透しきれていないように見える。
27分、町田也真人が右サイド高くから意表を突いてシュートするがニアでポストに弾かれた。33分、三竿の突破からのクロスを知念がヘディングシュート、これも枠の外。37分、岩田のミドルシュートも枠を外れる。40分には湘南。中川寛斗の縦パスを福田が落としての岩崎のシュートは、体を張って阻むことが出来た。その1分後には松本怜の鋭いグラウンダークロスに知念がヒールで合わせるが、富居大樹に好セーブされる。長谷川雄志のCKからの知念のヘディングシュートも富居。
自陣で慎重にボールを動かしながら、それぞれのやり方で相手の隙を突いて攻めた前半はスコアレスで終わった。
相手の圧に押された後半、最後にPK献上
後半の湘南は前線からアグレッシブにプレッシャーをかけてきた。ビルドアップを阻まれ、大分の攻撃はサイドへと偏るようになる。逆に湘南は攻撃にも勢いを出しはじめたが、自らの勢いをコントロールしきれないように、決定機にまでは至らない。
両軍ともチャンスはそこそこ作りつつ膠着した空気の中、どちらが先にカードを切るのか。先に動いたのは片野坂知宏監督で、59分に高畑奎汰を田中達也に交代した。すると1分後に浮嶋敏監督が岩崎を石原直樹に代える。
湘南に押される展開となっていた後半だが、60分台には知念を起点に攻撃の形が生まれはじめる。ただ、相手の帰陣が早く、ラストパスやクロスの段階で阻まれてしまう。69分にはCKの流れから左サイドにいた岩田がドリブル突破。そのパスを受けた三竿がシュートするが富居に弾かれ、こぼれ球に反応した知念のシュートも実らず。
70分、湘南はタリクを梅崎司にチェンジ。80分に大分が渡大生を三平和司に代えると、同時に湘南も館幸希を下げ山田直輝を投入した。
湘南は勢いを増し、疲労の見える大分を押し込みにかかる。それを跳ね返すように85分、田中がドリブルで持ち上がり三平に託すが、三平がダイレクトで放ったシュートは枠を逸れた。88分には町田が個人技からシュートするが大岩一貴にブロックされる。90分にはその大岩が石原直へ浮き球のパス。ゴール前で跳ね返したが、湘南は得点を狙ってゴール前にボールを送る場面を増やしていた。
3分のアディショナルタイム突入後、馬渡がゴール前に放り込んだ長いボールを、高木駿がキャッチしようとしてファンブル。こぼれたところを取り返そうとして坂圭祐を倒し、PKを献上してしまう。キッカーは梅崎司。PKは左隅を狙うのが得意。今回も高木の逆を突いて、しっかりとそこに沈めた。
90+3分の痛恨の失点。ワンプレーぶんしか時間は残されていない。片野坂監督は一発勝負の賭けに出た。長谷川を佐藤和弘に代え、システムを3-5-2に変更してカウンターを狙った。人数をかけた怒涛の突破を狙ったが、三平の浮き球からのボレーシュートは富居に防がれ、追いつけないままタイムアップ。
選手同士のイメージのすり合わせはここから
“雨の日あるある”な事故で失点を招いた高木はだいぶヘコんでいたが、「引きずらず切り替えることも大事なので」と気丈に前を向いた。日頃から若手をのびのびプレーさせるよう、鈴木らとともに多くのものを背負ってきただけに、自らのミスによるダメージは大きかったようだが、その責任感をいい方向に転じなくてはならない。
片野坂監督はむしろ、数々の決定機をものに出来なかったことのほうに焦点を当てていた。シュート数は湘南の3本に対しこちらは11本。CKは相手は0本でこちらが7本だが、セットプレーからの得点の匂いは薄かった。
ただ、前線に並んだ新戦力3人は、それぞれに自身の特長を発揮して見せ場を作った。無駄のない動きで高い強度を発揮できる知念、攻守に献身的に走り回り怖さを醸し出す渡、2人のバランスを取りながら自らも隙を突いてゴールを狙っていく町田。町田は小柄な体格もディスアドバンテージにしない守備の上手さも光った。
得点できなかったことについて彼らは試合後、それぞれに課題を口にした。後半は攻撃がサイド偏重になった中で、ボランチやシャドーがどう関わっていくかということも含め、選手同士のイメージをすり合わせていく作業はこれからだ。
22日はリーグ開幕戦。昨季最終節で力量差を見せつけられたC大阪に敵地で挑む。その堅守を破れるよう、試合に向けての競争と準備がスタートする。