またも見せつけられた地力の差。悔しい敗戦だが、これまでの積み上げでJ1残留達成
前回対戦からの成長を感じたいと期して臨んだ明治安田J1第30節HFC東京戦だが、やはり地力の差を思い知らされる内容となった。それでも積み上げてきたものは裏切ることなく、他会場の結果をもって今節、大分のJ1残留が確定した。
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迫力あふれるハイプレスに苦しんだ立ち上がり
ラグビーW杯を終えて、7試合ぶりの昭和電工ドーム大分でのホームゲーム。新たに張り替えられたハイブリッド芝でプレーするのはホームチームにとっても初めてで、最初は不慣れな感触にやや戸惑った面もあったが、スパイクや踏ん張り方を工夫することで、ある程度は対応できたようだ。
それ以上に、立ち上がりから激しく襲ってきたFC東京のハイプレスに苦しめられた。前節の神戸戦は4-2-3-1のトップ下に高萩洋次郎を配置してセルジ・サンペールからはじまるパスワークを封じたFC東京だが、今節はディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑を最前線に並べた4-4-2の布陣で、大分のビルドアップに圧をかけに来た。それをかいくぐってボールをつなぎ、4分には田中達也のクロスから最後はこぼれ球を島川俊郎がシュートしたが、枠の左に逸れる。
5分には先制点を奪われた。高萩の浮き球のパスが前線に送られたところへ高木駿が飛び出して対応しようとしたが、さすがの永井、高木の目測よりも速いスピードで裏へと抜け出すと、ヘディングで高木の寄せをかわし無人のゴールへと流し込んだ。その2分後にもセットプレーから失点。三田啓貴の左CKを渡辺剛に高い打点で合わせられ、あっというまに2点のリードを奪われる。
懸命の追撃も堅牢な牙城に跳ね返される
その後も試合は圧倒的にFC東京ペース。大分のビルドアップをよく研究し、パスコースを封じて追い込むFC東京の前に、片野坂知宏監督は準備してきた狙いを変更してボールの動かし方を変えた。それにより前線にボールを運べる回数は増えたが、外からのクロスは跳ね返され、中を使って前線でボールを収めてもその先に行けない。森重真人と渡辺の2CBの間にポジショニングしていた後藤優介も何度かゴール前でボールを受けたが、逆に二人に挟まれる形でシュートコースもパスコースも封じられ、逃げ回っている間に潰されてしまった。前半終了間際には小塚和季がこぼれ球から2度の決定機を迎えるが、いずれも枠をとらえきれなかった。
後半の頭から、指揮官は島川を長谷川雄志に交代して状況変化を図る。FC東京はその後の決定機は外していたが、2点のリードを奪うと攻め急ぐことなく、リトリートして大分に攻めさせ、自陣でボールを奪ってカウンターを狙う戦法へと切り替えた。
67分にはFC東京が三田に代えて大森晃太郎。大分は73分、後藤に代えてオナイウ阿道を送り込んだ。押し込んでいるのかボールを持たされているのかと言えば後者のイメージだったが、松本怜と田中からクロスを入れる回数も増えている。82分には小塚を伊佐耕平に代えてさらに追撃の強度を増すが、ゴール前に隙なく築かれたFC東京の牙城に跳ね返され続けた。
前がかりに攻める中でカウンターから数度のピンチも迎えたが、高木の対応などでしのぎ、試合は0-2で終了した。
他会場の結果をもってJ1残留が確定
片野坂監督は試合後、選手たちのあきらめずに戦った姿勢を評価した一方で、こう話した。
「ただ、得点を挙げていないのは現実でもある。それがいまのFC東京さんとわれわれとの順位の差、ゲーム内容の差、そういうことなのではないかと、今日、ゲームが終わって感じた」
プレースピードや判断力、足元の精度など、多くの面で相手に上回られていた試合。スーパースターはいなくても、サッカーのベースの部分で強度を誇る個々の戦力が、その働きを組織に還元しているのがFC東京だ。アウェイ8連戦の7戦目という過酷なスケジュールの中で勝点を積み上げ、優勝争いを激化させている実力に、疑うべきものはない。
だが、圧倒された敗戦の後、複雑な勝点計算で確認すると、今節の他会場の結果をもって、大分のJ1残留が確定していた。残り4試合にして、14位の名古屋と15位の鳥栖が直接対決を残しているため、大分は15位以上でフィニッシュすることになる。確認に時間と手間を擁したため、報道陣は先に速報制作に着手。テレビ局はすでに撤収し、記者室に残って作業していたペン記者ばかり勝点の確認のため頭を突き合わせる中、チームのマネージャーからもどういう計算なのかと電話がかかってくるという状況で、関係者それぞれが今季の目標達成を確認することになった。
今節は不甲斐なく敗れたが、これはここまでの積み上げによる立派な成果だ。18位からスタートしたチームがこの時期に一桁順位につけていることには胸を張っていい。残り4試合について「消化試合はない」と片野坂監督は言った。来季もJ1で戦える大分トリニータは、今季も行けるかぎり高みを目指してチームの完成度を高めていく。