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試合レポート

息詰まる駆け引きと、耐える時間帯の集中。最後にゴレアドールの劇的決勝弾

 

ミラーゲームの中で、前半は息詰まるようなポジショニングの駆け引き。後半は押し込まれて耐えながら、最後の最後に発動したカウンター。そのフィニッシュは、成長した生え抜きストライカーの渾身の決勝弾だった。

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絶えずポジショニングしながらつながり続けた前半

 
中断期間、浦和戦に向けてのトレーニングで、最初の週には持ち出して局面を打開するよう意識づけしていた。次の週はプレス回避しながらのビルドアップとゴール前の崩しに重点を置いたシミュレーション。片野坂知宏監督は今節、いつも以上にゲームプランと戦力のチョイスに頭を悩ませたという。
 
今節の浦和は、繊細にコントロールされたプレスのかけ方で大分のビルドアップに対策してきた。ポゼッションスタイルのチームにプレスをかわされることが多かったため、修正を施したようだった。出足は慎重に互いの出方をうかがいながら、息詰まるような駆け引きが繰り広げられた。大分は岩波拓也と槙野智章を小塚和季と小林成豪が上手くつり出しながら田中達也と松本怜が空いたスペースを突こうとする狙いも見えた一方で、浦和はマウリシオが後藤優介をぴったりとマークし、その仕事を阻んだ。
 
前半の大分はピッチに立つ11人全員が集中したポジショニングでつながり続け、相手を引き込んでは一個飛ばしの浮き球のパスも多用しながらボールを動かした。決定機は少なかったが、浦和にもチャンスらしいチャンスを許さなかった。13分、小塚とのワンツーから松本怜がエリア内に進入したが、シュートはポストに弾かれ、詰めていた後藤優介も届かない角度に跳ね返った。31分には次第に動く範囲を広げていた関根貴大にミドルシュートを放たれたが枠の外。
 
失点すれば難しい展開になることは間違いないが、早い時間帯にこちらが先制しても相手の圧が強まって苦しくなる。そういう意味では、ポゼッション率を高めながら0-0で終えた前半は上々の出来だった。
 

押し込まれながら粘り強さと采配とで乗り切った後半

 
だが後半、浦和は圧を強めてくる。56分、岩田智輝と競り合った際に肩を痛めた武藤雄樹に代わって左シャドーに入ったファブリシオがアグレッシブに攻めはじめ、それに連動して槙野が高い位置を鳥はじめた。
 
その対応に追われるうち、次第に選手間の距離が広がり、つながりが弱まって個のポテンシャルがクローズアップされてくると、試合は俄然、浦和ペースへと転じた。槙野とファブリシオに立て続けに脅かされるが、集中した守備で弾き返す。
 
70分、オープンな展開になりはじめたのを見計らった片野坂監督は、小塚に代えて伊佐耕平を投入。伊佐を頂点に、後藤を右シャドーに配置して槙野への対応を図った。75分には浦和が長澤和輝を杉本健勇にチェンジして前線の勢いを保つ。それに押し込まれるのを懸命にしのぐ大分は78分、小林成豪を三平和司に代えて、さらなるラインの押し戻しを目論んだ。81分、三平がビッグチャンスを演出するが、シュートはわずかに枠の左に逸れる。
 
浦和が圧をかけ、疲労した大分が後手に回りファウルで止める場面が増えた。85分、阿部勇樹のFKは壁で跳ね返し、そのこぼれ球を阿部が再びシュート、さらに関根にもシュートされるがいずれもブロックでしのぐ。90分にはファブリシオがカウンターから高木駿と1対1に持ち込む大ピンチ。だが、高木の落ち着いたビッグセーブで事なきを得た。さらにエヴェルトンにもミドルシュートを放たれるが、これも高木が片手で枠の上へと掻き出した。
 
アディショナルタイムは3分。90+1分、浦和が宇賀神友弥を山中亮輔に代えると、1分後に大分も小林裕紀を島川俊郎へと交代。勝点1でも上出来という展開で、試合はこのままスコアレスドローで勝点1を分け合うかに思われた。
 

力の差により逆に崩れた均衡。チームは最後に力を振り絞った

 
だが、最後の最後にドラマは展開する。なまじ優勢でチャンスを量産していたからこそ、浦和の意識は前がかりになっていた。そんな最終盤、この日何度もピンチを救った鈴木義宜がまたもシュートブロック。
 
後藤が倒れこみながらヘディングでつなぎ、こちらも倒れながら伊佐がさわって跳ね返ったボールは相手に当たって三平の元へ。一度は相手にカットされたが三竿雄斗がそれを拾い縦パスを送ると、ボールは三平の腹を直撃したが、上手く収めた三平は左サイドを駆け上がる田中達也へと展開。田中は仕掛ける選択肢も持っていたが、そのとき大外を駆け上がってきたのが三竿だった。ここ2シーズンは負傷に悩まされ、移籍してきた今季もリハビリスタートとなってもどかしい思いをしてきたCBは、田中からボールを託され、ビッグチャンスを迎えた。
 
ゴール前にはついさっき自陣で倒れながらボールをつないだ二人が走り込んでいる。ニアの伊佐が疲労していると判断した三竿はファーへとクロスを送った。ニアの伊佐を警戒していた西川周作の一瞬の対応の遅れを突くように、弾道はファーへと飛び込んできた後藤の元へ。後藤は渾身のヘディングで、大分U-18の大先輩の守るゴールをついにこじ開けた。90+3分の劇的なゴールに、誰よりも先に駆け出したのは片野坂監督。スタッフと選手たちがそれに続き、コーナーフラッグ付近はもみくちゃのチームでごった返した。
 
記念すべき14年ぶり2回目のA浦和戦勝利。勝点3を積んで目標勝点まであと2ポイントに迫った。だが、まだJ1残留を達成したわけではないと片野坂監督は目標の上方修正はしない。
 
それでも、“J2オールスターズ”として今季をスタートしたチームが着実に組織力と個々の力を高めながら成長していることが感じられた一戦だった。浦和の複雑なプレス具合を見極めながら臨機応変にボールを動かしたチームは、間違いなく日々の経験を糧としている。