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試合レポート

風雨にさらされるドームのピッチで、120分のブロック崩し。伊藤の劇的決勝弾で3回戦突破

 

台風の影響で風雨の中での決戦となった天皇杯3回戦・鹿屋体育大戦。守備を固める相手を根気強く攻略し、90分で決着がつくと思いきやまさかの延長戦に。忍耐力を問われる一戦だったが、チームは最後に意地を見せた。

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ブロックを構えた相手を辛抱強く攻略

 
超大型の台風10号の接近により危ぶまれた一戦も、予定どおり開催。ただし、開閉式ドームスタジアムの屋根は風を受けて壊れないように開放され、ピッチは断続的に強くなる風雨にさらされた。上空を風が吹き抜け、ピッチも少しぬかるんで、プレーするには難しい環境だった。
 
明治安田J1第22節H神戸戦から中3日、同第23節H鹿島戦まで中2日の連戦。戦力をターンオーバーして臨み、ベンチメンバー5人のうち3人が大分U-18所属の二種登録選手となった。なんとか早く先制し余裕をもって試合を運びたい陣容だ。
 
鹿屋体育大も3-4-2-1のミラーゲーム。立ち上がりこそハイプレスをかけてきたが、大分のビルドアップに剥がされると見るとすぐに5-4のブロックを構え、カウンター狙いに切り替えた。プレッシャーに来ない相手に対し、右CBの岡野洵が積極的に高い位置を取ってチャンスを作ったが、相手にゴール前で跳ね返される繰り返しになると、被カウンターを警戒して矛を収めた。コンパクトな布陣で大分の攻撃を阻む相手に対し、縦横にボールを出し入れしながらじっくりとチャンスを窺う。サイドから崩し、クロスのチャンスも迎えたが、鹿屋体育大の水際の守備は堅かった。
 
一方、鹿屋体育大はボールを奪ってもすぐに大分に奪い返され、攻撃の形をなかなか作れなかった。何度かエリア内まで進入したものの、最後のところで大分守備陣に潰される。
 

星の先制ヘッドは幻の決勝点に!

 
スコアレスで折り返した後半も、同様の展開が続いた。小手川宏基や三平和司が中盤や、ときには最終ラインまで下がって受けるなどギャップを作りながら相手を動かそうと試みるが、それもなかなか上手くいかない。
 
それでも風雨の中、疲労が溜まると次第にスペースが生まれた。ボールを保持しながら押し込む時間が増えたところで、64分、片野坂知宏監督は庄司朋乃也を高畑奎汰に交代。左CBの高畑がWBのような位置、星雄次がシャドーともボランチともつかぬ位置を取り、小手川が中盤、丸谷拓也が最終ラインに落ちる。フォーメーションは3-4-2-1のままながら、より攻撃的な布陣となった。
 
大分の突然の立ち位置の変化に、鹿屋体育大も少し戸惑いを見せたのか。74分には鹿屋体育大が二枚替えに踏み切る。右WBの綿引康に代えて西村光明が左WBに入り、右にはそれまで左にいた仙波柊人が移った。頂点は根本凌から伊藤龍生にスイッチ。さらに83分にはボランチの久保勇晴をベンチに下げ、坂口祥尉を左WBに入れて西村をシャドーに上げた。
 
互いにチャンスはありながら仕留めきれず、0-0のまま延長戦突入かと覚悟を決めていた90+1分、劇的な先制弾が生まれる。右サイドからの高山薫のクロスに星が頭で合わせてゴール。あとは何とか、残り少ないアディショナルタイムを乗り切るだけとなった。
 
そのほっとした感じから、堪えていた疲労が噴出したのだろうか。90+3分、左CB的な位置にいた刀根亮輔がポープ・ウィリアムへのバックパスを大幅にキックミス。ボールは転々と無人のゴールを目指し、逆サイドにいたポープは足を痛めていたこともあって必死に追いすがったが届かなかった。
 

今度こそ決勝弾、伊藤の右足一閃

 
台風の中、苦労してこじ開け終了間際に先制点を奪った直後、まさかのオウンゴールで延長戦へ。この心折れる状況になっても、チームは動じたりブレたりすることなく戦い続けた。
 
だが、刀根も高山も足をつらせている。出来るだけ90分で決着をつけるつもりでチョイスしたベンチメンバーだったが、選手交代が避けられない状況になった。110分、小手川に代わって西城響也、刀根に代わって工藤大雅がピッチに立つ。西城は左WBに入り高畑が左CBにスライドした。工藤はそのままボランチの位置に入る。112分には西城のスルーパスを三平がつなぎ、伊藤涼がシュートを放つがクロスバーを強襲した。
 
118分、鹿屋体育大は田中大和に代えて五十嵐理人。一方で高山も体力的限界を迎えると、片野坂監督は高山を左CBに移し、高畑を左WBに、西城を右WBに配置した。
 
このままPK戦を迎えるのだろうかともう一度覚悟を決めた120分。相手のクリアボールを拾った伊藤涼が迷いなく右足を振り抜き、目の覚めるような追加点を奪った。今度こそ決勝点かと思いつつ、アディショナルタイム2分を消費しきるまで安心できない。鹿屋体育大も最後まであきらめず、伊藤龍がシュートを放つが、ポープ・ウィリアムががっちりと取り押さえた。
 
体の力が抜けるような長いホイッスル。いずれの逆境にもチームはブレずに落ち着いて立ち向かい続けた。片野坂監督も「たとえ延長戦だろうがPK戦だろうが、勝ち上がるということが大事だった。選手たちが最後まで戦ってくれたことに感謝したい」と安堵の表情。ここから週末のリーグ鹿島戦に向けて、中2日での全力の準備がはじまる。
 

なんだろうこのデジャヴ感…
二種登録の3人。左から工藤大雅、小浜耀人、西城響也

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