鳥栖の大分対策に遭う。最後にもったいない失点も、粘り強く戦って+1
19時30分キックオフながら、日中の灼熱の余韻が残り、ピッチは相当な蒸し暑さ。明治安田J1第21節A鳥栖戦は、球際激しい相手の大分対策にハメられながら、粘り強く戦って勝点1を上積みした。
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鳥栖も独自の大分対策を準備してきた
準備段階から片野坂知宏監督は、鳥栖のどの戦力がどの位置で出てくるかの予想が非常に難しいと頭を悩ませている様子だった。新戦力も加入しており、その対策も90分のプランの中で練っておかなくてはならなかった。
発表されたメンバー表を見たとき、フェルナンド・トーレスの先発が意外だった。大分のビルドアップを阻むなら、豊田陽平を起用して前線から連動したプレスをかけてくるだろうと予想していた。あまり守備をしないトーレスが先発なら、4-4のブロックを構えてくるのかもと考えたが、原川力と松岡大起、福田晃斗の配置がよくわからない。前節は松岡がサイドで起用されていたこともあり、どうするのだろうとDAZNの中継班も予想フォーメーション図作成で迷っていた。
蓋を開けてみれば鳥栖のシステムは4-3-3。頂点はトーレスで、左ウイングが金崎夢生、右ウイングにアン・ヨンウ。松岡がアンカーに入り、原川と福田がその前に並んだ。だが、福田の位置が高く、場面を切り取ればトーレスとの2トップ状態になっていることもある。だがそれは、敵将・金明輝監督の施した大分対策だった。運動量豊富な福田に、大分のビルドアップ時にプレッシャーをかけるタスクを課したのだ。福田はスプリントを繰り返し、ときには高木駿のところまで寄せに走った。松岡と原川がバランスを取りつつプレスをかけ、大分がそれを剥がして前進しそうになると、鳥栖は素早く4-1-4-1のブロックを構え、大分のサイドを封じにかかった。
前半は互いに決定機をものに出来ず
相手の4-3-3は想定外で準備はしていなかったが、すぐにベンチは修正の指示を出した。新戦力も迎え最下位脱出を目論む鳥栖は、アグレッシブにシュートを打ってくる。2日から施行された新競技規則の影響もあり、何度もエリア内に進入を許したが、鈴木義宜が統率する守備対応で潰し続けた。33分には下がっていた金崎の展開を受けたアン・ヨンウが持ち上がってトーレスへとパス。トーレスの折り返しに駆け上がってきた金崎が合わせたが、これは高木が正面でがっちりとキャッチした。
大分も次第に相手の間を使えるようになり、特に右サイドの松本怜と岩田智輝は連係して何度も好機を築き、ティティパンが前に抜けたりオナイウ阿道がサイドに流れたりと変化しながら攻略を図る。前半終了間際には田中達也のクロスに後藤優介がゴール正面で合わせたが、無理な体勢となりシュートは枠の上に逸れた。
互いに決定機をものに出来ず折り返した後半頭、大分は後藤とオナイウが2トップとなり、松本と田中の両WBも高く張り出して攻撃的な立ち位置を取った。だが、その矢先の47分、福田が三竿雄斗にプレッシャーをかけ、こぼれたボールを奪ったアン・ヨンウが自ら持ち上がると切り返してシュート。弾道は高木の指先をかすめてゴール左隅に吸い込まれ、鳥栖に先制点を奪われた。
勢いづく鳥栖に対し、大分は60分、ティティパンに代えて藤本憲明。藤本を頂点に、後藤とオナイウの2シャドー、小塚和季がボランチに入った。直後の63分、田中のクロスに三竿が合わせて同点に。このときGK大久保択生のそばにいた藤本が関わったか否かで鳥栖の選手たちはオフサイドを主張して猛抗議したが、判定は覆らなかった。
ヒートアップした後半、スコアが動く
鳥栖の置かれた状況もあり、また九州ダービーの熱もそれに輪をかけて、後半のゲームは鳥栖の激しいタックルとそれを上手く剥がせない大分との肉弾戦となる。イエローカードが立て続けに提示され、判定への抗議も相次ぎ、ヒートアップする選手が続出して主審のコントロール能力が問われた。
鳥栖が65分にアン・ヨンウを金森健志に代えると、大分は69分、後藤を下げて小塚を再び一列上げ、ボランチには前田凌佑を投入。77分には鳥栖がトーレスに代えてイサック・クエンカを左ウイングに入れ、頂点は金崎に。大分はその2分後に小塚を三平和司に代え、両軍の攻撃的なベンチワークもボルテージを高めた。
そんな82分、相手陣内でインターセプトした岩田が左足で豪快なシュートを突き刺し逆転に成功する。鳥栖ベンチはすぐに動き、福田を下げてチアゴ・アウベスを入れ追撃に出た。激しい鳥栖の猛追を前に、大分としてはあとは落ち着いてポゼッションしながら時間を使い、逃げ切るだけだ。だが、90分、痛恨のミスが起きる。高木の鈴木へのパスがわずかに緩くなったところをクエンカにインターセプトされ、金森を経由して金崎がシュート。鳥栖が土壇場で2-2に追いついた。
5分のアディショナルタイムも激しいせめぎ合いは続き、90+5分にまでイエローカードが出される激しさだったが、試合は2-2のまま終了。引き上げていく審判団には両軍のサポーターから大ブーイングが降り注ぐ後味の悪い幕引きとなったが、J1残留のかかる九州の両チームは、とにもかくにも勝点1を分け合った。