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試合レポート

苦しい展開で意地を見せた選手たち。最後は流れを変えた小林の劇的同点弾で+1

 

特徴的なビルドアップを相手に研究されて封じられる中、もう一度それを上回るために我慢の時期を過ごしているチーム。明治安田J1第16節A神戸戦は、ビルドアップのミスから2失点して自滅しそうな展開となったが、流れを変えるために体を張った選手たちが牽引して2度追いつき、貴重な勝点1をゲットした。

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ミスからの先制点献上も藤本の好判断で振り出しに

 
GKを使ってのビルドアップが対策され、最近は後ろでのボール保持者にプレッシャーをかけたりパスコースを切ったりする相手に苦しめられるようになってきた。もう一度それを上回るために、受け手が動きなおしたり周囲がサポートに行ったりして新たなパスコースを作るといったポゼッションのトレーニングを、ここ最近はレベルを高めて続けている。一人が動けば周囲も動き直さねばならず、相手の動きに合わせて瞬時に意思疎通してプレーを繰り出すのは非常に難しい。
 
それでも、チームはそれにトライしなくてはならない。個々の能力の高いJ1の各チームと渡り合うためには、グループで戦うことが有効になる。それを目指して今季も、シーズン終盤に向けて完成度を高めていく積み上げの日々が続く。
 
その途上であるチームによるビルドアップは、正直、弱々しかった。パスコースを封じられるたびに、考えたり確認したりしながら動かすボールは、各駅停車で勢いも欠けがちになる。早速6分、庄司朋乃也の横パスをウェリントンに引っ掛けられ、その縦パスを受けたビジャに難なく先制点を奪われた。
 
あまりに早い時間でのミスからの失点は、勇気が挫けそうな展開だ。だが、それを藤本憲明が打開した。まさにボールを蹴ろうとしていた宮大樹に激しくタックル。バランスを崩して宮が転倒すると、こぼれたボールにオナイウ阿道が詰めたところへ相手が寄せ、ボールは転々とゴールの前へ。キム・スンギュが慌てて処理しようとしたところへ藤本が上手く体を入れ、キム・スンギュがアフター気味に藤本を倒してしまう。PKかと思ったが、こぼれ球を拾った小塚和季が落ち着いてオナイウに出し、最後はオナイウが決めて、失点の2分後には試合を振り出しに戻した。
 

2失点目もミスから。交代策で立て直しを図る

 
だが、たどたどしいビルドアップはその後も相手を剥がせない。剥がせそうな状況でもバックパスで作り直すことを選択する場面が多く、全体に消極的な印象を与えた。
 
これはひとつに、ビルドアップが上手くいかない中で、焦らず何度もやり直してチャレンジしようと話していたことも影響していたかもしれない。相手との力量差を考え、ボールを保持することで相手に攻撃機会を与えまいとした向きもあった。それは決して間違いではないのだが、前への意識が乏しく見えるサッカーは、チームの目指すものではなかった。
 
その中で26分には再びミスから失点。島川俊郎のバックパスを受けた高木駿のトラップがわずかに大きくなったところへプレスをかけたウェリントンにボールを奪われ、2点目を献上した。
 
片野坂知宏監督は後半頭から早々にカードを切った。狙われている庄司に代えて、11ヶ月ぶりの復帰となる刀根亮輔を投入する。さらに55分には、島川を長谷川雄志に交代。守備で頑張っていた2人を、より攻撃で長所を発揮するメンバーに代えることで、チームの積極性を高めた。
 
次第にリードした神戸のプレッシャーが緩み、スペースを使える展開になってきた69分、指揮官は早くも3枚目のカードを切る。味方との距離感がいい中でこそ魅力を発揮できる小塚に代えて、古巣戦の小林成豪を投入した。小林はリーグ戦では第5節以来のメンバー入り。ルヴァンカップには出場したが、あまり自分らしさをアピールできないまま、1日も早いフィットを待たれていた。
 

小林の投入が流れを変え、劇的終幕に結びついた

 
その小林が、ピッチに入った瞬間に輝きを見せる。激しいプレスで西大伍からボールを奪うと、ダンクレーと山口蛍をぶっちぎって攻め上がりCKを獲得。この勢いあふれるプレーが、チームの闘志を掻き立てた。
 
相手の精度不足に助けられたりもしつつ追撃していた89分。前線で中間ポジションを取りながらボールが出てくるのを待っていた小林に、鈴木義宜からの縦パスが入った。小林はダンクレーを横目にゴール前へと自ら持ち込み、寄せてくるキム・スンギュとの間合いが絶妙になった瞬間に、シュートを放った。曲者らしくテクニカルに右足アウトサイドで浮かした弾道は見事にゴールに吸い込まれ、チームに勝点1をもたらす劇的な同点弾となった。相手にプレッシャーをかけられながら辛抱強く前後左右にボールを動かして生まれた状況の中で、鈴木がフリーの小林を見定め縦パスを供給して生まれた得点だった。
 
上手くいくようになるまでコツコツと修正しながら戦っていく中で、こういう試合で勝点を積み上げることができたのは、目標であるJ1残留に向けて、非常に大きい。また、次節は浦和戦で、ここ数試合は特にフィジカルの強度を生かしているオナイウと伊藤涼太郎が契約の都合で出場できない。指揮官がどのようなメンバー、どのような戦い方で浦和戦に臨むかはこれから考えていくことになるが、ここまで出場できずにいた小林の活躍をはじめ、刀根の復帰など、新たな組み合わせオプションも選択できるようになれば可能性は広がる。どのメンバーにも、自身の輝きを存分に表現してもらいたい。