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試合レポート

形は作れたし、失点場面以外は守れた。だが、細かいクオリティーの差も見えた

 

J1連覇中のリーグチャンピオンを相手に、内容的にはまずまずの戦いが出来た。狙いの形でゴール前まで運べたし、守備も失点場面以外は及第点。だが、ワンプレーごとの細かいクオリティーの差が、じわりと全体に影響し、0-1で敗れた。

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仕留められた集中のエアポケット

 
それぞれに特徴のあるバラエティー豊かな攻撃陣のうち、誰が出てくるかによって必要とされる対応も変わってくる。ACLのアウェイ・シドニーFC戦から中4日の川崎Fの出方が見えない中で、チームは万全の準備をして臨んだ。
 
システムは3-4-2-1と4-2-3-1のマッチアップ。立ち上がりから互いに隙を伺いあうように、ピッチでは細やかな駆け引きが繰り広げられた。川崎Fのプレスを誘いながらボールを動かす中で大分は、時折、相手の背後を突くフィードや大きなサイドチェンジ、サイドでのコンビネーションなどを駆使して好機を築く。
 
ここ最近は相手に対策されてサイド攻撃が抑えられがちだったことを受け、松本怜と岩田智輝、オナイウ阿道の右サイドはかなり細やかに新たなアイデアを出すなどしていた。藤本憲明も攻守に効果的に絡みつつ、コンビネーションを駆使して攻撃の形を作る。ただ、アタッキングサードまではいい形で運べても、パスやクロス、シュートの精度を欠いたり相手守備陣に潰されたりして、得点の匂いが感じられない。
 
そのウラを突かれたように、28分、逆に川崎Fに先制点を奪われた。中央でクサビを受けた脇坂泰斗が左へ展開すると、長谷川竜也がファーへとクロス。そこへ後ろから走り込んできたマギーニョが合わせた弾道は、高木の懸命に伸ばした右手に触られながらゴールの中へ。集中して守っていた中でのエアポケットのような一瞬の隙を、チャンピオンチームは見逃してはくれなかった。
 

前までは運べてもフィニッシュに至らず

 
なんとか前半を無失点でしのげればというプランは崩れたが、チームは落ち着きを失わなかった。しっかりとボールを保持し、パスをつなぎながら少しずつ前進する。そのじっくりした歩みは相手の攻撃時間を削ることにもつながった。ただ、試合の中で、ひとつひとつのプレー精度や判断のクオリティーの差は、じわりじわりと流れを川崎Fへと傾けていった。
 
0-1で折り返した後半、片野坂知宏監督は高畑奎汰をベンチに下げて高山薫を右WBに投入。松本はチャンスを生み出せそうな左WBに回った。松本が左サイドで突破の回数を増やすと、66分、敵将も動く。鈴木義宜が中心になってケアしていたレアンドロ・ダミアンに代えて知念慶をトップに配置。これまでとは異なるタイプの攻撃で変化をもたらしてきた。さらに68分には疲労の見えるマギーニョを車屋紳太郎に代えて松本をケア。松本は気にせずに突破していたが、そこに立ちはだかったのが右CBのジェジエウだ。試合後に松本も「守備範囲の広さに驚いた」というジェジエウは、車屋の背後で素晴らしいカバーリングにより大分の攻撃の芽を刈った。
 
74分にはハードワークにより疲労した島川俊郎をティティパンにスイッチするが、やはり川崎Fの厄介な2列目のケアに追われてなかなか攻撃に回れない。ボランチが前に関わっていけず、4バックの相手が圧をかけてくることもある中で、長谷川雄志のサイドチェンジが生きた。ただ、生きはしたが、細やかな崩しのプロセスなくクロスを入れたところで、中でたやすく跳ね返されてしまう。川崎Fが79分に足を痛めた脇坂に代えて小林悠を投入すると、こちらも80分に藤本を後藤優介に代えて最後の一発を狙ったが、いずれもネットを揺らすことはできず、試合は0-1のまま終了を迎えた。
 

出来たこと、出来なかったことが明確に

 
「ゴール付近まで運べたところで、それがフィニッシュにつながるのが川崎Fで、つながらないのがウチだった」と、試合後に指揮官は肩を落としながら苦笑いした。ACL帰りの相手は1点リードすると、ハイプレスを抑え、力をセーブするように効率的に守った。0-1というスコア以上に力量差を感じた一戦だった。
 
鬼木達監督も「なかなか自分たちの時間を作るのが難しい展開になったが、それでもある意味で自分たちらしい、隙を見せずに隙を突くというところで選手はよくやってくれた」と総括。両軍の指揮官は同じ風景を見ていた。
 
一方で、自分たちのスタイルを表現しようとチャレンジする姿勢は随所に感じられた。新たな工夫が見られたり、これまでにはなかった組み合わせが機能したりという収穫もあった。庄司朋乃也はリーグ戦初先発。長谷川雄志は徐々に経験を積みながらチームへのフィットを進めている。長谷川雄志と島川のダブルボランチの献身的で集中した仕事により、川崎Fの2列目への対応は、だいぶスムーズになっていた。
 
次節はアウェイで首位・FC東京戦。今節、初黒星を喫して士気を高めているはずだ。その次は強豪・名古屋、さらに次は4-1の大勝で7連敗を止めた神戸が待っている。いずれも力量の高いプレーヤーを並べるチームばかり。また力量差という現実を突きつけられることもあるかもしれないが、サッカーは組織の競技。地道に勝点を積み上げていきたい。