TORITENトリテン

試合レポート

相手に対策されてちぐはぐな前半。素早い修正も指揮官からは叱責の言葉

 

相手の対策に要所を抑えられ、なすすべなく右往左往した前半。修正して後半は立て直したが、不甲斐ない試合に指揮官の表情は厳しかった。明治安田J1第12節H清水戦は、今季のマイルストーンのひとつとなるか。

試合情報はこちら

万全の大分対策に攻め手を封じられる

 
篠田監督新体制での初陣となった清水は、短い準備期間だったからこそ、万全の大分対策で勝点奪取を狙ってきた。まずは激しいハイプレスでビルドアップを阻む。サイドに展開すれば即座にSHとSBで縦を切り、松本怜にも星雄次にも仕掛けさせない。特に清水のストロングポイントのひとつである左SB松原后の攻め上がりを封印してまでの松本の特徴を把握した対応は、大分の右サイドへの警戒度の高さをうかがわせた。
 
左サイドではルーキーの高畑奎汰の左利きの足元が狙われた。日本代表FW北川航也の激しい圧で動揺させ、ミスを誘う。蹴らされるように前線へとボールを送ると、ファン・ソッコと二見宏志の2CBがすかさずそれを潰した。
 
2列目の中村慶太と金子翔太が岩田智輝と高畑の攻め上がりを阻み、松本と星の両WBを孤立させる。単騎突破のコースも切られた松本は、それでも多彩に工夫を凝らした。何度かブラインドサイドへと抜け出したオナイウ阿道へのスルーパスも試みたが、いずれも呼吸が合わない。
 
島川俊郎と長谷川雄志のボランチには迷いが見られた。中盤でボールを持ててもその先の突破口が見えない。助け舟として小塚和季が何度もボールを受けに下りたが、そこからの連係もままならなかった。
 
そんな展開の中、10分には高畑との競り合いに勝った中村のクロスから金子がシュート。枠の上に逸れて命拾いしたが、その直後にも中村のパスを受けた六平光成にシュートを許す。今度はファーポストが弾いてくれた。
 

素早い修正で立て直し同点に

 
運に助けられることもそうそうは続かない。立ち上がりから狙われていた左サイドで、完全にハメられた。プレスを受けて長谷川から高畑へと戻しサイドに追い込まれ、苦し紛れに高木駿に出したところへドウグラスが寄せる。高木がクリアしようと足を出し、エリア内でのファウル判定となった。34分、ドウグラスにPKを沈められ先制される。
 
ベンチの動きは早かった。38分、高畑をベンチに下げて三竿雄斗を投入。三竿はそのまま左CBに入った。その三竿が縦パスやクロスを供給しはじめ、攻撃の形は作れるようになったが、アタッキングサードでの精度を欠いてもどかしい展開が続く。
 
それでも前半を0-1で乗り切ると、片野坂知宏監督は後半頭から、小塚を一列下げてシステムを3-5-2へと変更した。後方でのボール回しと前線の裏抜けを封じられたぶん、中盤では自由を得られる。前半からそこに下りていた小塚が明確にボランチの一員となることで、主導権奪還を見込んだ。
 
47分、松本の落としから岩田がアーリークロス。その鋭い弾道を見極めた藤本憲明は、すでに相手CBの前に体を入れていたが、咄嗟の判断で相手を背中でブロックしながら身を避けた。クロスはそのままゴールへと吸い込まれ、起死回生の同点弾となる。岩田の今季2点目が、クラブJ1通算300点目のメモリアルゴールとなった。
 
大分が中盤で主導権を握りペースを回復すると、清水もただちに動き62分、中村に代えて西澤健太を投入する。大分は65分、星をベンチに下げ、ティティパンを送り込んだ。三竿を左WBに、島川を左CBにスライドしてティティパンはトリプルボランチの右に入り中央からの攻撃力を増す。
 
北川やドウグラスのヘディングシュートは枠をとらえきれず、ティティパンのスルーパスは西部洋平にキャッチされて、一進一退の攻防が続く。
 

細やかな采配合戦でドローも両指揮官の表情は明暗

 
79分、清水は北川を下げてDF飯田貴敬を入れ、システムを4-1-4-1へと変更して大分の中盤をケアしにかかった。そのまま押し合いが続くと、90分、片野坂監督は小塚に代えて庄司朋乃也を投入。90+1分に鄭大世がピッチに入ってくることを見越しての高さ対策だ。互いに終盤まで譲らず勝点3を狙う姿勢を見せつつ、相手のその姿勢に対応して守備力も落とさない細やかな采配合戦となった。
 
90+4分、藤本がペナルティーエリア右からシュートを放つが、惜しくもポストに弾かれてしまう。前半は六平のシュートを弾いて味方になってくれたホーム側左ポストだが、今回は障壁となった。やはりゴールの枠は物体に過ぎない。
 
4分のアディショナルタイムもスコアは動かないままタイムアップ。勝点1を分け合う結果となったが、狙いがハマり初陣で連敗をストップした篠田監督は、回復への手応えを得た様子だ。一方で、片野坂監督は不甲斐ない試合に怒りあらわ。ロッカールームでは自身も含めた準備不足と垣間見えた油断について、選手たちに思いの丈をぶちまけたと明かした。
 
「こんなゲームを続けていては落ちる」。指揮官に言われるまでもなく、選手たち自身が身をもってわかっていたようだ。「こんなゲーム」でも勝点1を拾えて公式戦7戦無敗を続けてはいるのだが、これからこうして対策を練ってくる相手が増えることを考えると、緩んではいられない。
 
ましてや22日にはルヴァンカップグループステージ突破を懸けたC大阪戦。そこから中3日でJ1第13節。相手は昨季J1王者の川崎Fで、第14節はアウェイで首位のFC東京戦。さらに第15節は名古屋戦と、強豪との戦いが続く。第2クールを終えて目標勝点に貯金はあるものの、ここで一気にそれを使い果たすような真似はしたくない。
 
ただ、これまでも失敗さえ糧にして積み上げてきたチームだ。この経験を経験値に変えられると信じている。