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試合レポート

あきらめずに貫いて掴んだ逆転勝利。グループステージ突破の望みをつなぐ

 

タレントを並べて勝ちに来た神戸に対し、スタイルを表現して戦った。先制された後も焦らず、粘り強く試合を運んだことで、見事な逆転勝利。グループステージ突破の望みをつないだ。

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実力派を並べて勝ちにきた神戸

 
公式戦5試合勝ちなしの神戸。新体制移行後も未勝利状態が続いており、この試合には強く勝利を期して、リーグ戦でおなじみのタレント勢を多く起用してきた。特に驚かされたのは、4-3-3の中盤の3枚だ。サンペールをアンカーに、その前に山口蛍と三田啓貴を並べる豪華布陣。1トップはもちろんウェリントンだ。
 
大分は、メンバー表を見ただけでは予想しづらい構成。福森直也の左WBや丸谷拓也の左CBなど珍しい起用をはじめ、負傷から復帰した星雄次が右WBに入り、いつもはシャドーの後藤優介が1トップで三平和司がシャドーに入るなど、意外な配置の多いスタートとなった。
 
だが、立ち上がりにウェリントンと小川慶治朗のシュートをブロックしてしのぐと、その後は大方の予想に反してこちらが主導権を握る。ポジショニングよくボールをつなぎ、相手を動かしながら攻撃を組み立てた。神戸も大分のパスのズレを見逃さずに奪い返すが、その後のビルドアップは大分に阻まれて上手くいかない。
 
19分、伊藤涼太郎の縦パスを引き出した後藤が相手を剥がしながらシュートするが、わずかに枠の右にそれる。25分には三平のパスを受けた伊藤がゴールを狙ったが、これも枠の左へ。
 
クロスの精度を欠いたり決定機を逃したりするうちに、30分過ぎから神戸がペースを掴みはじめる。38分、渡部博文のフィードをウェリントンが頭で落とし、走り込んできた山口が拾って個人技でかわしシュート。少ないチャンスをものにされ、先制を許してしまう。
 

粘り強く貫いたことで逆転に成功

 
だが、片野坂知宏監督は落ち着いていた。前半から狙いの形で決定機は作れており、続けていけば得点できるという手応えを感じていたという。
 
前半の戦い方を継続する方向で臨んだ後半も大分のペース。次第に左サイドを起点とした攻撃がチャンスにつながりはじめ、立て続けに福森からのクロスや伊藤との連係での突破が増えてきた。神戸は即座に動き、右サイドにテコ入れする。62分に右SBを大崎玲央から西大伍へ、64分に右ウイングを小川から古橋亨梧へとチェンジして、サイドの主導権を奪回しにかかった。
 
片野坂監督もすぐに手を打ち、小手川宏基をベンチに下げて高畑奎汰を投入する。高畑を左WBに入れ、福森を左CBに下げると丸谷をボランチへと一列上げて、攻守両面で強度を高めた形だ。さらに66分には三平をティティパンに代えて、追撃の勢いを増した。
 
すると69分、庄司朋乃也の激しい寄せによりウェリントンのバックパスがスペースに立っていた伊藤へとこぼれる。伊藤が素早く後藤へと縦パスをつけると、後藤は自らターンしてパンチの効いたシュートを放った。今度は見事にゴール右隅を揺らし、同点に追いつく。
 
再び突き放そうと神戸が攻撃のギアを上げていた76分、片野坂監督は伊藤を下げてオナイウ阿道を投入。直後にティティパンが神戸の守護神・前川黛也にプレスをかけ、宮大樹へのパスをさらって自ら持ち込み、殊勲の逆転弾。リードを奪ってようやく、福森の第一子誕生を祝うゆりかごダンスが披露された。
 

勝利以外の収穫も大きかった一戦

 
大分は神戸に高い位置からプレッシャーをかけてラインを高く保つと、前がかりになる神戸の背後を突いて、さらなるチャンスを生み出す。84分には右サイド裏でフィードを拾った後藤がドリブルで持ち上がり、ファーに走り込んでいた高畑へとクロス。高畑のダイレクトボレーは力強くミートしたが、惜しくもクロスバーに弾かれた。
 
神戸も最後まで攻め続け、85分にはウェリントンがバイシクルシュートを試みるも空振り。アディショナルタイムには古橋のクロスに田中順也が頭で合わせたが枠の上に逸れた。相手のわずかな精度不足にも助けられつつ、試合は2-1で終了した。
 
他会場では試合終盤にC大阪が名古屋に追いつかれて引き分け。これをもってCグループの順位は1位が勝点8のC大阪、2位が同7の大分、3位が同6の名古屋、4位が同5の神戸となった。再び混戦へともつれた形だが、次節、アウェイC大阪戦に勝利すれば、グループステージ突破が可能となる。
 
そういった結果ももちろんだが、タレントの並んだ神戸に対し、いい内容で勝利できたことも大きな収穫だった。指揮官は試合後、「神戸さんのメンバーを考えれば金星と言っていい勝利」と選手たちを讃えた。また、不慣れなポジションでスタートした選手たちの戦術理解とその遂行能力、さらにそれを敢行したことでの成長も得て、チームにとっては豊作と言えるだろう。
 
底上げが進み、オプションも増えている。次は明治安田J1第11節A湘南戦。激しいポジション争いの中、さらにメンバー予想が難しくなってきた。