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試合レポート

後半の試合運びには課題も強敵・札幌に敵地で白星。指揮官は攻撃への思いを新たに

 

初の師弟対決は、“弟子”側に軍配。明治安田J1第6節A札幌戦は、立ち上がりに狙った形から先制した大分が前半に2点をリードしたが、後半は一転、押し込まれてひたすら耐える展開に。粘り強い守備で逃げ切ったが、最後までハラハラする熱戦となった。

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狙いどおりの形で立ち上がりに2得点

 
鹿児島キャンプ中にインフルエンザにかかり、その後は小さな負傷もあって出遅れていた三平和司が今季初出場。トレーニングで好調な様子を見せていた星雄次も今季初の先発となった。
 
前節に続き3-4-2-1のミラーゲームだが、札幌は広島とは違い、前から激しく奪いに来る攻撃的なチーム。それを踏まえて片野坂知宏監督は、狙いどころを定めていた。キックオフ直後からチームはその狙いを遂行する。立ち上がりにいきなり藤本憲明が右サイドで起点を作りかけ、それは相手に阻まれたが、2分には小塚和季が相手3バックの右に抜け出す。相手WBが高い位置を取った背後を突く作戦で、そのために松本怜がマッチアップする菅大輝と駆け引きした。
 
右サイドのスペースでボールを受けた小塚は中の状況を見て、藤本憲明がニアに飛び込むことを警戒しているであろう相手の裏をかき、ファーへとボールを送る。そこに入るのが少し遅れた星だが、スライディングで足を伸ばしての折り返しが絶妙なクロスとなり、ゴール前で待ち構えていた藤本が一撃必殺でゴール上部に突き刺した。
 
さらに26分、今度は松本が滑るようなスピードで相手の背後に抜け出す。お決まりの得点パターンで松本のマイナスのクロスに藤本が走り込んでいくと、それを防ごうとした宮澤裕樹のオウンゴールを誘い、2点目となる。
 
39分には藤本の落としを小塚が持ち込んでのシュートチャンス。余裕で3点目が奪えたかと思いきや、相手守護神ク・ソンユンもぎりぎりまでコースを切りに行き、狙いすましたシュートはポストを叩いた。
 
早くも追う立場になった札幌は、アンデルソン・ロペスや鈴木武蔵のポテンシャルを生かして何度もペナルティーエリアに攻め込んでくる。それを距離感よく連係した守備でしのぎながら、2-0で前半を乗り切った。
 

後半はプレスがハマらず完全に札幌ペースに

 
後半頭から札幌は、ボランチの荒野拓馬に代えキム・ミンテを投入すると最終ラインに置き、宮澤をボランチへと一列上げた。宮澤を軸にボールを動かしながら、札幌の両サイドが高い位置を取るようになり、アンデルソン・ロペスのドリブルや鈴木武蔵の裏狙いの駆け引きによっても、大分は自陣深くへと押し込まれた。ボールホルダーへのプレスがハマらず、全体に守備のスイッチが入らないため、ほぼ完全にペースは札幌のものとなる。
 
59分、札幌は菅大輝をベンチに下げ、ルーカス・フェルナンデスを入れて右WBに。右WBでスタートした中野嘉大は左WBへと移る。61分には大分が三平に代えてオナイウ阿道を入れシャドーの勢いを保とうとした。
 
だが札幌の勢いは止められず、防戦一方の苦しい時間帯が続く。ついに69分、バイタルエリアでリズミカルにボールを動かされると守備網が崩れ、左WBの中野のクロスに鈴木武蔵が飛び込むところをクリアしようとして、今度は鈴木義宜がオウンゴール。1点を返された。
 
71分にはティティパンに代えて丸谷拓也を入れ中盤の守備を強化。一向にプレスがかからない状態は変わらず、78分には藤本に代えて伊藤涼太郎を投入し、オナイウの1トップに伊藤と小塚の2シャドーとする。ただ、フレッシュなオナイウと伊藤にハイプレスをかけさせるのか、攻撃の時間を少しでも多くするのかが、2人のプレーからはいまひとつ明確に見えてこない。
 
1点差に詰め寄った札幌は追いつこうと圧を強め、83分には中野に代えて白井康介。白井を右WBに、ルーカス・フェルナンデスを左WBに回す。
 
アディショナルタイムの4分は、大分にとってとても長く感じられた。だが、札幌の攻撃も迫力にはあふれつつ、焦りと疲労からかやや大味に。どうにか最後までしのぎ、逃げ切った形で勝点3をつかんだ。
 

試合運びに課題も収穫も多かった一戦

 
試合後に片野坂監督は、ハーフタイムの自分の指示により選手たちが守備の意識に傾いてしまったと悔やんだ。3点目を取りにいくのか2点のリードを守るのかが難しい展開。それを踏まえてこう話した。
 
「このJ1のリーグ戦を戦う中で、守りきって勝つというよりはしっかりと攻めて2-0から3-0、もしくは4-0というふうにチャレンジしなくてはならないと、試合後にコーチ陣と話していて感じた」
 
自身のサッカー観に大きな影響を及ぼした師であるペトロヴィッチ監督との対戦を通じ、あらためてその思いを強くしたのだろう。
 
この試合で三平が初めて大分の一員としてJ1のピッチに立ったことや、今季は高山薫に先を越された形だった星が活躍する姿を見せたことは大きな収穫だった。後半は守備の時間が大幅に長くなったが、粘り強く体を張りながら1失点に抑えたことも評価したいポイントだ。
 
相手がアグレッシブに来てくれたこともあるが、苦手としてきたミラーゲームにおいて、ミラーゲームらしく互いにぶつかり合ってミスはあったものの、前半は攻守に上回ることができていた。「守備のクオリティーを維持しつつ攻撃でも存在感を出したい」と“福森ダービー”に臨んだ福森直也は、アンデルソン・ロペスの個人技にも果敢に対応しつつ、何度かいい形での縦パスや攻め上がりを披露した。アンデルソン・ロペスとリーグ得点ランク首位タイだった藤本は、今日の得点で単独首位に立った。
 
小塚は「今後はああいう時間帯を僕らの時間帯にしていけるようにならなくてはいけない」と、ボール保持による試合支配を目標とした。ミッドウィークにはルヴァンカップのアウェイ神戸戦を挟んで、次節はホームで仙台戦だ。