先を見据えてのチャレンジ。力量差を見せつけられもしたが成長を続けたい
ルヴァンカップ第2節A名古屋戦は、新しい試み満載のチャレンジでスタート。雪もちらつく極寒のアウェイのスタジアムで、相手との個々の力量差を見せつけられ、プラン変更を余儀なくされもしたが、自分たちの立ち位置を確認し、個々の課題も見えた。
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意図をもって入るも、31分にプラン変更
5連戦の4戦目はアウェイでのルヴァンカップ名古屋戦。スケジュール面なども考慮してベンチメンバーを5人に絞った中で、負傷明けの島川俊郎と三平和司が今季初メンバー入り。ルヴァンカップ第1節は契約の関係で絡めなかった庄司朋乃也も先発組に入った。
怪我明けの島川がボランチで先発し、レフティーの高畑奎汰が右WBに配置されるというサプライズな布陣でスタート。だが、試合は立ち上がりから相手に圧倒される場面が続く。4分には早々に名古屋が先制。ペナルティーエリア左角からのFKで、相馬勇紀に直接ニアをぶち抜かれた。
名古屋の素早く正確なパスワークに奪いどころを定めることができず、セカンドボールはことごとく拾われる。こちらがボールを持ってもハイプレスに遭って上手くボールをつなぐことができない。ビルドアップでは相手に追い込まれると判断でも課題が露呈した。
一貫した名古屋ペースの中、懸命に体を張ってしのぎながら、27分にようやくチャンス。高畑の縦パスから伊佐耕平がクロスを送り、伊藤涼太郎が合わせたが枠の上に逸れた。
片野坂知宏監督は早くも31分にプラン変更を決断。もともと準備していたものと思われるが、本調子ではない島川をベンチに下げ、丸谷拓也をアンカーに据えて馬場賢治と小手川宏基をその前に並べるトリプルボランチに変更。高畑を左CBに、星雄次を右WBに移すと、左WBには小林成豪を入れた。2トップは伊佐と伊藤涼太郎。だが2分後、伊佐が負傷して自ら交代を訴え、オナイウ阿道とチェンジする。
後半はカウンターから追撃のチャンス
41分には金井貢史のグラウンダークロスを長谷川アーリアジャスールに決められて2点差に離される。完全に名古屋ペースだったが、43分、苦しい展開の中でも心折れることなくハイプレスをかけ続けていた伊藤涼太郎が、高い位置で相手のミスを突きボールを奪うと、自ら持ち込んで1点を返した。
後半立ち上がりは相手のプレスがやや弱まったこともあり、カウンターから好機が生まれはじめる。56分、57分には立て続けに小手川のスルーパスから星がクロスを入れ、オナイウが飛び込む形でのチャンス。58分には相馬が抜け出して早稲田大時代のチームメイト小島亨介と1対1の場面を迎えるが、ここは小島がビッグセーブで防いだ。その後も小島は61分に小林裕紀のミドルシュートを、65分には千葉和彦のミドルシュートを掻き出す好セーブを見せる。大分も丸谷の縦パスから伊藤涼太郎がシュート、丸谷のミドルシュートと60分台には反撃するが、いずれも得点ならず。
65分、名古屋は左SBを金井から和泉竜司にチェンジ。フレッシュで攻撃的な和泉と相馬のサイドにこちらも鮮度を保って対応すべく、指揮官は疲労した小手川を三平に代えた。復帰戦ながら好調そうな三平は細やかな動きでボールを落ち着けながら攻撃を組み立てる。
主導権を握り続けながらなかなか3点目が取れない名古屋は、84分に伊藤洋輝を下げジョーを投入。長谷川アーリアジャスールをボランチに下げてジョーの攻撃力でさらに大分の時間を削ろうとした。90+1分には和泉のパスカットからジョーがビッグチャンスを迎えるが、大分守備陣も必死でコースを防ぎ、シュートは枠の右へ。
大分は最後まで小林成豪がクロスを上げオナイウや三平がゴール前に飛び込んだが、追いつくことはできず2-1でタイムアップとなった。
新たなチャレンジを今後につなげられるか
リーグ戦との連戦でターンオーバーして臨んだ試合。個々の力量の高い戦力が並ぶ名古屋に対し、片野坂監督は新たなチャレンジを選手たちに課した。逆足でのカットインを期待した高畑の右WB起用や、プレシーズンに素晴らしいフィット感を見せた島川の戦線復帰など、新たな要素が多く見られた。
プラン変更後は、GKが小島、DFラインは高畑、庄司、岡野洵と、この戦術のキーポイントとなる後方に新加入選手やルーキーが並んだ。昨夏にレンタルで加入した岡野にしても、公式戦フル出場はルヴァンカップ前節のC大阪戦に続いて2度目だ。名古屋の迫力あるハイプレスの前に苦しい状況に追い込まれたが、片野坂監督は彼らのチャレンジに対して、テクニカルエリアから「それでいい、それでいい」と声を送り続けていたようだ。連戦でトレーニングマッチが行えない状況だが、公式戦で経験を積ませながら個々を育てることができる。その意味で最初のプランがなかなか機能しなかったことは残念だが、島川が調子を上げたり若手が成長したりするとともに、組織としてまたよくなることもあるだろう。
終始苦しい展開を強いられた中で、ポジションを移しながら戦術遂行に努めた丸谷や、賢いプレーで状況打開を図り続けた小手川、周囲をサポートしカバーするために90分間駆けずりまわった馬場らのクレバーさと献身性が際立った試合でもあった。復帰した三平の本格的な参戦にも期待できる。
連戦が終われば中断期間を挟んでまた新しい試みもあるかもしれない。まずは中2日で迎える5連戦最後のJ1第4節H横浜FM戦に向けて準備を進めたい。