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試合レポート

用意周到な大分封じに苦戦。シュート1本に抑えられ屈辱的な敗戦

 

J2で対戦を重ね、知り尽くされた感のある対策に抑えられた。先制されたことで完全に相手のプランに持ち込まれ、6年ぶりのJ1ホーム開幕戦を白星で飾ることはできなかった。

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要所をケアされて攻めあぐねる展開に

 
この試合に向けて前々日入りしていた松本。移動疲れの影響もなく、フレッシュな状態で臨んだ。J2でしのぎを削った大分の戦術はよくわかっている。さらに“J2オールスターズ”の新戦力個々のことも、他チーム在籍時の対戦によって特徴は把握していた。試合を終えた敵将・反町康治監督は完璧な大分対策が結果を導いたことに非常に満足げだった。
 
両軍ともシステムとスターティングメンバーは前節と同じ。3-4-2-1のミラーゲームは前半、それぞれのスタイルを表現しながらもどこか様子をうかがいあう空気をはらみながらスタートした。大分は松本のプレスをかわしながらボールを動かし、ティティパンや小塚和季らが上手さも見せるのだが、大分のボールの動かし方を知っている松本に要所をケアされて組織を寸断され、テンポが上がらない。距離感は良好なためボールはつながるのだが、持ち前の流れるような勢いを出せず、フィニッシュに至る前に松本の守備陣に潰された。
 
松本は大分からボールを奪うと勢いあふれるカウンターでゴールを目指すが、フィニッシュの精度を欠いたり高木駿の好セーブに阻まれたりして、前半はスコアレスのまま終了する。
 

先制点を奪われ試合の流れが相手に傾く

 
だが、後半開始早々にスコアが動いたことで、試合の流れはほぼ決定づけられた。50分、高橋諒のクロスを鈴木義宜が競ったボールがクロスバーに当たる。その跳ね返りが高木の背に当たってこぼれたところへ、素早く詰めた永井龍に押し込まれた。
 
なんとしても渡したくなかった先制点。以後、松本はさらに重心を守備へと移す。自陣ではしっかりとブロックを構え、大分の攻撃に対応した。大分の選手たちはセカンドボールに対する反応も遅く、中盤での主導権を相手に明け渡してしまう。その状態を鈴木は試合後に「戦うところで相手に負けていた部分が多々あった」と反省し、小塚も「うまく守られた」とうなだれた。片野坂知宏監督は「自分も含め甘さがあったのではないか」と厳しい表情を見せたが、松本の大分対策にスタイルを封じられ、次の一手をどうしていいのかわからずに困惑したことも関係していたのかもしれない。
 
松本が引いて守ることは想定内で、昨季もそういう相手に対してやったようにサイドから崩すプランを用意していた。57分には前田凌佑に代えて丸谷拓也、61分には伊藤涼太郎に代えてオナイウ阿道を入れ、システムを3-5-2に変更してサイドに人数をかけたが、松本の守備網を崩しきれない。いい状態でクロスが上がらないので、システム変更は結果的にゴール前にかける人数が少なくなる事態を招いてしまった。
 
85分、指揮官は福森直也に代えてアカデミーからトップ昇格したルーキー・高畑奎汰を投入。高校時代にSBで鍛えられた、より攻撃的なレフティーを配置することで、最終ラインからの攻め上がりとサイドからの崩しを狙った。これも練習で準備していた形で、狙いとしては悪くなかった。
 
だが敵将は87分に右WBを交代。「よくわからない若い左利きの選手が出てきたので、この選手がドリブルで持ち上がってくるのを見越して、(前田)大然が剥がされた場合に上手く1対2でも高山のところで守れるように(田中)隼磨を入れた」と、ここでも余裕の対応を見せる。アディショナルタイムに上がった高畑からのクロスは本人の狙いよりもGK寄りになり、守田達弥にがっちりとキャッチされた。
 

昨季終盤を再現するにはまだ成熟度が足りない

 
終わってみれば放ったシュートはわずか1本。前半には紙一重のパスがつながらなかったり、コンビネーションにわずかな意思のズレがあったりと、惜しいシーンもいくつかあったのだが、シュートがカウントされたのは、右サイドの突破から松本怜が絡み、藤本憲明が飛び込んだ82分のみ。ここもあとわずかというところだったが、エドゥアルドと守田に体を張られ、最後まで松本の堅守は破れなかった。
 
狙いも準備していた方向性も悪くはなかったのだが、それを実戦で駆使して結果を出すまでには、今季の組織はまだ成熟しきれていなかったようだ。昨季、徳島戦や愛媛戦で引いた相手を崩せなかったところから攻撃オプションを増やし、サイドでの流動的な崩しやサイドチェンジでの数的優位演出などでブロックをこじ開けることができるようになっていたのだが、今季はまた選手が入れ替わったため、その緻密な戦術を遂行するには、わずかな呼吸や意思疎通が不足していたのかもしれない。
 
それはこれから高めていけばいいことで、今季は今季の選手に合わせたオプションも、今後は生まれてくるかもしれない。シーズンの早い時期には、相手に戦術を封じられたとき、次の一手を考えるときに迷いが生じ、勢いが削がれてしまうことが起きがちだ。片野坂監督はそれを「準備不足だった」として反省の弁を述べたのだろう。
 
中3日でルヴァンカップC大阪戦、そこから中2日でアウェイ磐田戦。さらにルヴァンカップ名古屋戦、ホーム横浜FM戦と連戦になる。この敗戦をテコにして、チーム全員でハードスケジュールを乗り切りたい。
 
今節は“昨季J2最強の盾”に阻まれた結果となったが、次回対戦では必ず“昨季J2最強の矛”が貫けるよう、チームの成長に期待するばかりだ。
 

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