2失点も、4発快勝。フクアリで千葉を下し再び暫定2位へ浮上
開始早々の三平ゴールに勢いを得て、アグレッシブさを貫き千葉を上回った。戦術の狙いと選手起用もハマり、4-2での快勝。フクアリでの勝利は2012年J2以来となる。暫定2位に返り咲いたチームは次節、松本との頂上決戦を迎える。
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千葉対策として指揮官は選択肢に幅を持たせた
フクアリで「開始早々にスコアが動いた」と書けば、千葉に先制されたのかと脊髄反射してしまうのがトリサポの性かもしれない。それほど過去の対戦成績は悲惨なものだった。前節、町田に気迫負けしての“天敵”との関東アウェイ連戦。大混戦の昇格争いの中、1試合たりとも落としたくない状況で、相当にプレッシャーのかかる一戦だった。コイントスに勝った鈴木義宜がエンドを入れ替えて、緊迫のゲームははじまる。
その雰囲気を一気に好転させたのが三平和司の先制ゴールだ。1分、背を向けて鈴木からのフィードを処理しようとした千葉GK大野哲煥。ゆっくりとボールに手を伸ばす大野の背後から迫った三平がその足元をつつくと、ボールは転々とゴールへと転がり込んだ。まさにトリサポの眼前での出来事。スタンドの声援が相手の注意を促す声をかき消したのかもしれない。
4-3-3か4-2-3-1かを迷わせた千葉だが、スタートはアンカーシステム。中盤に中間ポジションを取るのが得意な選手たちを並べ、状況に応じて並んだりギャップを作ったりしながら、エスナイデル監督独特のハイプレス・ハイライン戦術を今節も貫いてきた。前節から前線3枚を入れ替えた3-4-2-1の大分も、千葉の状態を見きわめながら立ち位置を取る。
11分にはビルドアップの隙を突かれて町田也真人にネットを揺らされ、早くも同点とされた。対千葉での狙いに基づいたボールの動かし方にトライした場面だったが、やはり千葉のハイプレスには迫力があり選手個々のポテンシャルも高い。
だが、千葉のブレない戦い方には大きなウィークポイントがある。片野坂知宏監督はシンプルにそこを突く選択肢を、選手たちに与えていた。守備時に5-4のブロックを作りながら、ボールを奪うと前線に攻め残っていた藤本憲明へと長いボールを送る。少しでも優位な状況を作り出すために藤本はつねにエリア内を避け、サイドに流れてそれを受けた。
スピードに長ける藤本なら千葉の2CBを上回れると踏んでの先発起用が見事にハマった。16分、矢田旭のドリブル突破を鈴木がカットしたこぼれ球を福森直也が前線へと送ると、足を滑らせた相手の隙を突いて藤本が抜け出す。センターサークルからの長距離ドリブルカウンターで追ってくる相手をうまくブロックしながらGKと1対1の状況を作ると、落ち着いて流し込み再びリードを奪った。
理想を具現化したような美しい3点目
藤本は21分にも高木駿のフィードからビッグチャンスを演出する。左サイドで受けた藤本がうまく体を使って近藤直也と入れ替わるとシュート。これは大野に阻まれたが、一発でシュートを狙ってくる藤本は確実に千葉にとって脅威となっていた。
その藤本が今度はお膳立て役となって3点目が生まれる。岩田智輝のフィードを藤本が頭で落とし、三平から國分伸太郎と斜めにクロスしながら関わって國分が千葉最終ラインの背後に抜け出した藤本へ。拾った藤本は自ら打つ可能性も匂わせながらGKとDFの間隙に速いクロスを送った。星雄次と並走しながら中に走り込んでいた三平がスライディングで押し込み、リードを広げた。これぞチームの目指すスタイルを具現化した美しい一連からのゴールだった。
両軍の激しい攻防が繰り広げられ、43分にはスルーパスに抜け出した町田がシュートを放つがサイドネット。44分には高木からのロングフィードを処理しようとエリアから出ていた大野がまたも見せた隙を突いて、今度は藤本がボールを拾う。その藤本を止めようとした大野はエリアの外でボールに手で触れた。これはレッドカードかと騒然となったが、レフェリーが高々と掲げたカードはイエロー。藤本のプレーをシュートではなくクロスだと解釈しての判定が下された。
千葉の反撃に負けず気迫のプレーで圧倒
後半頭から千葉は指宿洋史に代えて為田大貴。船山貴之がトップに入り為田が左サイド。攻撃のポイントを中央からサイドへとシフトしてきた。50分には矢田がミドルシュートを放つが高木が片手でかき出す。
大分は53分に三平を伊佐耕平にチェンジ。伊佐はそのままシャドーに入った。千葉のサイドからの攻撃が手ごたえを見せはじめると、64分には小島秀仁を下げて右サイドに茶島雄介を入れ、さらにサイドからの出入りを活性化させる。
それでも集中した大分の守備網は破れない。球際で相手を上回り、落ち着いてチャレンジ&カバーを繰り返しながら千葉の攻撃をしのぐ。69分、千葉は町田に代えてラリベイを投入。前線にパワーをかけてきた。
だが、80分には大分が追加点。岩田のプレスからこぼれたボールを松本怜が岩田へと送り、タッチライン際を駆け上がった岩田はそれをエリア内右で呼んだ伊佐へ。伊佐の低いクロスはファーに詰めた星に押し込まれ、敵地での4点目となった。
83分には藤本に代わり後藤優介がピッチへ。愛する生え抜きのひさびさの出場にスタンドが盛り上がる中、伊佐が頂点にスライドし後藤は國分とシャドーに並んだ。攻め込まれる場面もありながら相手のミスにも助けられ、90+1分には國分に代えて清本拓己を送り込む。
そのまま最後まで乗り切りたかったが、やはり千葉。リスタートから矢田のクロスに飛び込んだラリベイにネットを揺らされ4-2に。アディショナルタイムでの失点は残念だったが、それでも相手が千葉だけに、一層うれしい勝利だった。相手を見ながらの選手たちの状況判断の中で、事前に想定されたゲーム展開に添っての選手起用がマッチ。前節の反省を踏まえての集中したプレーが気迫を生み出し、流れを引き寄せた。
余談だが、試合前のピッチ内アップ時に、姫野宥弥が三平に「なんか相手GKやらかしそうですね、ワンチャンスあるかもですよ」と声をかけていたという。試合後、姫野にその予言の意図を問うと「なんとなくそう思っただけです。いや、俺がアップのとき転んだんで相手も何かあるかと思って」と意味不明な答えが返ってきたが、今季はなかなか出場機会に恵まれないながらも地道にトレーニングに励んできた姫野に、サッカーの神様が啓示でも下したのだろうか。なんにせよ陰ながらそういうラッキーボーイが出ていることも、ひさびさに先発した國分のそつないプレーとともに、チーム状態の良好さを象徴しているようだった。