セットプレーで3失点。相手に流れを明け渡し6試合ぶりの黒星
一度は逆転してリードを奪ったが、時間を追うごとに相手のストロングポイントを引き出させてしまった。崩されたわけではないが、相手の得意とするセットプレーから3失点。悔しい敗戦となった。
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前半は多くの決定機を築き2得点も
この敗戦の要因も悔しさも、自分たちのスタイルを全うできなかったことに尽きる。異なるスタイルをぶつけ合う大分と町田の上位対決は好ゲームになる期待をもって注目されたが、試合は時間経過とともに、町田のゲームへと傾いていった。
町田は出場停止や負傷で主力メンバー数名を欠き、選手を入れ替えて臨んだ。これが大分のスカウティングの裏をかくことにもつながったかもしれない。町田としても普段の戦術を遂行するにあたり、立ち上がりはややうまくいかない感触があったようだ。
そんな前半は激しいプレッシャーを受けながらもボールを動かして相手のスペースを突くことができていた。7分に馬場賢治、9分と10分に伊佐耕平が立て続けにシュートチャンスを迎えるが、好機を仕留めることはできない。
すると16分、町田が右CKからのサインプレー。キッカーの平戸太貴は意表を突いて密集の後ろでこぼれを狙う位置に立つロメロ・フランクへとグラウンダーを送り、ロメロが右足一閃。高木駿も懸命に手を伸ばして触りはしたが、弾かれたボールはクロスバーの内側に当たってゴールへと吸い込まれた。大分のゾーンディフェンスの隙を突いて緻密にデザインされた一連で、第11節、大分との前回対戦以来の先発となったロメロに、いきなり先制点を奪われた。
だが、前節も逆転勝利を収めたチームは慌てない。その後もボールを握り、19分に伊佐、21分に星雄次が放ったシュートは空砲に終わったが、26分、鈴木義宜からのパスを受けた福森直也が相手の最終ライン裏へと斜めに走って抜け出した小手川宏基にフィードを送ると、小手川は落ち着いて相手GKをかわし土岐田洸平の股を抜いてゴールへと流し込み同点に。
さらに32分にはまたも前線でボールを受けた小手川が一度は伊佐に預け、そのリターンをクロス。ゴール前に飛び込んできた馬場がワンタッチヒールシュートで流し込み逆転に成功する。
後半は町田の勢いに押されっぱなし
前半はほぼ大分ペースで進むが、町田のセットプレーは脅威だった。FKやCKでチャンスを築く町田は、43分、2点目を挙げる。アーリークロスに合わせたロメロのヘディングシュートは高木がパンチングでしのいだが、そのこぼれ球に詰めた中島裕希に右足でゴールへと押し込まれた。
前半終了間際という難しい時間帯でのスコアの動き。ハーフタイムを挟んで大分が仕切りなおせるか、後半から町田が勢いに乗るかという部分で、ペースを握ったのは町田のほうだった。
ハーフタイムを終えてピッチに出てくるのが遅かった町田だが、これまで同様に独自の戦術を貫く中で「後半はスタートから狙いどころの位置を変えながら戦った」(相馬直樹監督)。試合後の町田の選手たちの話によると、前半ほど前から奪いにいかないようにして少しラインを下げ、そこから前を向いて出ていくようにしたという。
ただ、町田が守備のやり方を変えたと言っても、戦術的に特別な策を施したわけではない。その中で大分は、アウェイでの上位対決のプレッシャーに追い込まれたのか、見る見る冷静さを失っていった。球際で競り負けセカンドボールを拾われたり、焦って逃げるような蹴り方をしてしまったりと、すっかり相手のペースにハマってしまう。それにより町田はさらに勢いづき、前向きにプレーする場面を増やした。
町田は58分、CKからのこぼれ球を鈴木孝司がシュート。一度はゴールと判定されたが、ハンドを取られノーゴールに。そんなことがあっても町田の勢いはひしゃげることなく、63分、エリア内で丸谷拓也を背負いながら土岐田のスローインを受けたロメロが反転シュートを決めて再びリードを奪う。
終盤は焦りから攻撃が単調に
スコアのよく動く展開に選手交代のタイミングも難しかったと思われるが、片野坂知宏監督は69分、伊佐と馬場を藤本憲明と三平和司へと二枚替え。より細やかに組み立てに参加する三平を投入することで、大味になっていた攻撃を改善する狙いもあった。
早速、70分には藤本がビッグチャンス。ファーストタッチのヘディングシュートは、しかし惜しくもポストを叩いた。そこからは追撃する大分が押し込むが、点を取りにいく焦りとカウンターへのリスクマネジメントとの間で、やや中途半端になっていたようにも見える。83分には星に代えて左WBに清本拓己を送り込み左サイドからの状況打開を狙ったが、いつものように数的優位を演出する細やかな連係による崩しではなく、清本の単騎突破に頼る形になってしまった。
攻撃が単調になると町田の堅守をこじ開けるのは難しい。最後は町田にゆっくりと時間を使われて、3-2のまま終戦した。
試合後コメントで挙げられた課題は、ほぼメンタル面に関するものだった。いろいろな要因が噛み合って平常心を失い、自分たちのスタイルを表現できなくなっていったことを、選手たちは口々に省みた。
ここからの5試合は、さらに心臓破りの坂だ。今節はつまずいたが、取り返す余地は十分にある。まずは次節・千葉戦。これも独特のアウェイの雰囲気満点となるフクアリで、今度こそ自分たちの築いてきたやり方で相手を上回りたい。