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試合レポート

小手川2発。個の力量高い京都を組織力で上回り5連勝

 

明治安田J2第36節H京都戦。強烈な個を擁する相手にいつもどおりの組織的戦いで挑み、勝利した。2得点を挙げてマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのは、普段は黒子に徹している小手川宏基だった。

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先制点を奪われるも7分後に追いつく

 
19位とは言えど、個々のプレーヤーの力量の高い京都。2連勝して残留争いから抜け出した感もあり、勢いに乗っている手強い相手だ。予想どおり、田中マルクス闘莉王とカイオのツインタワーを前線に並べた4-4-2でスタート。こちらは前節の水戸戦と同じシステムだ。
 
予想と少し違っていたのは、京都がアグレッシブにハイプレスをかけてきたこと。ツインタワーはプレスの迫力も並外れておりメリハリがあって効果的だ。ツインタワーが走れないときには両SHが制限にきた。ダブルボランチ、特に重廣卓也の積極的な寄せも大分のプレー精度を下げさせた。さらに、ここ最近の大分のストロングポイントである右サイドもケア。仙頭啓矢と本多勇喜が松本怜を軸とした連係を阻んだ。
 
攻撃がうまくいかず、相手にボールを持たれる場面が続く。失点はそんな開始早々の6分だった。仙頭のクロスのクリアボールがカイオの元へとこぼれ、左足のダイレクトボレーで見事に撃ち抜かれた。
 
だが、失点にも慌てる様子を見せないチーム。9分には三平和司が激しいドリブル突破でエリア内まで進入した。シュートは清水圭介のファインセーブに阻まれたが、味方に勇気をもたらすプレーだった。
 
13分には早くも同点に追いつく。伊佐耕平の激しいプレスが誘った、清水のパスが本多のかかとに当たるミス。それを拾った小手川宏基が落ち着いて無人のゴールへと蹴り込んで、試合を振り出しに戻した。
 

小手川の2点目で逆転に成功

 
相手のプレスに苦しんだのも束の間で、チームは間もなく落ち着いてその背後のスペースを使いボールを動かせるようになる。左右に揺さぶりをかけながら攻略し、主導権を握って試合を運ぶが、相手には一発で形勢を逆転させるタレントが揃っている。
 
試合前、片野坂知宏監督は「こちらが主導権を握ることで相手に攻撃権を与えないようにしたい」と話していた。ロストした瞬間、相手はツインタワーに集めてパワーにものを言わせてくる。ボールを握りながらもカウンターへのリスクマネジメントを念頭に戦わなくてはならないという難しいゲームで、守備への切り替えにはいつも以上に気を使う必要があった。鈴木義宜を中心とした守備陣が体を張り、丸谷拓也と前田凌佑のボランチもセカンドボール対応に奔走しながら攻守のバランスを崩さずに動いた。
 
同点になった後、京都ベンチからはSHがスライドして5バックとなり、大分のサイド攻撃に対応するよう指示が出ていたようだが、やや中途半端な印象に。大分が好機を築きながらも最後の精度を欠いたり京都守備陣に阻まれたりして1-1のまま折り返した。
 
53分には石櫃洋祐のFKにペナルティーエリア中央で合わせた闘莉王がヘディングシュートを放つが、高木駿が至近距離でパンチングクリア。攻撃に迫力を増したい京都は60分に仙頭をジュニーニョに代えて3バックに変更した。小屋松知哉を左サイドに回し、守備時には最終ラインに落ちて5バックでサイドをケアさせる算段のようだ。
 
だが、追加点を奪ったのは大分だった。66分、岩田智輝からのパスを受けた伊佐がワンタッチで前に送ると、走り込んできた小手川が左足でシュートを突き刺し逆転に成功した。
 

猛追をかわしながら追加点を狙う采配

 
リードしたらしたで相手の追撃が恐ろしい。京都ベンチには攻撃陣としてレンゾ・ロペスと岩崎悠人が控えている。いざとなったらDFながら191cmの増川隆洋を前線に入れて力でねじ伏せてくる可能性もある。30分近い時間を残して、両軍がどう試合を運ぶかが注目された。
 
78分、京都が小屋松を下げてレンゾ・ロペスを投入。いよいよ到来した脅威のトリプルタワーに備え、片野坂監督は松本を下げて岩田を一列上げ、右CBに長身の岡野洵を配置した。すると80分、今度はジュロヴスキー監督が庄司悦大に代えて岩崎を送り込む。トリプルタワーを解体して闘莉王をボランチに下げ、そこからの配球を託した。岩崎は左サイドからスピードと勢いを生かして攻め、京都の攻撃のテイストを変化させる。
 
片野坂監督は岩田に、岩崎の対応にあたる岡野のサポートを指示するとともに、三平を藤本憲明に代えてカウンターで京都の攻撃機会を削る作戦に出た。試合後に「守りきるわけではないのだが、相手の良さを粘り強く消して守りながら追加点を狙うというようなプランで行くようにした」と話したのはこういう細やかなバランス感覚についてだ。
 
終盤、京都がセットプレーでチャンスを量産する中で、88分、星雄次に代えて那須川将大。空中戦に強い177cmはカイオをマンマークしてCKの守備を乗り切ると、その後も守備面で貢献。4分のアディショナルタイムも逃げ切りに成功して、5連勝を遂げた。
 
これにより得失点差で松本を上回り、暫定首位に浮上。ここからも厳しい対戦が続くため、手放しで喜べる要素はまだ手に入れていない。ただ、京都の強烈な個を上回った組織力への手応えは本物だ。いつもは目立たないところで地道に貢献している小手川が、ストロングポイントを押さえられたときに存在感をあらわにしたことが、その象徴と言えるだろう。
 

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