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試合レポート

90分間のマネジメントの妙。前半を伏線にして後半、流れを引き寄せた

 

今季最後のナイトゲームとなった明治安田J2第34節A山口戦。西日本開催の最後のアウェイゲームで3連休初日ということもあり、維新みらいふスタジアムには約2000名ものトリニータサポーターが駆けつけ、会心の逆転劇を見届けた。

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システマティックな変態戦術でスタート

 
13戦勝ちなしと不調に喘ぐ山口だが、霜田正浩監督ならではの攻守にアグレッシブなスタイルは潰えていない。片野坂知宏監督との智将対決らしく、細やかな駆け引きの絶えない見ごたえのある一戦となった。
 
さすが攻撃的なチーム同士。キックオフ直後から互いに狙いの形を出してビッグチャンスを作る。3分に高木駿からのフィードに抜け出した伊佐耕平がシュートを放てば、1分後にはジュリーニョのクロスを逆サイドから高井和馬がボレー。山口は5分にも高井のシュートがわずかに枠をとらえきれなかったところへオナイウ阿道が詰めるがいずれも得点ならず。6分には三平和司のグラウンダークロスに宮阪政樹が合わせるが枠の上。序盤から激しくボールが行き交い、立て続けに築きあう見せ場に、オレンジと青に染まるスタンドのボルテージはいやが上にも高まった。
 
失点を減らそうとここ最近はダブルボランチにトップ下の形を取っていた山口だが、今節はアンカーと2枚のインサイドハーフに戻して臨んだ。大分は3-5-2と3-4-2-1を行き来する可変システム。その流れでブロックを構えるときにも5-4-1や5-3-2を臨機応変に使い分けた。前節の讃岐戦も少し似たような傾向はあったのだが、前節はポジショナルな意図の下に動いており、今節は攻/守や相手の状況により明確にシステマティックな規律が設けられていたようだ。
 

ミスからの失点にも動じず狙いを貫く

 
しばらくは山口の激しいプレスをかわしながら間を使ってボールを動かしていたが、次第にそのプレスにハマりそうな匂いが立ち込めた29分。ワシントンと三幸秀稔に激しくプレスをかけられて三平和司から宮阪政樹、さらに福森直也へとバックパスしたところで、横パスをさらわれてオナイウ阿道にシュートを突き刺された。山口にとっては4試合ぶりの得点で、大分にとっては3試合ぶりに先制点を献上した形だ。
 
だが、ミスからの失点にもチームは焦らなかった。試合開始から続けていたビルドアップからの相手の背後を突く戦法を辛抱強く貫く。
 
ハーフタイムを挟んで、後半頭からは宮阪に代えて清本拓己を投入。小手川宏基と丸谷拓也のダブルボランチ固定の3-4-2-1へと変更したが、前線は1トップに三平、シャドーに伊佐と清本という並び。ワシントンに潰されて起点を作りづらかった前半の内容を踏まえ、相手との駆け引きやボールの収まりにより長けた三平を頂点にしてスペースを作らせ、そこを勢いのある伊佐と清本が突くという狙いだった。
 
この施策がハマり、59分に同点弾が生まれる。伊佐がワシントンに競り勝ち、カウンターから中央へとボールを送ると、清本のシュートは相手にブロックされたが、そのこぼれ球をゴール前に詰めていた星雄次が逆サイドへ。山口の守護神・吉満大介は星のシュートに備えて飛び込んでおり、右から走り込んできた松本怜は誰にも阻まれることなく落ち着いてゴールへとボールを押し込んだ。あとで聞けば、星と松本の両WBが攻撃時に中へ入っていこうという話も、ハーフタイムにしていたという。
 

前半の辛抱が実っての後半の畳み掛け

 
前半から辛抱強くボールを動かし、プレスに来る相手を走らせ続けたおかげで、その頃から山口の運動量ががっくりと落ちた。布陣が伸びてスペースが大きくなってきた64分、片野坂監督は三平を下げ1トップに藤本憲明を入れた。66分には山口も大崎淳矢に代えて高木大輔を送り込むが、74分、大分が追加点。シャドーに降りてから何度も起点を作っていた伊佐からの展開を松本が受け、相手をかわしてゴール前へと送ったボールを、藤本がダイレクトで流し込んだ。
 
山口は74分に高井和馬に代えて岸田和人を入れるが、75分、大分が3点目。自陣深くから前線のスペースへと送った松本のフィードに抜け出した藤本が、まさにペナルティエリアにさしかかった地点で後ろからのボールを見事にトラップし、出てきた吉満を冷静にかわしてゴールを奪った。
 
追う山口はオナイウ、高木大輔、ジュリーニョ、岸田がゴール前で激しく戦い、迫力ある攻撃を繰り出すが、果敢に対応する高木駿を中心に大分守備陣も集中してピンチをしのぎ、ゴールを割らせない。80分、片野坂監督は疲労した伊佐に代えて岡野洵を投入。右CBに高さのある岡野を入れて山口のロングボールに対応するとともに、岩田智輝をシャドーに上げて前線の勢いを保った。山口は88分にワシントンが痛み、3枚目のカードをヘナンとの交代に使わねばならない無念の状態に。5分のアディショナルタイムまで互いに攻め合ったが、試合は1-3、アウェイ大分の勝利で終了した。
 
90分間のマネジメントが見事にハマって勝ち取った+3。狙いを遂行しての3連勝という結果に手ごたえも感じられる。だが試合後、監督も選手も表情は引き締まっていた。混戦の今季J2、結末はまだ全く見えない。
 

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