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試合レポート

集中を切らさずバランスを取り続け、3得点を挙げて4戦ぶりの白星

 

前節の福岡戦に続くバトルオブ九州は、今節も雨。前線の顔ぶれを変えてきた熊本に対し、状況を見ながら細やかに戦って、4試合ぶりの得点を挙げ流れを引き寄せると、3-1で勝利した。

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機動力で攻略しにきた熊本

 
安柄俊を出場停止で欠く熊本がどういうメンバー、どういうシステムでこの試合に臨むかが、ひとつのポイントだった。3-4-2-1と3-5-2を併用し、試合中にシステム変更することも多い熊本だが、3-4-2-1ならいつもは安柄俊が務める1トップの位置には皆川佑介が入るだろうというのが、大方の予想だった。
 
だが、3-4-2-1の前線に並んだのは1トップに伊東俊、シャドーに八久保颯と坂本広大。小柄でキレのある機動力自慢の3枚で、守備ではハイプレスをかけ、攻撃ではラインの裏を狙ってきた。
 
相手の出方を幾通りも予想して複数オプションを準備し、今節は3-4-2-1でスタートした片野坂知宏監督だが、熊本のメンバーを見て即座に選手たちに対応を指示。熊本攻略のために準備したことは、相手がその狙いにあまり乗ってこなかったため不発気味になってしまったが、すぐに次なるプランへと切り替えた。
 
勢いよくハイプレスをかけてくる熊本を、前半はうまく剥がしてチャンス構築ができていた。ボールを動かしてゴールへと迫り、セットプレーの好機も迎えたが、得点には至らない。
 
それでもそれを続けていたことが、先制点につながった。31分、エリア内で縦パスを受けた伊佐耕平が相手をかわしながら右に顔を出した三平和司へとパス。三平のダイレクトの左足シュートが小谷祐喜に当たり、PK判定となった。蹴るのは先週、第一子が生まれたばかりの三平。本人のゴールでゆりかごダンスをしたいというチームの思いを背負ったキックはゴール右隅に決まり、選手たちは総出で4試合ぶりの得点と三平を祝った。
 
互いにポジションを取りあい、隙を突く。熊本の前線にボールを入れさせないよう三平と清本拓己の2シャドーが相手ボランチのパスコースをこまめに切るなど、守備の意識も高く保たれていた。
 

川西の投入で主導権を奪い返す

 
前半終了間際に相手クロスをヘディングでクリアした岩田智輝が、オーバーヘッドシュートを狙った八久保のスパイクを顔面に受けてしまうアクシデント。後半頭からは岡野洵が右CBを務めることになった。
 
攻撃の要である田中達也を松本怜に抑えられていた熊本は、後半から田中と高瀬優孝との左右WBを入れ替える。48分には田中の仕掛けを起点に高瀬がゴール前に入ってきたり、50分には田中のクロスをゴール前で八久保に競られたりと、立ち上がりは熊本が勢いを醸し出した。
 
押し込まれる時間帯が出てくると、61分、片野坂監督は伊佐に代えて川西翔太を投入。三平が1トップ、その下に川西が清本と並んだ。だが63分、エリア内で福森が八久保を倒したとのPK判定。これを八久保に沈められ、同点に追いつかれる。
 
勢いづいた熊本は68分、疲労した高瀬に代えて黒木晃平。だが、「タメを作って相手を引かせようと考えた」という川西が中盤に下がってボールを落ち着かせるようになると、主導権はふたたび徐々にこちらへと戻ってきた。73分、清本のスルーパスに抜け出した小手川宏基が放ったシュートは、熊本の守護神・畑実のファインセーブに阻まれたが、流れは着実に大分へと傾いていた。
 
そんな79分、追加点が生まれる。岡野が右サイドからクロスを送り、畑がパンチングクリアしたこぼれ球が丸谷拓也のもとへ。カウンターを狙って前がかりになっていた相手守備陣の頭上を越える右足ループシュートは、枠のぎりぎり内側を通過してネットを揺らした。
 

チームの地力と成熟を感じた一戦

 
相手CBの疲労を見逃さなかった指揮官は80分、三平に代えて藤本憲明を送り込む。早速その直後、カウンターのチャンスから松本のスルーパスに抜け出した藤本が畑をかわして駄目押しの3点目を決めた。
 
81分、熊本は上里一将に代えて水野晃樹を入れ、水野と黒木のコンビネーションで大分の右サイド攻略を狙ったと思われる。アディショナルタイムには園田拓也にミドルシュートを打たれるが、わずかに枠をとらえ損ねた弾道はサイドネットを揺らす。熊本もあきらめず追撃してきたが、チームは最後まで集中を切らさずに守りきり、4戦ぶりの白星を飾った。
 
5月以来の先発となった清本や、自身の特長を生かして試合の流れを変えた川西ら、ここ最近は試合に絡んでいなかった戦力が躍動したこと、また移籍加入後初めて公式戦で45分間プレーした岡野が攻撃にも絡んだことなど、収穫の多い試合でもあった。
 
そして、賢く守備を効率化し続けた三平や、バランスを取りながらそのときどきで求められる役割を的確にこなしていた小手川、相手攻撃陣の機動力にも振り回されることなく集中していた守備陣ら、それぞれが状況に応じて組織でのタスクをこなし、細やかに駆け引きしながら流れを引き寄せていったことは、このチームの地力と成熟度を体現していたようだった。
 
シーズンは残り10試合。一喜一憂せずコツコツと戦い続けるチームは、引き続き上を目指していく。