勝ちにいった結果、終了間際にカウンターで失点。痛恨の黒星
試合開始前、大分ゴール裏スタンドには美しいコレオグラフィーが描かれた。真っ向からぶつかり合った白熱の九州ダービー。押される展開から修正をほどこしてペースをつかんだが、終盤、前がかりになって点を取りにいったところをカウンターで沈められ敗れた。
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福岡はハイプレスをかけてきた
ここ最近、5枚のブロックでスペースを消す相手に苦慮している中で、今節の福岡にもホームでの前回対戦同様、それをやられるのではないかと警戒していた。だが、蓋を開けてみると福岡は、現在の好調の要因となっている4-4-2システムで、2トップのドゥドゥと石津大介をスイッチに、激しくプレッシャーをかけてきた。
ひさしぶりのハイプレスを受けながら、こちらも相手の間隙を使ってボールを動かした。9分に縦パスをカットされドゥドゥにシュートを打たれたが、枠の左に外れて命拾い。それでも心折れることなくチームは自分たちのスタイルへの積極性を失うことなく、笛が多めのレフェリングの下、激しく球際でぶつかり合うダービーらしい真っ向勝負の試合となる。
攻守に技術が高く力強い福岡に対し、徐々に中盤が押し下げられた。三平和司と伊佐耕平の2トップが攻め残ってチャンスを狙ったが、クリアボールを相手の中盤に拾われて形成悪化。それを見て片野坂知宏監督は前半のうちに修正を図る。トリプルボランチの一角の小手川宏基を一列上げて三平とシャドーに並べ、丸谷拓也と前田凌佑がダブルボランチを組む3-4-2-1にシステムを変更した。
小手川の絶妙なポジショニングにより前線でボールを引き出し、松本怜や岩田智輝の仕事が目立つようになると、細やかにポジションを取りながらボールを運ぶ回数も増えた。だが、クロスやシュートは跳ね返され、エリア内でも潰される。前半はほぼ福岡ペースで、40分には輪湖直樹のシュートがクロスバーを叩くなどヒヤリとした場面もあったが、その直後には高木駿がドゥドゥのシュートを至近距離で阻止するなどもして、無失点でしのぎ切った。
修正が成功して後半は大分ペースに
ハーフタイムに3-4-2-1での狙いどころを整理しなおした後半は、さらに右サイドからチャンスを作る回数が増えた。クロスやシュートの好機も立て続けに迎えたが、わずかなタイミングのズレや相手の好守により得点には至らない。61分にはエリア内で伊佐の折り返しを受けた三平が相手をかわそうとしたが、倒されてシュートは打てず。
大分のチャンスが増えると福岡は、66分に松田力を下げ、レオミネイロを投入。さらに守備時に右SHのユ・インスが最終ラインまで下がって全体がスライドする形で5バックとなり対応する。ただ、これによって福岡の選手たちの意識が守備寄りになったのか、球際への寄せが影を潜め、大分の攻勢が強まっていった。
73分に福岡が石津に代えて山瀬功治をピッチに送り込むと、その1分後に大分は三平と伊佐を清本拓己と藤本憲明に二枚替え。77分には清本の縦パスに藤本が抜け出してシュートチャンスを迎えるが、飛び出してきた守護神・圍謙太朗に止められる。
81分に福岡は枝村匠馬に代えて城後寿。山瀬をボランチに下げ、城後は最前線に入った。ドゥドゥ、レオミネイロと豪華な攻撃陣を並べ、強度を増す。
片野坂監督は83分、小手川に代えて後藤優介で終盤の得点を狙いにいった。早速85分、右サイドで高くで前田が球際で競り勝ったボールを松本が中へと送り、それを受けて持ち込んだ後藤が左足シュート。巻いた弾道は枠をとらえていたが、惜しくも圍の横っ飛びファインセーブに掻き出された。
勝点3を取りにいった結果の敗戦
勢いづく大分は松本のクロス、後藤のコーナーキック、星雄次のヘディングシュートと立て続けにチャンスを量産する。90分には藤本のポストプレーを星がつなぎ清本がシュートを放つが、枠の左にそれた。91分には前田の縦パスが、わずかに後藤に合わない。
ここに来て勝点3を取れそうな雰囲気になっていたのも、結果的に不運といえば不運だったのかもしれない。90+3分、猛攻の裏を突かれた。縦パスをカットされてのカウンター。鈴木惇がボールを託した山瀬はドリブルで攻め上がりながら選択肢を探し、左サイドのレオミネイロへ。岩田をかわし狙いすまして放った鋭い右足一閃は、高木の手の届かないゴール右隅へと突き刺さった。
「選手たちに勝点3を取りにいかせずぎた」と、片野坂監督は試合後会見で、終盤の攻撃場面について反省した。この試合でいつも以上の気迫と集中力を見せていた前田は「自分とマルくん（丸谷）が両方とも上がってしまっていた。前節負けていたので勝利がほしかった」とうなだれた。敵地へと詰め掛けた大分サポーターの作り出してくれた雰囲気に人一倍奮起していただけに、悔しさもひとしおだった。
練習後に「これからは負けない選択も大事」と話していた松本は「あの展開で勝点1で満足するのはちょっと物足りないが、そこを割り切ってもうちょっとはっきりできていれば、あの失点は防げたのかもしれない。結果論だが」と話した。残り試合が少なくなると、勝点3を取りにいくか1でもよしとするかの判断は、より難しくなってくる。チャレンジした結果、ゼロに終わる“賭け”の局面にぶち当たることもあるだろう。ここからは一層、チームで意思疎通して戦うことが求められる。
