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試合レポート

辛抱強い攻略が実り、終盤ついに牙城を突き崩す。全員で勝ち取った3連勝

 

スペースを消して守る相手を辛抱強く攻略し、一度は追いつかれたものの徐々に流れを引き寄せながら、終盤、ついに相手守備の決壊を招いた。J2通算200勝目で今季2度目の3連勝には、ほかにもいろいろな“オマケ”がついてきた。

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辛抱強く攻略して53分に先制点

 
リーグ最多得点を誇る大分の矛が、リーグ最少失点の岡山の盾を崩しにかかった。互いに3バックシステム同士コンパクトに戦う中で、両軍ともにミスを生じたり潰しあったりと、立ち上がりは硬い展開。スペースを消して守る岡山に対し、ボールを握る大分は、攻め急ぐことなく揺さぶりをかけながら辛抱強く攻略に取り組んだ。
 
岡山は三村真が練習中の負傷で帯同せず、椋原健太が左WBにまわり、右WBには澤口雅彦。奇しくも第3節のアウェイでの対戦と同じ事態が起きていたのだが、大分としてはそれほど影響なく対応できたようだ。
 
我慢比べの展開の中、岡山は立て続けにアクシデントに見舞われる。22分、スピードと勢いで脅威となっていたジョン・チュングンが負傷交代。齊藤和樹が入り、早々にカードを使う。48分には後藤圭太も痛みを訴え、澤口を一列下げて右WBに下口稚葉を入れて対応したが、これにより残る交代カードは1枚になってしまった。
 
47分、小手川宏基のミドルシュートはポストに当たり、51分、伊佐のシュートは金山隼樹のファインセーブに阻まれる。そこからのCKのこぼれ球を打ち込んだ岩田智輝のミドルシュートはクロスバー。
 
押し込みながらもどかしい展開の中、53分、ようやく先制点が生まれた。前田凌佑からのパスを受けた那須川将大の速いグラウンダークロスを伊佐耕平がスルーして三平和司が押し込んだ。ハーフタイムに片野坂知宏監督から指示があったとおりの形だ。三平にとっては3戦連続得点で自身の通算50ゴールでもあった。
 

ギアを上げる交代策が見事に奏功

 
追う立場となった岡山は62分、赤嶺真吾を仲間隼斗にスイッチして最後のカードを切る。大分も64分に三平を下げ馬場賢治を投入した。勢いに乗るチームは岡山を押し込むが、好機は築きながらなかなか追加点を挙げられない。73分には伊佐が時間を作り小手川がいい形からシュートを放ったが、わずかに枠の左にそれた。直後の74分、下口のクロスを齊藤が頭で折り返し、それを仲間が頭で押し込まれる。
 
決定機を逃すうちに同点に追いつかれ、嫌なムードが漂った。それでも辛抱強く攻め続け、守り続けての83分。押し込み続ける状況の中で、片野坂監督は伊佐を藤本憲明に、小手川を後藤優介に交代。馬場を中盤に下げ、藤本と後藤の2トップに変更した。
 
直後にこれが大当たりとなる。85分、右サイドでロングフィードに抜け出した藤本が粘って落とし、馬場が相手の間隙を縫う絶妙な高さのクロス。これに反応した後藤がアクロバティックなボレーシュートを放ち、ネットを揺らした。こちらに傾きそうでなかなか傾かない流れを一気に引き寄せる、値千金の追加点だった。負傷明け以降もいまひとつ調子の上がらなかった後藤の、復活の狼煙のような一撃だった。
 
前がかりになった岡山を尻目に、大分の攻撃は続く。89分には丸谷拓也のクロスに藤本がかすかに触り、後藤が左足で3点目。90+1分には福森直也の縦パスを藤本が前に送り、抜け出した馬場が独走してトドメの4点目を奪った。宮阪政樹のためにゆりかごダンスも披露でき、“OFUROの日”で1万1000人を集めた大銀ドームは最高潮の盛り上がりを見せた。
 

全員が機能して描き出した好ゲーム

 
終わってみれば攻守に距離感よく主導権を握った大分が4-1で勝利。序盤の息詰まる時間帯から全員がそれぞれの役割を遂行しながら辛抱強く攻め続けたことが、徐々に流れを引き寄せ、終盤の相手の決壊を誘った。
 
先発した選手と交代で出た選手、指揮官の交代のチョイスとタイミングが見事に噛み合ったゲーム。片野坂監督は試合後、「11人だけでは絶対に勝てない。これからも全員でいい準備をしてこれを続けていきたい」と手応えを口にし、うれしい意味で今後の戦力選考に頭を悩ませることになると喜んだ。
 
堅守の岡山から奪った4得点。1失点は残念だったが、チーム内の競争も高まり、組織は良好な状態で次の一戦へと向かうことになる。