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試合レポート

好機は量産するも、前後半で異なる守備の栃木をこじ開けられず

 

前半は構える相手を辛抱強く攻略しようと試み、後半は前から奪いに来た相手に耐えながらまたチャンスを築いた。好機は幾度となく迎えたが、1点が遠かった。

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縦パスは入るがその先に課題

 
試合後、片野坂知宏監督は憔悴した表情で「崩す形や準備してきたことがなかなか出せなかった」とうなだれた。前線のコンビネーションで崩すのが片野坂サッカーの目指すところ。ただ、堅守を武器とする栃木を相手に、選手たちには「そうそうきれいには崩せない。泥臭くてもいいから1点取って勝とう」と話していたという。
 
立ち上がりにハイプレスをかけてきた栃木は、2分に大黒将志が鈴木義宜の股を抜くシュートを放ったのを皮切りに、得意のロングスローで大分を押し込んだが、それがクリアされ攻め返されそうになると、まもなくブロックを構えて自陣に引きこもった。
 
大分はダブルボランチと最終ラインでボールを動かしながらじっくりとそれを攻略しにかかる。サイドから仕掛けるスペースは乏しかったが、5試合ぶりに復帰した後藤優介と、出場を重ねて徐々にフィットしてきた國分伸太郎の2シャドーがバイタルエリアでボールを受けることはできていた。
 
ただ、そこから先の崩しに物足りなさがあった。11分、鈴木のフィードを藤本が頭で落とし走り込んできた國分がシュートを放つが藤本に当ててしまう。國分はもう一度シュートするが今度は相手CBにブロックされた。そのこぼれ球を今度は藤本が狙ったが、枠の左に逸れた。
 
29分には松本怜が右サイドをえぐり、ニアに速いクロスを入れるが藤本のヒールシュートは竹重安希彦に阻まれ岡崎建哉にかき出される。再三のクロスやCKも相手にクリアされ、43分には後藤が前を向いてシュートを放ったが、枠を大きく越えてしまった。攻めてこない相手にいいように攻めさせられた形で、スコアレスのまま折り返す。
 

後半は前から来た相手に押し込まれる

 
栃木は後半頭から、久富良輔を下げ夛田凌輔を投入。ラインを全体的に上げ、守備の積極性を増して前から奪いにくる守備に切り替えた。特に大分の攻撃のスイッチとなるシャドーには強く当たりにきた。
 
さらに前半よりもヘニキが高い位置を取るようになったことで、その強さに押される形で押し込まれていく。前半の攻め疲れで運動量やスピードを落とした大分は、セカンドボールへの反応も遅くなり、栃木に主導権を明け渡した。
 
65分にはセカンドボールを拾った大黒にまたもゴールを狙われるがサイドネットで命拾い。度重なるロングスローやCKでのピンチもゴール前で跳ね返しながらチャンスを狙うが、クロスの精度を欠いたり栃木の集中した守備に阻まれたりして、なかなか得点の匂いがしない。
 
80分には川西翔太の展開から松本がマイナスのクロスを送るビッグチャンスを迎えたが、後藤のシュートは枠をとらえきれなかった。
 
片野坂監督は81分、後藤を伊佐耕平、星雄次を岩田智輝に二枚替え。84分には栃木が浜下瑛を西谷優希に代えて鮮度を保った。87分、大分は負傷した國分に代えて清本拓己。
 
互いにカードを切りながらアディショナルタイム3分まで攻めあったが、ついにネットは揺れないまま、スコアレスドローで長いホイッスルを聞くことになった。
 

まずはアグレッシブさを取り戻したい

 
川西を軸とした組み立てにより、前半は相手のブロックの中に何度も縦パスを入れることができたが、そこからの判断やクオリティーがまだまだ足りないと、指揮官は悔しそうだった。
 
さらに「連敗を止めたい、失点したくないという思いが強く出てしまったのかリスクを負うことを避けていた」とも分析した。相手が引いていた前半は押し込む時間帯もあったが、だからこそもっと高い位置で数的優位を作る意識を見せてほしかったのかもしれない。相手が前に出てきた後半はなおさら、テンポよくボールを動かして相手の背後を突いていきたかったのだと思われる。好調時には出来ていたことが、連敗中には往々にして上手く出来なくなってしまう。
 
だが、相手のカウンターへのリスクマネジメントも出来ていたし、バランスを崩すこともなく、無失点に抑えて連敗をストップし、勝点1を積み重ねることはできた。
 
中3日で愛媛戦がやってくる。指揮官は「いまは選手たちに自信を取り戻させなくては」と、チームに本来のアグレッシブさを回復させたいと語った。