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試合レポート

狙いと施策の噛み合わせが甲府側へ転んだ。リベンジならず後半戦は黒星発進

 

アウェイでの借りを返そうと誓って臨んだ明治安田J2第22節H甲府戦。狙いを持って試合に入ったが、相手は相手で策を施していた。そのぶつかり合いの中で、戦況は甲府側に転んでしまった。

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甲府はゼロトップ。戦術的噛み合わせの不運

 
第16節の敗戦の雪辱を誓った今節、片野坂知宏監督は緻密に対甲府戦術を練った。ビルドアップの過程を引っ掛けられてショートカウンターを受けた前回対戦の教訓を生かし、立ち上がりは早めに長いボールを前線に送ることを狙う。その狙いを遂行するにあたり、ボランチに13試合ぶりの出場となる姫野宥弥を起用。姫野の機動力を生かし、中盤からのスペースへの飛び出しや前線への関わりを託しての抜擢だった。その相方には、バランスを取ることに長けた小手川宏基。出場停止で不在の丸谷拓也が務めていた右CBには、やはり攻撃参加に期待して岸田翔平を配置した。
 
負傷者続出と移籍により攻撃陣の選手起用が読めなかった甲府。スタメン発表時にメンバー表を見ても予想が難しかったが、蓋を開けてみると堀米勇輝を1トップに、その下に佐藤和弘と曽根田穣を並べてきた。この機動力満点のゼロトップ状態が、前述の策を取った大分にとっては不運な、そして甲府にとっては予想以上に効果的な展開を招く。
 
攻撃時に姫野はミッションどおり前へ出ていこうと狙うのだが、フィードや縦パスが相手にカットされてフィニッシュまで持ち込むことができずに攻守が切り替わると、その瞬間、バイタルエリアで相手に自由を与えることになってしまう。甲府の1トップ堀米がそのスペースに下りて中盤で数的優位を作ると、周囲を使って攻め、見る見る大分を押し込んだ。小手川は広大なスペースのケアに追われることになる。堀米が下がるため大分の最終ラインは枚数が余りがちなのだが、後手を踏んで相手のスピードに対応できず、前へと出ていくことができない。フィールドで後手に回ったぶんのしわ寄せが高木駿にまで及び、攻守に苦しまぎれのプレーを強いられることが増えた。
 
20分、エリア内でボールを受けた堀米に左足で先制点を奪われると、24分には似たような形から曽根田にもゴールを割られる。2点ビハインドとなり、指揮官は前半のうちに、準備してきたプランを変更せざるを得なくなった。42分、姫野に代えて川西翔太を投入する。
 

あきらめず攻め、藤本のPKにより2得点

 
それで前半を乗り切ると、後半頭からは星雄次を下げて伊佐耕平を投入し、4-4-2へと形を変える。右SBに岸田、左SBに松本怜。右SHに國分伸太郎、左SHに馬場賢治として、ゼロトップの相手が中盤で数的優位を作る状況を、システム変更によって修正した形だ。
 
これは奏功し、チャンスが生まれはじめる。53分、馬場の得意の縦パスをペナルティーエリア手前で藤本憲明が競り、そのこぼれ球を伊佐が力強く収めると勢いあるシュート。迫力あふれる攻撃だったが、甲府の守護神・河田晃兵が体を張ってボールを抱え込んだ。
 
59分、追撃する大分の背後へとフィードを送った甲府に3点目を奪われる。バイタルエリアでボールを収めた堀米が高木の頭上を狙ったループシュートはクロスバーに阻まれたが、その跳ね返りを詰めていた佐藤に頭で押し込まれ、リードを広げられた。
 
あきらめずに追う75分、松本のフィードに抜け出した藤本がエリア内で倒されてPKを獲得。「いまだかつてPKを外したことがない」という藤本が自ら落ち着いて沈め1点を返すと、反撃のムードは高まった。77分、片野坂監督は馬場に代えて三平和司を2トップの一角に投入し、藤本を左SHに回して追撃の勢いを強める。だが84分、自陣ペナルティーエリア手前でバックパスを受けた小手川が佐藤の寄せにミスを誘われ、拾った佐藤に決められて再び3点差とされた。
 
攻める大分は、アディショナルタイムにまたもPKを獲得する。鈴木義宜の浮き球パスを伊佐が落とし、國分からつないで三平が出したスルーパスに抜け出した藤本が相手に倒された。これを決めて90+4分、藤本の2点目。だが、追撃はこれでタイムアップとなった。
 

対応力を身につけ、30人全員の奮起を

 
前回対戦の雪辱を誓いながら、現象としては似たような形での失点により、またも甲府に屈した。
 
甲府の人選や出方がわからない中で準備した戦術が、相手戦術との相性においてよくない方へと転んだ不運も大きい。17分に鈴木、岸田、國分、松本、藤本とつないで姫野がシュートを放ったシーンのように、ミスなく攻撃を成立させられれば当初の狙いでチャンスを作れたはずだが、残念ながら相手の勢いに押されたり前へと急ぐ気持ちが焦りを生んだりしたのか、プレー精度が不足する場面が目立った。
 
予期せぬ相手のゼロトップ攻撃との兼ね合いもあり、準備してきた戦術がうまくいかないことで戸惑いも生じていたのではないか。早い段階のうちにピッチで修正することができなかったのが悔やまれる。
 
ビハインドになってからは追撃の思いが強くなり返り討ちにあった。川西は試合後、「みんなの矢印がゴールに向かいすぎた。ウラに抜けてほしいという矢印は感じたけど,、その中でギャップを使う選手もいなくてはならない」と振り返った。
 
ここ2試合で7失点。試合展開によるところも大きいとはいえ、片野坂監督は修正の必要性を強く受け止めている様子だった。
 
後半戦スタートは悔しい黒星となったが、チームはここからどう成長していくのか。「怪我人が出たりして、チームの総合力が徐々に試される状況になっていると思う」と松本。ここからの明暗は、30人全員の奮起に懸かっている。