メンバーを入れ替えて臨んだ一戦。現在地を見極め、引き続き積み上げを
6日の天皇杯2回戦・山口戦。メンバーを大幅に入れ替えて臨んだ一戦は、チームの現在地を浮き彫りにする展開となった。この課題を収穫に変えて今後の戦いにつなげていかなくてはならない。
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山口はリーグ戦とほぼ同じメンバー
チームの底上げも兼ねてこちらがメンバーを大幅に入れ替えたのとは対照的に、山口はリーグ戦に主力として出場している選手を多くピッチに並べた。システムも、リーグ戦とは異なる3-5-2。ただし、先日のトレーニングマッチで対戦した際にはそのフォーメーションを採用しており、片野坂知宏監督もメンバー発表を受けた時点で予想できたようだ。
通常どおり、山口は立ち上がりから激しくハイプレスをかけてきた。選手たちは甲府戦の教訓を生かし「はっきりするところははっきりしよう」と話して立ち上がりはシンプルに相手の背後を狙ったが、時間が経過しても、戦い方を変えることが出来なかった。
トレーニングマッチでは一緒にプレーしているメンバーでも、やはり公式戦となると雰囲気が違う。今季初のナイトゲームであることや、試合前まで降り続いた雨を含んだピッチであったことなども、少なからず影響していたかもしれない。時間とともに、公式戦の経験値が高く組織としても成熟度の高い相手のほうがじわじわと上回る展開になった。
それでも互いに決定機を作りながら、前半はどちらも決めきれず終了。スコアレスで折り返す。
先制するもミスの重なりから逆転を許す
後半は山口がさらに圧を高め、大分の弱点をピンポイントで突いてきた。完全に山口ペースとなったが、先制点は大分が奪う。53分、岩田智輝のスローインを國分伸太郎が拾い、左サイドに抜け出した林容平へ。林が中央へと送ると、ゴール前へと駆け上がっていた岩田がそれを流し込んだ。
ビハインドになった山口のベンチは、すぐさま動く。56分、岸田和人に代えて高木大輔、髙橋壱晟に代えて池上丈二。ピッチに入ってすぐに池上が蹴った左CKに、一度はムン・キョンゴンが触ったが、その背後に流れたところを山下敬大に頭で押し込まれた。
池上は三幸秀稔とともに山口の支配率をさらに高める。69分、右サイドを駆け上がってクロスを入れると、ゴール前で高木がヘディングシュートして山口が逆転に成功する。大分は前半から走らされた疲労が出たのか、全体に勢いが落ちた。
71分には大分も起死回生を狙って二枚替え。林に代えて1トップに藤本憲明。姫野宥弥に代えて清本拓己をシャドーに入れ、小手川宏基を一列下げて川西翔太とのダブルボランチにした。前線にフレッシュな選手を入れることで攻撃の活性化を狙ったが、山口のプレッシャーに遭ってなかなかボールを前線まで運べず、彼らを生かすまでには至らない。89分には國分を下げて後藤優介を投入したが、状況は改善できなかった。
試合は1-2で終了。残念ながら、今年の天皇杯は初戦敗退となった。
経験値を高めチーム力の向上を
この一戦で見えたのは、選手個々の、そしてチームの置かれた現在地だった。
チーム内での選手個々の力量差や経験値の差も見えたし、相手との成熟度の差も歴然としていた。いつもトレーニングでやっていることが山口のハイプレスの前には表現できず、組織としての強みを出すことも出来なかった。
これまでもリーグ戦に出場していたメンバーはそれぞれの長所を発揮していたが、単独ではこのチームのサッカーは表現できない。度重なるピンチはキャプテン竹内彬を中心とする守備陣が粘り強く体を張ったり、ムンが至近距離からのシュートを止めたりして奮闘したが、失点シーンはもったいないミスが連鎖してのものだった。
片野坂監督は「もう少しトライしてほしかった」と残念そうだったが、現時点での選手たちの力量の見極めなどもある程度は出来たようだ。ここからはリーグ戦に向けてトレーニングを重ね、また積み上げていく。