無失点勝利で前節からの立て直しに成功。知将の采配合戦も見応えあり
前節の大敗から立て直すために、なんとしても勝ちたかった一戦。明治安田J2第17節H熊本戦は、攻守両面での修正が生きて2-0で勝利。7試合ぶりのクリーンシートを達成した。
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前節の課題を攻守両面でクリア
前節の甲府戦と同じ、3-4-2-1同士のミラーゲーム。今節の熊本戦は前節の大敗から立て直すには格好のシチュエーションだった。ただ勝てばいいわけではない。挫けそうになった自信を取り戻すためにも、これまでに培ってきたスタイルを貫いて戦い、勝ち点3を掴み取りたかった。
片野坂知宏監督はそんな思いを表すように、前節先発出場した10人をスタメンに並べた。前節からの大きな課題はふたつ。落ち着いて奥行きを見定め、判断してプレーすること。球際への寄せを緩めず、明確な基準の下に意思統一すること。そうやって攻守両面であらためてチームコンセプトを徹底することで、この試合の前半、大分は“らしさ”を取り戻す。
立ち上がりから相手の背後を突いてテンポよくボールを動かし、バイタルエリアでは斜めの動きを多用して相手守備網を崩した。インターセプトからの速い攻撃も繰り出して何度か好機を迎えた中で、先制は23分。エリア内で伊佐耕平が粘り、後藤優介がつないで松本怜が送ったクロスを、伊佐がスルーした背後で最後に馬場賢治が押し込んだ。その後も前半は大分ペースで進み、1-0のまま折り返す。
熊本の反撃にリトリートして対応
前半は精彩を欠き、チャンスと言えば右WB田中達也のスピードを生かした単騎突破くらいだった熊本だが、後半は緻密に修正を施してきた。ボランチの米原秀亮が最終ラインに落ちて4バック状態となり、SBとなった小谷祐喜と青木剛が高い位置を取ると、特に右サイドで八久保颯が組み立てに参加して田中、小谷と数的優位を作る。また、八久保や皆川佑介が下りて縦パスを受けるようにしたことで、大分の守備陣の寄せを回避していた。
50分には田中のクロスからファーで黒木晃平にヘディングシュートを放たれてヒヤリとしたが、クロスバーに弾かれて事無きを得る。だが、主導権は完全に熊本に移り、押し込まれる時間帯が続いた。
サイドで数的優位を作られることに対し、ベンチでは片野坂監督が岐路に立たされていた。相手に合わせる形で4バックに変更し、中盤を厚くして奪いに行くか。あるいはこのままのシステムで5-4のブロックを敷き、スペースを消しながら要所で潰して逆襲するか。結果、「奪いに行ってかわされたりスペースを与えたりすると危険」という判断を優先して、指揮官は後者を選んだ。
鈴木が演出した後藤のダメ押し弾
69分、熊本は安柄俊に代えて伊東俊を投入し、シャドーでの細やかな仕掛けに期待する。同時に大分は宮阪政樹を川西翔太へ、馬場を國分伸太郎へとスイッチ。川西には中盤での守備と攻撃でのキープ力やアイデアを、國分にはチェイシングによる相手右サイドへの対応とフィニッシュに絡む仕事を託した。ちなみに同時刻の交代になったことに加えボールもなかなか切れず、ピッチサイドでは青森山田高の先輩後輩であり山形でもチームメイトだった伊東と川西がしばらく並び立っていた。その後、ピッチでは青森山田の同級生の松本も伊東に対応することになる。
77分には熊本が中山雄登に代えて上村周平。大分は82分に伊佐を下げて三平和司を頂点に据えた。一進一退の攻防の中、皆川に起点を作らせまいと鈴木義宜が中心となって体を張って守り、星雄次は足をつらせながら守備対応し最前線までチェックに走った。後藤のミドルシュートは佐藤昭大のファインセーブに阻まれ、川西の浮き球スルーパスに抜け出した三平が足を伸ばすがわずかに届かず。
85分、熊本は小谷を下げて守備の枚数を削り、前線に佐野翼を投入して追撃を図る。だが、最後にネットを揺らしたのは大分だった。90+1分、縦パスを受けようとした皆川の背後からボールを奪い取り、鈴木がドリブルで持ち上がって右サイドに展開すると、後藤が落ち着いてループシュート。スライディングしてくるGKの頭上を越えてダメ押し弾を沈めた。
前日に福岡が勝ち山口が分けたことで暫定3位で試合を迎えたが、この勝利で今節も首位の座をキープすることになった。だが、何よりうれしいのは、前節の6失点から立て直しての、7試合ぶりのクリーンシート。2得点での勝利で得失点も10まで回復した。「これを続けていきたい」と選手たちは口を揃える。敗戦を糧に変えての大きな一勝だった。