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試合レポート

ゲームの入りに失敗して大敗。猛省し、ここからの収穫を次につなげるべし

 

試合の入りを完全に誤ったJ2第16節A甲府戦は、立ち上がり3分の失点にはじまり27分までに5失点というショッキングな序盤。そこでの大差により試合結果は前半のうちに見えたも同然だったが、ベンチの判断もあり、選手たちは最後まで闘う姿勢を貫き続けた。

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試合の入りに失敗。27分で5失点の悪夢

 
悪夢を見ているかのような立ち上がりだった。開始早々の3分に、宮阪政樹の鈴木義宜へのバックパスが弱くなった隙を小塚和季に突かれ、金園英学に沈められてあっけなく失点。続く4分にも、丸谷拓也の刀根亮輔へのパスをさらわれて小塚に決められる。
 
3-4-2-1同士のミラーゲームに、真っ向勝負で臨んだ今節。こちらのビルドアップに対し、相手はハイプレスで完全にハメてきた。いきなり2失点を喫し、チームはすかさず円陣を組む。立て直しを誓ったが、6分にはまたも失点。右サイドを駆け上がる堀米勇輝のドリブルを誰も止めることが出来ないままペナルティーエリアまで運ばれ、小塚を経由してから走り込んできた佐藤和弘に3点目を奪われた。
 
15分には浮き球の縦パスを小出悠太にインターセプトされて持ち上がられ、その横パスから金園がシュート。これはポストに弾かれたが、跳ね返りを堀米がゴール前に送ると、前線に残っていた小出が沈めて4点目。27分にはエデル・リマに持ち上がられて小塚とのワンツーに振り回された挙句、5失点目を喫する。
 
3分、4分での立て続けの失点に自信を失ったこともあったのか、攻撃ではプレースピードが遅く、判断も遅い上に悪くなり、守備では球際へ寄せられず後手に回った。完全に自滅だった。
 

ベンチに迫られた選択とコーチ陣の出した結論

 
38分には福森直也の縦パスに抜け出した馬場賢治がダイレクトに相手GKの脇を抜く左足シュートで1点を返したが、焼け石に水状態。残り時間が50分以上あるといっても、両者の点差は、すでにひっくり返すのは難しいまでに広がっていた。
 
対策する間もなかった立て続けの5失点。点差が開いていく中で、ベンチでは片野坂知宏監督が選択を迫られた。4-4-2にシステム変更して反撃するプランもあったようだが、コーチ陣と話し合った中で、「4-4-2に変更して得点したとしても、自分たちの形ではない。今後のためにもここで逃げずに自分たちのスタイルを貫いてチャレンジさせたほうがいい」という結論に至る。
 
指揮官は前半をしのぎ切り、後半に入るにあたり二枚替えを敢行した。相手に狙われていつものプレーが出来なかった宮阪を下げ、守備力が高く、大量リードを奪った相手が構えるブロックを個人技でこじ開けることの出来る川西翔太をボランチに。また、相手と駆け引きしながらコンビネーションで崩すことに期待して起用したにもかかわらず、シャドーが押し下げられて孤立していた1トップの三平和司を、迫力で相手を突き破れる伊佐耕平へとスイッチした。
 
これによりチームは球際でのアグレッシブさを回復。相手が引いたことで守備の負担が軽減したこともあったが、どうこじ開けるかの勝負となった。さらに時間経過とともに、立ち上がりからペース配分を度外視して飛ばしていた甲府の選手たちの足が止まる。77分、松本怜のクロスは相手にクリアされたが、こぼれ球を拾った星雄次が後藤優介に出し、後藤が技術の高さを感じさせるシュートで2点目。3点差として、いくぶんでも傷は浅く出来たかのように思えた。
 
だが、83分、甲府は金園に代えて仕上げのリンスを投入。仕上げられてたまるかという思いも無念、佐藤の左CKからリンスに6点目を奪われてしまう。得点差は再び4に開いて試合は終わった。
 

戦術の特性を逆手に取られて、今後は

 
JR中央線のトラブルもあり、多くのサポーターが遅れながらも懸命に山梨中銀スタジアムまで駆けつけた中で、残念な結果となった。
 
流れからの失点の原因は明確なので、それについては修正しやすいと思うが、馬場が試合後に言ったように、失点そのものよりも失点を重ねたあとに腰が引けてしまい、状況を立て直せなかったことのほうが深刻な問題だ。松本怜は昨季も相手に研究されたことを受けてボールの動かし方を変えた経験に触れ、今季もここからバリエーションを増やしていきたい意向を口にした。
 
J1からの降格組とのミラーゲームに真っ向勝負で挑んだことについて、相手との力関係を測り間違えたという見方も出来るかもしれない。ただ、チームがこれまでも一貫してこの戦術を採用しており、まだその練度を高めている途上の第16節という時期であることや、現実的に逆転の狙える点差ではなかったことから判断すれば、今節もそれを貫いたことにより、収穫はゼロにはならなかったはずだ。転んでもただでは起きない意地とも言える。
 
戦術の特性を逆手に取られて敗戦している以上、その戦術を採用しているチームには、現状からブラッシュアップして良い結果へとつなげていく責任がある。次節も難敵・熊本との対戦。まずは戦える状態を取り戻すところから立て直したい。