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試合レポート

互いのスタイルをぶつけ合った白熱の首位攻防戦は勝ち点1を分け合う結末に

 

攻守に激しさを誇る山口に苦しめられながら、自分たちのスタイルを表現しようと挑んだ一戦。ビルドアップに課題が出た上に次善策も不発気味だったが、2得点と水際で体を張った守備により勝ち点1を積み重ねた。

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CKからの得点で先制

 
攻守に迫力のある山口に対し、自分たちのスタイルで太刀打ちできるかどうかにトライした一戦。ともに27ゴールでリーグ首位タイの得点数が象徴する攻撃的なチーム同士のマッチアップは、立ち上がりから引き締まった試合となった。
 
前節と同じ4-3-3で臨むかとぎりぎりまで迷って採用したシステムは、チームの基本形とする3-4-2-1。山口の特徴を踏まえるとともに、相手を上回ることにチャレンジする意図で、この形を選んだ。最終ラインの右には対人に強く攻撃力も高いファン・ソンスを配置し、交代カードを切らずとも4-3-3にも対応できる態勢を取った。ファン・ソンスは新潟戦で腕を負傷していたが、他のメンバーより好調での抜擢。指揮官の期待に応え、怪我をものともせず激しく体を張った。
 
インテンシティーの高い山口に対し、ベースの部分でも負けない意気込みで臨んだが、激しいハイプレスをいなしながらスペースを突いて後方からボールを動かそうとする試みには、やはり課題が出た。いつもより精度を欠き呼吸が合わずパスがつながらない。
 
それでも、早々と先制できたのは大きかった。11分、右CKのチャンスでキッカー宮阪政樹がニアに落とし、そこに位置取っていた馬場賢治が右足で触ると、ボールは密集を抜けてゴール左隅へと転がり込んだ。ようやく今季2度目のCKからの得点だ。36分にも宮阪の右CKから、今度はファーで丸谷拓也が合わせたボレーは、惜しくもポストに弾かれた。
 

2度目のリードも突き放しきれず

 
山口もすぐにペースをつかむと、三幸秀稔を起点に多彩な選択肢を使い分けてアグレッシブに大分ゴールに迫るが、不用意に球際に食いつかず水際で体を張る大分の守備に潰され、なかなかシュートにまで至らない。だが、前節の東京V戦で71分から怒涛の反撃で2点のビハインドを覆し4-3で勝利した経験が、今節もやれるという山口の自信につながっていたという。
 
1-0で折り返した後半開始早々、気をつけて入ろうと声を掛け合っていたにも関わらず、同点に追いつかれてしまう。47分、小野瀬康介が個人技で大分の左サイドを突破して送った速いグラウンダークロスに、オナイウ阿道がニアで合わせて押し込んだ。さらに51分には大崎淳矢からまたもオナイウがシュートを放つが、これはわずかに枠の右。
 
山口の勢いに押し込まれはじめていた53分、大分に追加点が生まれる。馬場のパスをセンターサークルを越えたあたりで受けた後藤優介が、松本怜へと展開。ゴール前に相手守備陣を引き連れて林容平も走り込んでいた中で、松本がマイナスのグラウンダークロスを選択すると、合わせ損なった後藤がスルーする形となり、その背後に走り込んでいた馬場がゴール右隅へと流し込んだ。
 
再び突き放しての54分、片野坂知宏監督は林と馬場を下げ、伊佐耕平と清本拓己を投入。2人の機動力で押し込まれていた状態を回復する狙いだったが、山口の速いプレスに視野を狭められた選手たちは前線の動きを見る余裕を持たず、伊佐と清本を生かせない。
 
65分に山口が大崎と鳥養祐矢を下げ高橋壱晟と岸田和人を入れてシステムを3-5-2へと変更すると、その圧はさらに強まった。クロスやシュートを次々に繰り出され、守備対応したり相手の精度不足に助けられたりしていたが、75分、エリア内での混戦からのこぼれ球を高木大輔に拾われ、ミドルシュートを突き刺されてしまう。
 

最後まで攻め合う白熱の好ゲーム

 
片野坂監督は81分、後藤を下げて川西翔太を投入し、清本をトップ下に置いた3-5-2へとシステム変更。清本に相手の攻撃のタクトを振るう三幸をケアさせた。
 
川西のストロングポイントを生かした仕事によって中盤の主導権を引き寄せ、両軍は勝ち点3を目指して激しく攻め合う。山口は65分に投入した高橋がいまひとつ機能しないと見るや86分に山下敬大に代える異例の交代で最後の攻撃に出た。88分、右CKからの川西のヘディングシュートは枠の上。90分、岸田和のカウンターでの抜け出しは、飛び出してきた高木駿がスライディングして阻止した。
 
アディショナルタイム4分ぎりぎりまで攻め合いながら両ゴールのネットは揺れず、2-2で長いホイッスル。双方とも得点数を29に伸ばし、勝ち点1を分け合った。
 
試合後、片野坂監督は相手のプレスを剥がせなかった力不足を噛み締め、途中でスタイルを曲げざるを得なかったことを悔しがりながら、今後の力量向上を誓った。山口の霜田正浩監督はこの展開で勝ち点3を取れなかったことを残念がり、これが伸びしろなのか限界なのかを問われると話した。
 
だが、大分の粘り強さや山口のインテンシティーの高さは、J2がレベルアップしていることを感じさせた。個の特長を引き出しながら時間経過とともに攻勢を強めていく山口と、個々を調和させることで組織の力を増幅させようとする大分。それぞれのスタイルに磨きをかけ、競い合いながらJ1昇格戦線をリードしていきたい。
 

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