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試合レポート

攻め合い守り合った好試合。相手の采配に助けられもして勝ち点1を積む

 

勝てば首位という状況で迎えた明治安田J2第9節H横浜FC戦。こちらの長所を消してきた相手に苦戦し、PKで先制点も奪われたが、同点に。最後まであきらめずに続けた猛攻は実らなかったが、勝ち点1とともに大きな経験値を積み上げた。

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こちらの長所を消しにきた相手の3ボランチシステム

 
システムや戦い方を使い分けながら来ている横浜FCが、どういう試合の入りをするかが読みづらかった。レアンドロ・ドミンゲスをトップ下に置く4-2-3-1を続けていくかとも思われていたが、フタを開けてみるとフォーメーションは4-3-2-1。中盤に3枚を並べ、いつも3ボランチ時はアンカーに入る渡邊一仁がその右、左は中里崇宏で、真ん中に佐藤謙介が入って布陣を統率した。
 
これにより中を閉めると同時に大分の2シャドーを封じるのが狙い。それならと大分がサイドから攻めようとすると、渡邊は右SB北爪健吾と、中里は左SB武田英二郎と連係して、星雄次と松本怜の上がりを阻んだ。
 
横浜FCのこの守備的な狙いが見事にハマり、前半の大分はなかなか攻め手を繰り出せない。「守備的な相手につきあうようにテンポアップできなかった。もっとシンプルにサイドを使って相手を動かせれば良かった」と、試合後に片野坂知宏監督。相手が4-3-2-1で来たときの狙いをもっと落とし込んでおけば良かったと悔やんだ。
 
その中でも松本怜は個の駆け引きで相手を上回り、クロスも供給。だが、ゴール前を固める相手は前向きにそれを跳ね返してしまう。激しく寄せられながら林容平も何度かポストプレーで好機を作ったが、後藤優介も馬場賢治も仕留めきれず。
 
イバをターゲットに野村直輝のスピードや佐藤の上がりで攻める横浜FCは25分、中里がエリア内で鈴木義宜のファウルを誘ってPKを獲得。守護神・高木駿はイバが左足で狙ったコースを完全に読んでいたが、ボールの勢いのほうが勝ってゴールに吸い込まれた。
 

ハーフタイムの変更が大きな転換点に

 
そこからは互いに攻め、互いに守る展開が続く。32分には星の意表を突くミドルシュートを、さらに41分には松本からのクロスにピンポイントで合わせた林のヘディングシュートを、辻周吾がファインセーブ。45分には高木も佐藤のミドルシュートを横っ跳びで掻き出すなど、両守護神が好セーブを連発し、試合は0-1で折り返した。
 
だが、ハーフタイムの修正が大きな転換点となる。片野坂監督はボランチを姫野宥弥から川西翔太へとスイッチ。予想していたよりも構えてきた相手に対し、川西のプレースタイルで状況打開を図った。
 
対する横浜FCは、北爪を下げてジョン・チュングンを投入。3バックにしてサイドをケアするのかとも思われたが、渡邊を右SBに下げてジョン・チュングンを右SHに、野村が左SHに入って予想外の4-4-1-1へと変更した。
 
リードした状況で、普通ならば完全に狙いのハマっていた前半のシステムを変えることもないと思うのだが、タヴァレス監督は「勝ち点3を取りに行きたかった」と、まるでビハインドのようなコメントをしてこれを敢行。タヴァレス監督は第5節の山形戦でも3点リードした状態からさらに追加点を奪いに出て1点差まで追い上げられたことがあるのだが、今節もこの強気な変更が、大分のWBとシャドーに自由を与えてくれた。
 
慣れないSBの位置に入った渡邊と守備に戻らないジョン・チュングンの間、2枚になったボランチの脇を使って、川西も絡みつつ大分の左サイドが活性化。解き放たれたように星が躍動しはじめると、早速53分に同点弾が生まれた。馬場からのパスを受けた星がドリブルで切れ込みつつ低いクロスを送ると、武田がゴール前に入っていく後藤につられる。その隙を突いてフリーで駆け上がってきた松本が、鋭い弾道をネットに突き刺した。
 

こういう試合を勝ちきれるようになれば

 
野村の負傷により横浜FCは59分に石井圭太を投入。状況に応じて大分の攻撃に対応しつつ、試合はオープンな展開へと遷移していく。
 
互いにリスタートを含む好機を数多く迎えるが、体を張る守備陣がゴールを割らせない。片野坂監督は66分、疲労の見える林に代えて三平和司を投入し、前線でタメる力を維持する。
 
68分には横浜FCのカウンターから、またも前線に顔を出した佐藤がシュート。これが宮阪政樹の足に当たってコースが変わり、あわや追加点を奪われるところだったが、高木が間一髪で飛びつくファインプレーで掻き出した。
 
78分には馬場を下げて清本拓己を入れ、大分はさらに攻勢を強めていく。後藤が何度か迎えたシュートチャンスも、一瞬のところで厳しく寄せる相手に打たせてもらえない。アディショナルタイムには清本からボールを受けた三平が狭いところで絶妙なスルーパスを送り、後藤がループでゴールを狙ったが、無念にも辻の左手に阻まれてしまった。
 
スコアは1-1のまま試合終了。連勝は4でストップしたが、そのことよりも「勝てた試合を勝ちきれなかった」と選手たちは悔やんだ。「こういう試合を勝ちきれるようになれば、もっと上へ行ける」という思いは共通だ。
 
先制されたあと、プレーに焦りや苛立ちの見える選手がいたことも少し気になる。今節は構えてきた相手に手こずったが、上手く行かない中でも辛抱強くチャンスを築いていける力が、このチームのストロングポイントだ。
 
横浜FC戦に向けてのトレーニングではゴール前の精度をメインテーマにしていたが、その課題がそのまま表れた試合でもあった。指揮官は選手間の競争を促しながら、さらなるクオリティーをチームに求めていく模様だ。