得点ならずも終始相手を上回り今季初の無失点。じりじりと勝ち点1を積む

　
大分はアウェイで敗れた岡山戦からスタメン1人を入れ替えて臨んだ。東京Vはこれまでの3試合と同じメンバーによる同じ4-3-3。互いに丁寧にボールをつないで攻めるスタイル同士だが、前半は完全に大分がペースを握った。
　
前線からの連動した守備により相手のビルドアップを阻み、縦パスの入るところはボランチや最終ラインがサンドしてしっかり潰した。ボールを奪い切ると素早く攻撃へと切り替え、テンポの良いパス回しや大きなサイドチェンジを織り交ぜながら攻撃を繰り出す。
　
今季初出場の刀根亮輔が、守備でも球際強く戦いながら積極的に攻撃参加し、松本怜をサポート。相手はつねづね、左サイドの奈良輪雄太の高い位置取りを攻撃の強みとしているが、小手川宏基、松本、刀根の右サイド組が連動しながらそれを許さなかった。ボールを奪うと右サイドで組み立て、左に張っている星雄次に展開するパターンもしばしばチャンスにつながった。星はこの試合では終始、フィニッシュに絡む姿勢を貫き、チームに勢いをもたらした。
　
大分にビルドアップを阻まれた東京Vはアーリークロスでチャンスを作ろうと、前線のドウグラス・ヴィエイラやアラン・ピニェイロへとボールを送るが、最終ラインと高木駿が堅実に対応。サイドで起点を作ろうとする藤本寛也に対しては、ライン際へと追いやって潰した。
　
23分にはピニェイロからのパスを受けたヴィエイラがエリア内で高木と交錯しながらボールをゴールへと蹴り込むが、ファウルを取られ得点は認められず。逆に36分には藤本憲明が上福元直人の背後を突いたが、全速力で戻った畠中槙之輔に紙一重でクリアされた。双方ともビッグチャンスをものに出来ず、スコアレスで折り返す。
　

　
後半開始と同時に、ロティーナ監督は藤本寛を下げ井上潮音を入れてシステムを3-5-2に変更。井上と渡辺皓太をインサイドハーフに配置し、梶川諒太を右WBに回して星と対峙させた。
　
前半からアンカー内田達也の脇で後藤優介や小手川がよくボールを受けていたのだが、システム変更をしても中盤の逆三角形の形は変えなかったので、ロティーナ監督の修正のいちばんの狙いはサイドの主導権争いにあったのではないかと思われる。試合後会見で確認したかったのだが、対戦を残していることもあり多くは語られなかった。奈良輪と梶川が前半に比べると高い位置を取れるようになったのは、機動力を生かした井上の細やかなボールの出し入れや渡辺のフリーランが生きたことで、東京Vがボールを保持する時間が長くなったことと関係しているだろう。
　
さらにロティーナ監督は54分、アラン・ピニェイロをカルロス・マルティネスへとスイッチ。マルティネスがヴィエイラと縦関係になり、丸谷と宮阪の間で起点を作るようになったことから、東京Vの好機が増えた。
　
相手が前がかりになったことで、58分には片野坂知宏監督も藤本憲を伊佐耕平に代えて前線の勢いを保つ。丸谷をアンカーに宮阪と小手川をその前に並べ、伊佐と後藤をトップに並べて相手の3-5-2とミラー状態を作り出した。さらに69分には小手川を下げて川西翔太を投入し、井上の働きで奪われていた中盤の主導権を奪い返しに行く。ロティーナ監督は75分、梶川を澤井直人に代えて星との力関係を有利に持ち込もうとした。
　

　
サイドから供給される東京Vのアーリークロスに前線の外国籍コンビが飛び込んでピンチになる場面もあったが、大分の守備陣も集中していた。特に高木はハイボール処理にも集中を切らさず、74分にはマルティネスのシュートをビッグセーブ。
　
守備陣の体を張った頑張りと川西の躍動、松本、星の両サイドからの仕掛けにより、終盤はふたたび大分が勢いを盛り返していく。それでも守備に回ると割り切ってゴール前を固める東京Vのブロックが崩せず、指揮官は87分、宮阪に代えて清本拓己を投入。清本も短い時間の中で積極的にゴールを狙ったが、これも枠をとらえることは出来なかった。
　
結局、両軍ともスコアレスのままタイムアップ。相手を5本のシュートに抑え、こちらは15本を打ちながら得点できなかったことは悔やまれるものの、90分間にわたり緊張感あふれる好ゲームだった。
　
昨季まで大分のゴールマウスを守り今季は東京Vで活躍中の上福元と、大学時代からライバルだった高木の守護神対決も見ごたえのあるものだった。試合前後にハグする2人が中心となって、白熱したスコアレスドローを演出したと言っていい。大分にとっては今季初の無失点試合。昨季2敗を喫した攻撃力のある相手を完封できたことを、ひとつの収穫としてとらえたい。